「ガスや電池を使わないで着火できるファイヤースターターは、レジャーだけではなく非常時でも何かと役立つ」というのは事実です。でも、じっさいには「火大好き族」のみなさんはそういう道具が「強そうだから好き」なんでしょ……そう思っていた筆者はある日100円(税込み110円)のキャンドゥ「収納式ファイヤースターター」が人気商品と聞きました。「やわらかアウトドア」派の筆者にもうまく使えるか興味が湧いたので、試してみたのが以下の記事です。
執筆者のプロフィール
千秋(ちあき)
インドアな仕事をしながら、最近になってアウトドア・レジャーもいいなと思い始めたものの、本格的な登山をするほどではない「やわらかアウトドア」派。どちらかというとやや陰キャ。カメラ、コンピューター、デジタルガジェットも好きで、ネットショップ、ホームセンターあるいは百円ショップでも「安いけどお得な感じ」なものはないかと考えるのが好き。
「燃料不要で火をつけることができる」道具
みんな「強そうな感じ」が好きなんでしょ
世間には「火大好き族」と「それほどでもない族」の2種類の「部族」のひとがいるような気がします。
筆者自身ももちろん現代人ですので、火の恩恵を受けて暮らしています。ただ、自分で火を起こすことが好きかといわれると「それほどでもない族」に近い感じ。
ぐずぐずと煮えきらなくて、わりとめんどくさいタイプですね。弱火でコトコト煮込んでやってください。
「火大好き族」のみなさんは、ファイヤースターターのような、アウトドアレジャー用で着火できる道具を見ると「便利でいい」「非常時にも役に立つ」とうれしそうですよね。「火大好き族」らしい友人もどうやらそんな感じ。
でも、ほんとうはライターやマッチ、あるいは燃料を使わないで着火するのが「好き」なだけなんでしょ、ねえ。と筆者は思っていたのです。
ぶっちゃけ「なんか強そうでいい」から好きなんじゃないの、と。
お断りしておきたいのは、筆者は「火大好き族」のみなさんをディスるつもりはないということ。でも、この記事を読んでもし繊細なハートが傷ついちゃったなら、ごめんなさい。
「なんか強そうでいい」というのは「元気があっていい」と思いますし、このところ10年周期くらいで自然災害を体験する気もしますから、ふだんから防災意識を持って備えておくことは、重要ですものね。
つまり「それほどでもない族」の筆者は、火にたいしてわりとこれまでは無頓着だったのです。
それが、ファイヤースターターがよく売れているらしいという話を聞いて、重すぎる腰を持ち上げて自分も試してみる気になりました。「自分にも使える道具が増えたらなんだかラッキー☆」くらいの気持ちです。
キャンドゥ「収納式ファイヤースターター」とは
知るひとぞ知る人気商品みたい
ファイヤースターターとは、マグネシウム棒をスクレーパーで削ってマグネシウムの粉末を作り、そこへ火花を起こして着火する道具です。
ガスや電源、燃料は不要ですし、水に濡れても使えるので、ストックしておいてもいざというときに、ガス切れなどを心配せずに使用できます。
キャンドゥ「収納式ファイヤースターター」はマグネシウムの棒の部分と、ステンレスのスクレーパー部分を重ね合わせるように収納できるようにしたもの。コンパクトさが特徴です。
大きさは USBフラッシュメモリーくらい……と書きかけて、最近はあまり使わないのでわかりにくいかも、と心配になりました。単3形乾電池とSDHCメモリーカードと並べると、だいたいの大きさがみなさんにもわかるでしょうか。
重さは約30gで、やはりUSBメモリーに似ているサイズ感です。紐が付属します。この紐を利用して首から下げておいても邪魔にならなさそう。むしろ、服のポケットに入れると、小さくてかえってわからなくなるかも。
マグネシウム棒の長さは約40mm、直径は約6mmというところ。やや小さめなのですが、コンパクトさを優先している製品なのだと思われます。
