毎年静止画だけで数TB(テラバイト)単位で撮影をする筆者ですが、そのほとんどが各種記事のための撮影でプライベートな撮影はほとんどありません。しかし、そんな筆者が限りなくプライベートな撮影をするのが息子の保育園のイベントです。このプライベート撮影で周りのお父さん、お母さんたちにもおすすめしたいイチオシアイテムがSLIKのスタンドポッド。その最新版でスマホにも対応する「SLIK スタンドポッドGX-5S」を実際に使用したので皆さんにその便利さをお伝えします。
執筆者のプロフィール
齋藤千歳(さいとう・ちとせ)
元月刊カメラ誌編集者。新しいレンズやカメラをみると、解像力やぼけディスク、周辺光量といったチャートを撮影したくなる性癖があり、それらをまとめたAmazon Kindle電子書籍「レンズデータベース」などを出版中。まとめたデータを元にしたレンズやカメラのレビューも多い。使ったもの、買ったものをレビューしたくなるクセもあり、カメラアクセサリー、車中泊・キャンピングカーグッズなどの記事も執筆。現在はキャンピングカーを「方丈号」と名付け、約9平方メートルの仕事部屋として、車内で撮影や執筆・レビューなどを行っている。
子どもを撮るなら必須レベルのスタンドポッド
初めて買うなら三脚よりもおすすめしたい
多くの方がレンズ交換式などの高めのカメラを買うきっかけは「お子さんを撮影するため」ではないでしょうか? 筆者のように「仕事で取材に行くため」にはじめてデジタル一眼レフを買ったという人は少数派でしょう。そして、そのカメラを買ったときに、いっしょに三脚も買ったとか、サービスで付けてもらったという人も多いでしょう。そして、その三脚は使いづらくありませんか。
本格的に写真撮影を楽しむなら「三脚は必須」は本当なのですが、それには「本格的な三脚」が必要になります。筆者は10年以上カメラ関連の雑誌などを作っていましたが、1万円以下でこれなら十分といえる三脚をみつけることはできていません。ちなみにいまでも探しています。ある程度以上の三脚なら数万円、プロだと10万円以上する三脚を使っている人も珍しくありません。そう、実はいい三脚はかなりお高いのです。
そのため、比較的安価であまり使い勝手のよくない三脚で妥協するか、本当はあった方がいいのですが三脚はなしでいくか、思い切って高いのを買うか、といった選択肢しかありませんでした。しかし、最近筆者はSLIKのスタンドポッドをおすすめしています。
SLIK スタンドポッドがおすすめの理由は大きく3つ
SLIKのスタンドポッドは、一脚の下にミニ三脚を取り付けたような構造で自立一脚とも呼ばれています。本格的に作品撮影や仕事で、といった方以外の子どもの写真を撮影するのがメインの方に筆者がSLIKのスタンドポッドをおすすめする大きな理由は下記の3つです。
1.学校イベントの撮影なら三脚よりも便利
2.1万円でお釣りのくる価格帯
3.本格的な三脚を買っても使い続けられる
筆者がなぜ、そう考えているかを紹介します。
1.学校イベントの撮影なら三脚よりも便利
自分が父親として、子どもの運動会や発表会といったイベントに参加するまで、筆者は「望遠レンズで撮影するなら三脚を使えばいいのに……」と思っていました。しかし、実際に学校などのイベントで三脚を広げるスペースなどあったことがありません。
屋外イベントである運動会ですら、そんなスペースを確保できることはなく、発表会に至っては市民ホールなどで全席指定、座席スペースに三脚を立てるのはほとんど不可能なことに気付いたのです。
そこで一脚という方法も試しました。静止画だけを撮影するなら、この選択はありです。しかし、静止画写真といっしょに動画も撮影するのが一般的でしょう。すると自立しない一脚だと撮影時に誰かがずっと支えている必要があります。
これに対してスタンドポッドなら倒れないように見ている必要はありますが、自立してくれるので安定した動画を楽に撮影できます。今回、筆者が息子のイベントで使用した「SLIK スタンドポッドGX-5S」ならスマホも簡単にホールドできるため、動画は妻がスマホで、筆者はもう1台のスタンドポッドで静止画を撮影といった使い方も可能です。
しかも、ミニ三脚部分は脚を広げても、1辺約30cmの正三角形の面積が確保できれば設置できます。筆者は実際に市民ホールの指定席で自分の足の間にスタンドポッドを設置しましたが、問題なく撮影ができました。
