中古カメラ店を訪れたり、ネット上で昔のカメラを検索すると、興味深い旧製品を見つけることができます。前回の記事(2022年9月9日公開)では、2013年と2014年に発売されたカメラの中から、おすすめカメラを紹介しました。今回はさらに遡って、2007年~2009年に発売されたカメラの中から、4機種ほど選んでみました。実用品としては少し古い気もしますが、そのぶん安価で購入できる(気軽に買える)可能性も高なります。また、現行製品とは異なるテイストも楽しめるでしょう。
(※おすすめ1~4の番号は、順位を表わすものではありません。また、中古市場での価格は、原稿執筆時の一部情報です。)
◆〈中古カメラ買うなら〉(2022年9月9日公開の記事)は、こちら
執筆者のプロフィール
吉森信哉(よしもり・しんや)
広島県庄原市生まれ。地元の県立高校卒業後、上京して東京写真専門学校(現・東京ビジュアルアーツ)に入学。卒業後は専門学校時代の仲間と渋谷に自主ギャラリーを開設し、作品の創作と発表活動を行う。カメラメーカー系ギャラリーでも個展を開催。1990年より、カメラ誌などで、撮影・執筆活動を開始。ライフワークは、暮らしの中の花景色、奈良大和路、など。公益社団法人 日本写真家協会会員。カメラグランプリ2022選考委員。
〈おすすめ1〉キヤノン EOS 5D Mark II
飛躍的な高画素化と、現在でも通用する機能を搭載
35mm判フルサイズセンサーをいち早く採用した、キヤノン EOS 5D(2005年9月発売)。その後継モデルが本製品「EOS 5D Marl II」です。新開発の約2110万画素・フルサイズCMOSセンサーの採用により、さらなる高画質を実現しています。また、新世代の映像エンジン「DIGIC 4」の採用で、高画素で増大したデータも高速に処理することが可能。約3.9コマ/秒の高速連写や、約310枚の連続撮影可能枚数(ラージ/ファイン、ISO100撮影時)も実現しています。
有効画素数約1280万画素の「EOS 5D」は、それまで"一部のプロのための機材"という印象の強かったフルサイズセンサーを、一気に身近な存在にしてくれたモデルです。私も発売の翌年に購入しました。しかし、画素数を一気に2000万画素台まで到達させた「EOS 5D Marl II」のインパクトは大きくて、しばらくEOS 5Dを使い続けた私も、その魅力に抗えず、結局「EOS 5D Marl II」に買い替えました。
初代の「EOS 5D」は17年以上も前に発売されたカメラです。そのため、今のデジタルカメラでは当たり前になっている、ライブビューや動画撮影機能が搭載されていません。ですが、EOS 5Dのわずか3年後に発売された「EOS 5D Marl II」には、これらの機能がしっかり搭載されています。そういった今でも十分通用しそうな仕様や機能が「EOS 5D Marl II」の魅力です。
中古市場での「EOS 5D」の動向は…
14年以上も前に発売されたカメラなので、中古市場では程度の良い商品(SランクやAランク)は少ないでしょう。しかし、多少のキズや汚れはあっても実用上問題のないもの(Bランクなど)ならば、5万円以下で買える商品が多いようです。
SPECS:Canon EOS 5D Mark II
形式:デジタル一眼レフレックスAF・AEカメラ 撮像センサー/有効画素数:35mm判フルサイズCMOSセンサー/約2110万画素 記録媒体:CFカードタイプ(I、II準拠、UDMA対応) ファインダー倍率/視野率:約0.71倍/約98% モニター:3.0型/約92万ドット ISO感度(拡張含む):50~25600 連続撮影速度:最高約3.9コマ/秒 サイズ(幅×高×奥)/質量:152×113.5×75mm/約810g(本体のみ) 発売年月:2008年11月 発売時の参考価格:30万円前後
〈おすすめ2〉ニコン D40X
高画素化されたエントリー機。古いMFレンズの受皿としても推奨
「ニコン D40X」は、有効1020万画素のCCDを採用するニコンDXフォーマット(APS-Cサイズ)のデジタル一眼レフです。エントリークラスに属する製品ですが、ミドルクラスモデル「D80」と同等の1020万画素の高画素CCDや画像処理エンジンを採用しています。そして、ベースモデルD40譲りの小型軽量ボディで、2.5コマ/秒から「3コマ/秒」に高速化された連写性能などを実現しています(連続撮影可能枚数はJPEG設定で100コマ)。
