普段何気なく使っている「エネルギー」という言葉ですが、そもそもどういったものなのでしょうか? エネルギーとは、ものを動かしたり変形させたり、温度を上昇させたりといった、「仕事をする能力」のことです。「エネルギー」という言葉は、ギリシャ語で「仕事」を意味する「ergon(エルゴン)」に由来します。身のまわりにある「エネルギー」 や「エネルギー」という言葉について紹介します。
解説者のプロフィール
一般財団法人 エネルギー総合工学研究所
1978年4月1日「財団法人エネルギー総合工学研究所」として設立。「エネルギーの未来を拓くのは技術である」との認識のもと、シンクタンクとしての研究活動を続けている。対象分野は地球環境、新エネルギー、電力システム、水素エネルギー、炭素循環エネルギー、原子力と多岐にわたり、とくに昨今では、CO2 の有効利用技術開発推進やカーボンニュートラルなど、脱炭素エネルギーシステム分野での最先端の情報を有する。著書に『図解でわかるカーボンニュートラル』(技術評論社)など。
本稿は『イラスト&図解 知識ゼロでも楽しく読める! エネルギーのしくみ』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。
イラスト/添田あき、堀口順一朗、北嶋京輔
そもそもエネルギーってなに?
ものの状態を変化させる能力のこと。さまざまな種類があって、姿を変える!
普段何気なく使っている「エネルギー」という言葉ですが、そもそもどういったものなのでしょうか?
エネルギーとは、ものを動かしたり変形させたり、温度を上昇させたりといった、「仕事をする能力」のことです。
わかりやすくものの状態を変化させる能力と表現していきます。
エネルギーにはさまざまな種類があります。
たとえば、動いているものは「運動エネルギー」、高いところに置かれたものは「位置エネルギー」、熱いものは「熱エネルギー」をもっています。
化学変化で生じる「化学エネルギー」もあれば、核分裂で生じる「核エネルギー」もあります。
また、エネルギーには、別のエネルギーに姿を変えるという性質もあります。たとえば、家電品を動かす「電気エネルギー」は、照明器具で「光エネルギー」に変えられます。
身のまわりにある「エネルギー」
私たちは、意識することなく、さまざまなエネルギーを利用して生活している。
▼光エネルギー
太陽の光が地球に届いて熱に変換される。
▼熱エネルギー
暖房機器は、電気エネルギーを熱エネルギーに変えている。
▼光エネルギー
照明器具は、光エネルギーで周囲を照らす。
▼化学エネルギー
パンづくりに欠かせないイースト菌は、生地の中の糖を栄養素として取り込み、エネルギーを得ている。
▼電気エネルギー
電気製品は、発電所から送られる電気で動く。
▼化学エネルギー
芝は太陽光で光合成し、化学エネルギーで育つ。
▼位置エネルギー
高いところにあるクラブは、位置エネルギーをもっている。
▼運動エネルギー
位置エネルギーが、ボールを動かす運動エネルギーに変わる。
私たちの生活は、エネルギーで支えられています。
パソコンやスマートフォンなどの電気製品は、電気エネルギーがなければまったく動きません。
ガスコンロやお風呂も、ガスや電気を熱エネルギーに変えることで稼働します。
このように、身のまわりのすべてのものや事象は、何らかのエネルギーによって成り立っているのです。
本稿は『イラスト&図解 知識ゼロでも楽しく読める! エネルギーのしくみ』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。
「エネルギー」という言葉は、いつからある?
19世紀の物理学者の講義で、はじめて使われた記録が残っている!
「エネルギー」という言葉は、ギリシャ語で「仕事」を意味する「ergon(エルゴン)」に由来します。
「ergon」に接頭語の「en」を加えた「energos(エネルゴス)」は「活動している状態」を表し、この言葉から古代ギリシャの哲学者アリストテレスが創作した「energeia(エネルゲイア)」が、「活動」を表す言葉として一般化しました。
「エネルギー」は古代ギリシャで生まれた
「エネルギー」という言葉のおおもとは、ギリシャ語で仕事を表す「ergon(エルゴン)」。ergonが変化して一般化した。
▼紀元前4世紀
アリストテレスは、種のように動きのないものを「デュナミス」、花のように活動しているものを「エネルゲイア」と呼んだといわれています。
17世紀にはアイザック・ニュートンが運動の三法則や万有引力の法則を発表しますが、物理方程式には「force(フォース)」が使われており、当時の物理学者の間では、「エネルギー」という言葉は使われていません。
そして19世紀になると、「エネルゲイア」から派生した「energy(エナジー)」という英語が物理学者の講義で使われていた記録があり、広く科学用語として使われたようです。
「エネルギー」が定着するのは19世紀後半。
熱力学を発展させたジェームズ・プレスコット・ジュールやケルヴィン卿(ウィリアム・トムソン)たちが活躍した時代になってからでした。
「フォース」から「エネルギー」へ
「エネルギー」が使われるようになったのは、19世紀後半のイギリスといわれている。ジュールやケルヴィン卿が、熱力学の講義で用いた。
▼17世紀
ニュートンは、万有引力の法則で「force(フォース)」を使っている。
▼19世紀後半
熱力学の大家、ジュールなどにより、「energy(エネルギー)」という考え方に発展。
ちなみに、日本には明治時代にドイツ経由で科学技術が輸入されたため、「エナジー」ではなく、ドイツ語の発音に近い「エネルギー」として定着しました。
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なお、本稿は書籍『イラスト&図解 知識ゼロでも楽しく読める! エネルギーのしくみ』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。近年、「エネルギー問題」や「再生可能エネルギー」という言葉をよく耳にします。「エネルギーって、なに?」と尋ねられたとき、適切に答えるのはなかなか難しいことです。この本を読めば、エネルギーとは何か、という基本的な知識が理解できます。同時に、私たちはその存在に気づかないうちに、数多くのエネルギーに囲まれて生活していることがわかると思います。エネルギーがなければ、世界中の人々の生活や経済活動が成り立ちません。一方、地球温暖化対策や脱炭素化により、エネルギーをめぐる状況は大きな転換期を迎えています。本書では、エネルギーの学問的な基礎知識に加え、最新の科学技術や、エネルギーにまつわる国際的なデータや制度についてなど、重要でおもしろいトピックをイラストと図解でわかりやすく説明しています。