【ソックス】『かかとツルツル靴下』は、なぜ履くだけでかかとがツルツルになるのか? 製造元に訊いてみた【インタビュー】

健康

平成元年生まれのロングセラー商品『かかとツルツル靴下』。幅広い世代に愛され、バリエーションを増やし続けている。ではなぜ、「靴下を履くだけで、かかとがツルツルになるのだろう」。疑問を解明すべく、製造元を訪ねた。

かかとのガサガサをやわらげる靴下と出会った

筆者は足の裏のガサガサにずっと悩まされてきた。ときにはまるで正月明けの鏡餅のようにかかとがひび割れ、じくじくする痛みで眠れない夜もあったのだ。しかし、「かかとツルツル靴下」に出会って、その苦しみから解放された。

履くとかかとがしっとり潤う「かかとツルツル靴下」

 

「かかとツルツル靴下」シリーズの元祖と言える『毛混・かかとツルツル靴下』(税込1,679円・発売中)は、奈良県の靴下メーカー、太陽ニット株式会社が平成元年(1989)、新時代の幕開けとともに発売したロングセラー商品だ。奈良らしく、鹿をあしらったパッケージが愛らしい。

奈良のメーカーだけあってパッケージには靴下をはいた鹿があしらわれている

 

靴下の手触りは、もっこもこ。いかにも足をまろやかに包んでくれそうな安心感をおぼえる。

もこもこした手触り。特にかかと部分が厚く、「何かが入っている」と感じる

 

そして半日ほど履けば、あら不思議。かかとの荒れが緩和されているではないか。履いたまま就寝すれば、目覚めた頃にはかかとがしっとりと潤い、つるんとしているのだから驚く。まるでひび割れた鏡餅が、つきたての餅に戻ったかのように。

 

それにしても不可解だ。なぜ靴下を履くだけで、かかとのガサつきが和らぐのだろう。他の靴下をはいても、このような変化は起きない。きっとこの靴下は、かかと部分に特別な素材を用いたり、独特な製法を使ったりしているに違いない。

 

筆者はかかとに秘められたミステリーを解き明かすべく、製造元の太陽ニットへと向かった。

 

たった2台の編み機から始まった靴下メーカー

太陽ニット株式会社は「岡橋靴下」の名で昭和43(1968)年に創業した。「かかとツルツル靴下」を筆頭に「美脚着圧ソックス」「5本指フットカバー」など付加価値の高い健康レッグウェアを中心に製造しているメーカーである。

 

辿り着いた社屋は、田畑が広がる場所にあった。「靴下のふるさと」と呼びたくなる、のどかでやすらぐ風景だ。

周囲に高い建物がなく、晴れの日は太陽の光をさんさんと浴びる「太陽ニット株式会社」

 

実は、奈良は全国1位の靴下の生産地。明治時代、農閑期に靴下の製造を始め、一大産地へと発展したと伝えられている。そんな説を裏付ける光景ではないか。

 

太陽ニットは商品企画から製造、発送までを社内で一貫して行っているのが特徴だ。OEMメインの靴下メーカーが多いなか、「すべてが自社のオリジナル商品」だというからおそれいる。

 

「自社商品でやっていけているのは、かかとツルツル靴下のおかげと言えます。もしもこの靴下が生まれなかったら、会社はここまで成長できなかったかもしれません」

 

営業兼商品管理部長、平山史泰(ひらやま・ふみやす)さんはこう言う。

太陽ニットの営業兼商品管理部長、平山史泰さん

 

太陽ニットは先代(初代)代表取締役社長・岡橋喜代治氏が自宅の倉庫にたった2台の編み機を置いて興したのが始まりだ。「かかとツルツル靴下」を発売してじわじわと知名度を伸ばし、平成の最盛期は70万足を売り上げるヒット商品となった(現在は30万足前後を推移)。

 

かかとツルツル靴下は、自宅倉庫からスタートした個人事業を、イタリア製の最新編み機を含む約100台のマシンが並ぶまでの大きな会社にした立役者だったのである。

編み機など機器がズラリと並ぶ自社工場。平山さんは掃除や点検も行う

 