「SLIK スタンドポッドGX-5S」は最高約170cm(1,725mm)、最低約60cm(595mm)まで高さ調整が可能なので、座席に座ったままはもちろん、体育館の壁際などで立って撮影するときにも対応してくれます。
これらの理由により、本格的撮影用三脚を何本も持っている筆者もプライベートな学校イベント撮影にはより便利なスタンドポッドを選択しているのです。しかも、だいたい2台持って行きます。
2.1万円でお釣りのくる価格帯
実はSLIKのスタンドポッドシリーズには「スタンドポッド」「スタンドポッドエアリーシリーズ」「SLIK スタンドポッドGX-5S」を含む「スタンドポッドGXシリーズ」があり、現在8種類がラインアップされています。筆者は高級ラインの「スタンドポッドエアリーシリーズ」も大好きなのですが、2万を超える価格になるので今回は除外しました。
もっともスタンダードな「スタンドポッド」も実勢価格は1万円以下なので選択肢としてはありでしょう。しかし、最初に1台として購入するなら、今回筆者が使用した「SLIK スタンドポッドGX-5S」か「SLIK スタンドポッドGX-S」をおすすめします。どちらもスタンドポッドとして使用できるのはもちろん、分割すれば一脚やミニ三脚としても使え、しかも雲台部分に幅58mm~90mm/厚さ12mm以内のスマホ(※スマートフォンや外装ケースの形状によっては、上記寸法内でも取り付けできない場合があるそうです)が固定でき、価格も実勢価格が7,000円前後と1万円で十分お釣りの来る価格帯だからです。
【撮影時の状況に合わせて使用できる3in1型自立一脚】自立一脚、ミニ三脚、一脚の3つのタイプに切り替え可能。屋外、屋内問わずお好みの撮影スタイルに合わせてお使いいただけます。
【DIN規格対応のクイックシューがスマホホルダー組み込み式に進化】これ一台でスマホ、カメラ、ビデオカメラに対応。レバーのロックを外すだけで瞬時にクイックシューを着脱できます。シャッターチャンスを逃しません。※DIN規格対応クイックシューを複数個所持していれば複数の機…
【省スペースで撮影可能】三脚よりもスペースを取らない自立式一脚タイプ
【高い位置から撮影できる!】アイレベルを超えた撮影を可能にする全高1875mmを実現
【一脚にもミニ三脚にもなる3in1仕様】本体を分離して、それぞれ一脚、ミニ三脚としても使用可能。シチュエーションに合わせて形を変えられます。
重量: 1045g / 最大搭載重量: 1kg (※機材を搭載している時はかならず手で支えながらご使用ください。)
ちなみに「SLIK スタンドポッドGX-5S」と「SLIK スタンドポッドGX-S」の大きな違いは、伸縮時のパイプの段数で「SLIK スタンドポッドGX-5S」が5段で全高が1,725mm、重さ960gに対して「SLIK スタンドポッドGX-S」は4段で全高が1,875mm、重さが1,045gになっています。筆者は折りたたみ時のサイズが小さく軽い「SLIK スタンドポッドGX-5S」を選択しましたが、より高い位置からの撮影がしたいなら「SLIK スタンドポッドGX-S」もありでしょう。
スタンドポッドなら1万円以下で「スタンドポッドエアリーシリーズ」以外の5種類からの選択が可能です。
3.本格的な三脚を買っても使い続けられる
おそらく、これまでスタンドポッドや三脚なしで撮影していた方は、カメラにとっては薄暗い体育館や発表会の会場、または望遠レンズでの運動会などの撮影がスタンドポッドで、ちょっとカメラを支えてやると劇的に楽になることに気付くでしょう。実際とても楽です。
するとカメラを固定することの重要性に気付く方も多く、より本格的な三脚もほしくなるでしょう。そして、写真撮影にハマると、いつかかなり本格的な三脚を購入すると思うのですが、それでもスタンドポッドが無駄になることはほぼないと思います。
なぜなら、筆者は息子のイベント撮影の際にスタンドポッドを2台持って行くからです。1台は妻が使うか、固定したままの動画撮影用にしています。スマホやコンパクトなビデオカメラならスタンドポッドで十分安定するので、無駄がありません。
また、分割すれば、一脚やミニ三脚としても、使えるので本格的な三脚との使い分けが可能。
さらに筆者などは、ストロボ撮影時のライトスタンドの代わりにも使っているので、スタンドポッドが複数台あっても便利なだけで邪魔になることはありません。
「SLIK スタンドポッドGX-5S」の弱点は2つ