外部はポリプロピレン製。オレンジ、ブラック、グリーンの3種類があります。
ただしパッケージはすべて同一なので、隙間から中身の色をよく見て買いましょう。アウトドアで使っていて、あるいはカバンのなかに入れておいてめだつのはオレンジ色です。かわいいし。
じっさいに使ってみると
事前の準備と練習は必要かも
「やわらかアウトドア」派なものですから、筆者はファイヤースターターをはじめて使いました。そこで、記事執筆に必要な裏取りをしなければ……といういいわけもかねて、まずはグーグル検索をたくさんして、使い方を調べてみました。
本製品に限りませんが、ファイヤースターターはマグネシウム棒の出荷初期段階ではコーティング塗装がなされています。そこで、使うまえにスクレーパーでその塗装を剥がす必要があります。
そういうわけで、いちばん初めに使うときには準備が必要です。スクレーパーで削って落ちる黒い粉は塗装なので、着火はしません。
表面塗装を削り終えるまではそれなりに時間がかかります。楽しいことを想像しながら、頑張りましょう。全体をまんべんなく削ること。
下地の銀色が出てきたら、それがマグネシウムの層になります。これをゆっくり削って、着火させたいものに振りかけます。
筆者はダイソーの固形燃料に着火させて、メスティンでお湯を沸かすことを試しました。そこで、コンロに置いた固形燃料の透明プラスチックの表面に、マグネシウム棒をゆっくり削って作ったマグネシウム粉を集めました。
マグネシウム棒をゆっくり削るうちは火花は散りません。点火させるためにはスクレーパーを速く動かします。
この火花を起こす動かし方にはコツがあるなあ、というのが筆者の感想です。火花を起こすとと、ねらった方向に火花を飛ばすには、少し練習をして体で感覚をつかんでください。
マグネシウム棒をがりがりがりがり……と少し力を入れて速く動かして削れば、火花を起こすことができるようになります。
銀色の下地が出てからは、固形燃料に意外とあっさり着火できました。
メスティンに入れた水を沸かしてコーヒーを入れると、ふつうにガスで沸かしたよりもおいしいように感じました。コーティングを削るのに頑張った気持ちがあったので、そういうことにします。
なにかべつの火口(ほくち)を使うならば、古新聞やティッシュペーパーなどを丸めておくとよさそうです。
まとめ
練習は必要かも。でも楽しいし便利なのはほんと
ファイヤースターターはたしかに、ライターやマッチなどがなくても着火できる楽しい道具でした。
ガスの補充を心配せずに使えて、水に濡れても乾かせば着火できるので、アウトドアレジャーだけではなく、非常時にも便利だというのも理解できました。
マッチやライターは喫煙者ではないならば、いまや身近な道具ではありませんよね。また、着火ライターはガスの充填を気にしておく必要があります。
アウトドアガチ勢の「火大好き族」のみなさんは、この利点を強調するわけです。どちらかというとファイヤースターターは「こういう道具が好きなひと」たちのものではあると筆者は思います。でも「好きだから使う」は立派な理由ですね。使っていて楽しいですもの。
キャンドゥ「収納式ファイヤースターター」はコンパクトで携帯に便利なサイズで、100円(税込110円)ならば手は出しやすいでしょう。コンパクトさと握りやすさは相反するので、もしかしたらもう少し大きいほうが握りやすくて着火しやすいのかも、とは思いました。筆者は手がやや大きいようです。
また、本製品に限らず、コーティング塗装を削るときや火花を起こすには、練習が必要ではあります。キャンプサイトなどには買ったままの状態で持ち出さず、事前にご自宅で試してみるほうがいいでしょう。そのあたりをご理解いただけるならば、おすすめできます。
カバンに入れておいても邪魔にならないサイズですから、レジャー用の荷物にも非常用袋にもというように、何個か入手して常備しておくのもよさそうです。