D40Xが発売された2007年や前後の年には、エントリークラスでも1000万画素台のモデルが登場しています。とはいえ、2007年にはペンタックス K-100D Superのような610万画素機も発売されています。そういう時期に発売されたエントリーモデルで「有効1020万画素のCCD」というのは、結構な高画素に感じられました。また、現在でも「1000万画素あれば、まあ良し」という気になります(個人的な印象ですが)。
ニコンは、1959年発売のニコン F(カメラ史に名を残す名機!)から、現在のデジタル一眼レフ(現行機種はD6、D850、D780、D7500)まで、レンズマウントの基本構造を変えていません。そのため、デジタル一眼レフで、フィルム時代の古いMFレンズを使用することもできます。古い部類の「非Aiレンズ」だと物理的に干渉するために装着できないボディも多いのですが、D40、D40X、D60(D40Xの後継モデル)などは干渉せずに装着できます。ですから、非Aiタイプも含めた古いMFレンズを活用する目的で、D40Xのような古めのエントリークラス機を探すのも良いかもしれませんね。
中古市場での「D40X」の動向は…
前出のキヤノン EOS 5D Mark IIより古い、16年近くも前に発売されたカメラです。そのため、中古市場ではBランクの商品が多いようです。そして、元々安価な製品なので、1万円台前半で買える商品を多数見かけます。
SPECS:Nikon D40X
形式:レンズ交換式一眼レフレックスタイプデジタルカメラ 撮像センサー/有効画素数:APS-Cサイズ原色CCD/1020万画素 記録媒体:SD,SDHC ファインダー倍率/視野率:約0.8倍/約95% モニター:2.5型/約23万ドット ISO感度(拡張含む):100~3200 連続撮影速度:約3コマ/秒 サイズ(幅×高×奥)/質量:約126×94×64mm/約495g(本体のみ) 発売年月:2007年3月 発売時の参考価格:8万円前後
〈おすすめ3〉リコー GR DIGITAL III
高級コンパクトのコンセプトを継承する、大口径レンズ搭載機
速写性に優れる小型軽量な高品位ボディに、高画質設計のGRレンズとGR ENGINEを搭載した、ハイエンドコンパクトデジタルカメラ。それがリコーのGR DIGITALシリーズです。基本的な仕様や機能を踏襲しながら、本製品に搭載される新GRレンズは「開放F1.9」の明るさを実現(従来モデルGR DIGITAL IIはF2.4)。画像処理エンジンも新開発の「GR ENGINE III」が採用され、きめ細やかなノイズ低減処理、色再現性や階調性などの向上も実現しています。
GR DIGITAL IIIのルーツは、1996年に発売されたフィルムコンパクトカメラ「GR1」です。このモデルは、フィルムパトローネよりも薄い(パトローネ収納部以外のボディ本体)超薄型ボディに、画面周辺部まで高解像度な沈胴式の「リコーGRレンズ28mm F2.8」を搭載していました。また、ボディ外装には軽量かつ高強度なマグネシウム合金を採用。これらの特徴を持つGR1は、後に注目される"高級コンパクト"の先駆け的存在の一つです。
フィルムとデジタルという方式の違いはありますが、ボディデザインや搭載レンズ(28mm相当の広角単焦点レンズ)など、基本的なコンセプトは、初代のGR1から継承。そして、GR DIGITALシリーズの3代目である本製品では、レンズの大口径化やノイズ低減性能の向上など、撮影領域の拡大に直結する進化を遂げています。こういった仕様や特徴に惹かれて、私もこのGR DIGITAL IIIを購入しました(専用のワイドコンバージョンレンズも揃えて)そして、一眼レフのシステムとは趣の異なる"小粋なスナップカメラ"として、いろんな撮影シーンで活用しました。
中古市場での「GR DIGITAL III」の動向は…
現在の中古市場では、APS-Cサイズの大型センサーを採用する「GR III」などが主流で、それ以前の1/1.7型センサーの「GR DIGITAL III」などはあまり見かけません。また、たまに見かけても、あまり状態の良くない商品が多いようです。まあ、そのぶん値段も安くなっている(2万円台とか)でしょうが、GR DIGITALシリーズの中古品では"センサー上のゴミが写り込む"という難アリ個体も散見します。ですから、中古品の状態を見極める際には、そのあたりの注意が必要です。
SPECS:RICOH GR DIGITAL III