年に数回ある、ほぼ完全にプライベートな息子のイベント撮影には、必ず持っていくスタンドポッド。まったく忖度なしにお気に入りの撮影アイテムなのですが、「SLIK スタンドポッドGX-5S」を実際に使ってみて弱点と感じた点は2つです。
1.最大搭載質量が1kgしかないこと
2.ずっと使っていると雲台を変えたくなること
この2点が「SLIK スタンドポッドGX-5S」の弱点だと思います。具体的に説明していきます。
1.最大搭載荷重が1kgしかないこと
SLIKのカタログの表記を忠実にお伝えするなら「SLIK スタンドポッドGX-5S」の最大搭載質量は1kgです。そしてSLIKのいう最大搭載質量は「三脚を安全にお使いいただくための搭載重量です。事故防止のため、記載の重量以上に載せないようにお願いします。なお、この数値内の機材を取り付けた場合でも確実にブレを防げる、というものではありません。搭載機材の対応については(カタログの)裏表紙を参考にしてください。単に固定力の上限のみで危険性を考慮していない「耐荷重」とは異なる表記です。」と解説されています。
要は「SLIK スタンドポッドGX-5S」にはレンズ+カメラなどで1kgを超える機材を載せてはいけないということです。エントリークラスのカメラ+レンズセットの望遠ズームレンズクラスでは問題ないのですが、本格的な望遠ズームレンズで使うにはかなり厳しい制限といえます。
ただし、現在のSLIKのスタンドポッドシリーズはすべて最大搭載質量が1kgなので、これを超えると自己責任ということになります。機材が重くなる時には、現在販売終了している「スタンドポッド7」という最大搭載質量2kgの製品を筆者は使っていますが、それでも機材の重量が2kgを超えると自己責任です。構造上の問題なのでしょうが、この点は少し残念。また「スタンドポッド7」は探せば、まだ在庫を持っている店舗などもあるようです
2.ずっと使っていると雲台を変えたくなること
「SLIK スタンドポッドGX-5S」の雲台(三脚や一脚などとカメラの間に装着して、カメラの向きや角度などを調整するパーツ)はカメラなどを固定できるだけでなく、スマホにも対応するスグレモノです。
しかし、スタンドポッドの三脚とは異なる利便性に気付いて、筆者のように普段は本格的な三脚を使っているが、学校イベントなどのように三脚の使いづらいシーンなどで、意図的にスタンドポッドを活用している人にとっては「SLIK スタンドポッドGX-5S」の雲台部分は価格の問題が大きいとは思いますが、使い勝手に不満が出てくるでしょう。高価な三脚などでは雲台が別売は普通で、雲台だけで数万円することも珍しくありません。
そのため「SLIK スタンドポッドGX-5S」の雲台の操作性に不満を感じたら、雲台を交換するのもありでしょう。雲台部分を回して外すと、カメラアクセサリーでは標準的なU1/4ネジに対応しているので、一般的な雲台はだいたい取り付けることができます。筆者は同じSLIKの「SBH-100 DQ N」(実勢価格:5,000円前後)などに付け替えて、使うことも多いです。
まとめ
学校イベントで子どもを撮影するすべてのお父さん、お母さんたちにおすすめしたい
おそらく学校イベントなどの我が子撮影は、そのほとんどが望遠ズームレンズによる長距離撮影でしょう。広角はもちろん、標準ズームレンズでも我が子をアップで撮影できる距離からの撮影はほとんどないと思います。withコロナな現在、この傾向はさらに強まるのではないでしょうか。
ですから、運動会、発表会、部活のグランドでの野球にサッカー、体育館でのバスケやバレー、文化系発表会までだいたい望遠ズームレンズでの撮影になるはずです。今回紹介した「SLIK スタンドポッドGX-5S」を含むスタンドポッドシリーズを使うと、そんな望遠撮影が劇的に楽になるうえに、操作が安定するので、おそらく多くの人が「私、写真がうまくなったかも」と思うような効果が得られると思います。
セットで購入すると1万円を超えてしまうかもしれませんが、望遠ズームレンズでの静止画撮影がメインなら「SLIK スタンドポッドGX-5S」の雲台を同じSLIKの「SBH-100 BK N」(実勢価格:4,500円前後)あたりに変えて撮影するのもおすすめ。雲台を少し緩めて、カメラが動かせる程度のテンションで撮影するのがポイントです。
「本当にそんなに違うの?」と思われるでしょうが、スタンドポッドはあるとないではまったく違います。学校イベントなどで子どもを撮影するすべての方におすすめしたい筆者激推しのアイテムです。ただし、機材の重量オーバーには気を付けてくださいね。