【認知機能検査とは】75歳以上の運転免許更新で必須!問題は難しい?対策はできる?

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2009年から75歳以上のかたの運転免許更新時には「認知機能検査」が行われています。この検査は簡易的なものですが、「検査」や「試験」と聞くだけで、緊張してしまうというかたは、本書に収録されている、実際に出題された形式に基づいた問題で、事前に傾向を把握しておけば、当日にパニックに陥ることもないでしょう。【解説】熊谷頼佳(京浜病院院長)

解説者のプロフィール

熊谷頼佳(くまがい・よりよし)

1977年、慶應義塾大学医学部卒業後、東京大学脳神経外科教室入局。東京警察病院、都立荏原病院、東京大学医学部附属病院、自衛隊中央病院などを経て、92年より現職。脳神経外科専門医でありながら、慢性期医療に専念し、認知症治療に特化。膨大な診療経験から、独自の認知症の3段階ケアを編み出す。著書に『認知症はなっても○、防げば◎』(マキノ出版)などがある。

本稿は『75歳からの免許更新はこれでバッチリ!運転免許認知機能検査完全ガイド』(マキノ出版)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。

75歳以上の高齢ドライバーは免許更新時に認知機能検査が必須!

高齢ドライバーによる運転事故のニュースは後を絶ちません。社会全体が高齢化するなか、交通事故全体に占める高齢運転者の割合は増えています。

2009年から75歳以上のかたの運転免許更新時には「認知機能検査」が行われており、さらに2022年5月からは、過去3年間で対象の交通違反(※)歴のあるかたに「運転技能検査」も義務付けられています。

※ 信号無視、通行区分違反をはじめ、重大事故につながる11の違反行為が定められている。

これからは高齢ドライバーが運転免許を更新するためには、これまで以上に違反のない運転を心がける必要があるといえるでしょう。

そもそも高齢ドライバーに事故や違反が多いのはなぜでしょうか。

その理由は、(1)高齢者特有の病気と、(2)身心の機能の低下、の2つがかかわっていると考えられます。

たとえば、自覚のない小さな脳梗塞があると、判断力の低下や手足のしびれ、感覚の鈍り、視野の異常などが症状として見られます。あまり知られていませんが、一時的に意識消失を起こすてんかんも、高齢になってからの発症が多く見られます。

緑内障や白内障、加齢黄斑変性などの視力や視野に影響を及ぼす目の病気も、運転には支障をきたします。目の病気は自覚なく進行する例が少なくありません。

高齢者は、筋力をはじめとする運動機能も低下しがちです。瞬発力が低下すれば急ブレーキを踏んでも間に合いませんし、眼球運動が鈍れば動体視力は低下します。注意力・集中力の低下も事故を招くでしょう。

さらに、高齢者は状況の変化に対応しづらく、思い込みも強くなりがちです。たとえば「この駐車場にはいつも子どもはいないから、今日もいるはずがない」といった具合です。

しかし、高齢ドライバーのいちばんの問題は、若い人と比べると運転中にパニックを起こしやすいという点でしょう。

高齢ドライバーの場合、パニックの多くは、過度の緊張が引き金となって起こります。複雑な交差点やスーパーの駐車場の出入り口などでは、焦りや気遣いなどで緊張しがちです。めまいや頻尿などの体調不良、忘れ物や不案内な道などでも緊張は高まります。

高齢者の事故が多い原因

高齢者特有の病気
● 脳梗塞 ● てんかん ● 緑内障 ● 白内障 ● 加齢黄斑変性 ● 認知症 etc

心身の機能の低下
● 運動機能の低下 ● 瞬発力の低下 ● 動体視力の低下 ● 注意力・集中力・忍耐力の低下 ● 思い込みが強くなる ● パニックを起こしやすい etc

こうした事故の原因がわかれば、事故を防ぐための対策もある程度は可能です。

病気は健診などで発見・治療に努めましょう。視力や視野、聴覚の異常は、自覚するだけで注意力が高まります。最近は、高齢者向けに動体視力を高めるゲームなどもあります。

また、地図や忘れ物の確認、トイレ対策など、パニックの原因となる運転中の緊張を減らすための習慣も身につけましょう。

それでもカバーしきれない部分は、衝突軽減ブレーキや死角をサポートするカメラ機能など、安全装備が充実した車の利用がおすすめです。運転免許を、対象車両を限定したサポカー(安全運転サポート車)限定免許に切り替えるという選択もあるでしょう。

緊張によるパニックを防ぐため、認知機能検査は事前の対策が有効

さて、75歳以上の運転免許更新時に受ける「認知機能検査」は、事前の対策が有効です。

この認知機能検査は、簡易的なものであり、たとえ結果が基準以下となっても、それだけで認知症と診断されるわけではありません。

しかし、「検査」や「試験」と聞くだけで、緊張してしまうというかたもいるでしょう。緊張によるパニック状態で試験を受ければ、本来の実力は発揮できません。

本書は、実際に出題された形式に基づいて問題を収録しています。本書で事前に問題の傾向を把握しておけば、検査当日にパニックに陥ることもないでしょう。また、問題の傾向を「覚える」という作業そのものも、認知機能を維持するための訓練として有効です。

なかには 「高齢者の運転免許返納を義務づけるべき」という声もありますが、とくに交通手段の限られた地方の場合、運転免許の返納は高齢者の生活圏を狭める結果となります。生活圏が狭くなると、認知機能の低下が進行するという報告もあります。

高齢者が認知機能を維持しつつ、生活を楽しむためには、可能な限り運転は続けるべきだと私も感じています。

もちろん、これは安全運転」が大前提です。

本書が、皆さんの幸福な運転生活の一助となることをお祈り申し上げます。

高齢者運転の秘訣5か条

1. 認知機能検査については、模擬試験で練習して慣れておく

2. 病気の発見・治療に努める

3. まちがい探しなどの脳トレで脳を活性化する

4. 車を買い替えるなら、なるべく安全装備の整った車にする

5. 運転中の緊張を減らす習慣を身につける

※情報は記事作成時のものです。
※この記事は『75歳からの免許更新はこれでバッチリ!運転免許認知機能検査完全ガイド』(マキノ出版)に掲載されています。

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