形式:コンパクトデジタルカメラ 撮像センサー/有効画素数:1/1.7型CCD/約1000万画素 記録媒体:SD,SDHC,内蔵メモリー(約88MB) レンズ:6.0mm(28mm相当) F1.9 ファインダー倍率/視野率:- モニター:3.0型/約92万ドット ISO感度(拡張含む):64~1600 サイズ(幅×高×奥)/質量:108.6×59.8×25.5mm/約188g(本体のみ) 発売年月:2009年8月 発売時の参考価格:8万円前後
〈おすすめ4〉パナソニック LUMIX DMC-FZ38
広角から超望遠までカバーする小型軽量な高倍率ズーム機
小型軽量な高倍率ズームコンパクトデジカメ、それが「LUMIX DMC-FZ38」です。搭載される光学18倍のDC VARIO-ELMARITレンズは、広角27mm相当から超望遠486mm相当までの、幅広い画角をカバー。また、高精細なAVCHD Lite動画の撮影機能や、新・手ブレ補正機能「POWER O.I.S.」なども搭載されています。
パナソニックのFZシリーズは、電子ビューファインダーを搭載する高倍率ズームコンパクトデジカメです。シリーズ初号機は2002年発売の「DMC-FZ1」ですが、それを含めた多くのモデルには、光学12倍のズームレンズが搭載されていました(機種によってレンズ設計やセンサーサイズが異なり、カバー画角も微妙に異なる)。
しかし、2007年発売の「DMC-FZ18」では、より高倍率な光学18倍ズームレンズが搭載されました。そのカバー画角は、広角28mm相当から超望遠504mm相当です。また、ズーム倍率だけでなく、広角端が28mm相当まで広げられた点も魅力的でした(それまでは35mm相当や36mm相当など)。そして、次々世代モデルにあたる本製品「DMC-FZ38」では、微妙に広角側にシフトして広角27mm相当をカバーしています。
現在のFZシリーズには、1.0型の大型センサーを採用する「DC-FZ1000M2」と、通常サイズ(1/2.3型)のセンサーを採用する「DMC-FZ300」などがラインナップされています。当然、これらの現行モデルは「DMC-FZ38」と比べると各種の撮影機能や基本仕様が進化しています。しかし、それに比例するように大きさや重さも増えています(FZ1000M2は700g台、FZ300は600g台)。その点、全体的に小振りで重さが300g台の「DMC-FZ38」は、携行や使用時の軽快さが魅力の"手軽な高倍率ズームコンパクトデジカメ"と言えるでしょう。
中古市場での「LUMIX DMC-FZ38」の動向は…
現行製品のDMC-FZ300や、生産完了品のDC-FZ85(光学60倍ズーム搭載モデル)のような、比較的新しい製品は中古市場でちらほら見かけます。ですが、それらの販売価格は意外と高めです(4万円台など)。反対に、DMC-FZ38のような古めの製品はあまり見かけませんが、あれば1万円台で買えるのではないでしょうか。
SPECS:Panasonic LUMIX DMC-FZ38
形式:コンパクトデジタルカメラ 撮像センサー/有効画素数:1/2.33型CCD/1210万画素 記録媒体:SD,SDHC,内蔵メモリー(約40MB) レンズ:4.8-86.4mm(27-486mm相当) F2.8-4.4 ファインダー:0.2倍/約100% モニター:2.7型/23万ドット ISO感度(拡張含む):80~6400 連続撮影速度:約2.3コマ/秒(通常連写) サイズ(幅×高×奥)/質量:約117.6×75.8×88.9mm/約367g(本体のみ) 発売年月:2009年8月 発売時の参考価格:5万5000円前後
まとめ
"状態そこそこ"の古めの製品を、実用品としてゲット!
製品カテゴリーやメーカーにもよりますが、2010年くらいより前に発売されたデジタルカメラは、最近の中古市場ではあまり見かけない気がします。また、たまに見かけても製品状態が良くなかったり、備品が欠けている商品などもあります。
しかし、外観に軽微な傷や汚れが目立つ商品でも、実用上は問題のない商品も多々あります。また、備品の一部が欠けていても、専用バッテリーと充電器があれば、撮影に支障をきたすことは少ないでしょう(バッテリー劣化という心配はありますが)。
"ちょい難アリ実用品"を低価格でゲットして、サブカメラとして使い倒す!! そんな買い方や使い方も、中古カメラ選びの魅力のひとつです。現行製品や1、2世代前のデジタルカメラを探しつつ、古い製品を見かけたら、それを買ってどう使いこなすか脳内でシミュレーション!そんな思いを巡らすことも、中古カメラ巡りの楽しみと言えるでしょう。
撮影・文/吉森信哉