かかとをツルツルにする「オリジナルシート」とは

さて、疑問をぶつけてみよう。いったいなぜ、「かかとツルツル靴下を履くと、かかとがツルツルになるのだろう」

 

平山「それは、かかとの部分に特殊なシートを縫い込んであるからなんです」

 

平山さんが言う「特殊なシート」の素材は、介護や医療用の失禁・尿漏れパンツなど高機能製品に使われるポリ塩化ビニルフィルム。これにさらに抗菌や防臭の加工を施し、「オリジナルシート」を開発したのだとか。

介護や医療用品にも使われるポリ塩化ビニルフィルムにさらに抗菌や防臭加工を施した「オリジナルシート」をかかとに縫いつけてある

 

このオリジナルシートを、かかとにあたる位置に配する。そうすることで皮膚からにじみ出る水分や体液がかかとを包み、皮膚のささくれが自然治癒してゆく仕組みだ。効果は順天堂大学大学院医学研究科によって検証が行われ、実効性が確認されている。

 

なるほど、だからツルツルになるのか。謎がツルツルと解けていった。

 

もこもこ感の理由は「靴下の2足重ね」にあった

では、オリジナルシートを、どのように靴下に仕込んでいるのだろう。

 

平山「シートを一枚一枚、ミシンで縫製しています。人の手でないと縫えない構造なんです」

 

なんと! 年間およそ30万足を製造するというこの靴下が、まさか手縫いだったとは……。気が遠くなる作業である。

オリジナルシートはスタッフがミシンで縫いつける。繊細で「機械化できない」作業だという

 

オリジナルシートをミシンで縫製しているのには理由がある。靴下はなにより「伸縮性のよさ」が命だ。そのため、シートは伸縮に支障をきたさぬようギャザー状に縫わねばならない。このひだ状に縫う作業が「機械化できない」という。縫い方も、縫製歴30年以上のベテラン職人が考え出した独自手法を採り入れており、簡単ではないのだとか。

靴下の伸縮に支障をきたさぬようギャザー状に縫う。縫製方法も独自開発した

 

さらに、「手間はそれだけではない」という。

 

平山「内側にあたる靴下にシートを縫い付け、それを包む“外側の靴下”を別に編みます。そして靴下を2重にし、履き口とつま先をミシンで縫い合わせるんです」

 

厚みがあって手触りがもこもこする理由は、「靴下の2足重ね」にあった。肌に接する内側の糸は暖かい毛混。外側は丈夫で毛玉ができにくい綿混の二重構造で仕上げている。このように靴下を重ねることで、生地と生地のすき間に空気の層が生まれ、通気と保温の役割を果たすのである。

オリジナルシートを縫いつけた靴下に、もう1足、靴下を重ねる。2足の靴下を履き口とつま先で縫いあわせている

 

それにしても、ここまでメカニズムをつまびらかにして、大丈夫なのだろうか。「真似をされてしまうのでは?」と心配になる。

 

平山「意匠権を獲得しているので大丈夫です。それに靴下を別々に編んでミシンで縫い付けるなんて労力がかかる商品、『うちではようやらん』『元が取れん』と思われているようです。真似をする他社さんはいないですね」

 

人気商品になるまでに5年もかかった

 

そんな手間がかかる靴下は、どのようないきさつを経て誕生したのだろう。きっかけは、靴下職人だった先代社長の「ある工夫」にあった。

 

先代時代は、問屋からの発注に応える業態が主だった。創業当初の倉庫は、先代と、大工だった妻の祖父との手づくり。床はベニヤ板で劣化が激しく、トゲなどで怪我をしたりする場合がしばしばあったという。

 

そこで先代は止血のために応急処置として、糸をくるんでいるビニール袋を足に巻いてみた。すると、止血はもちろん足の裏やかかとがしっとりしていることに気が付いたのだそうだ。

 

「これは商品化できるのでは?」「悩んでいる人を助けられるのでは?」。そうひらめいた先代は、かかとがしっとりするオリジナルシートを開発。およそ2年の試行錯誤を経て、「かかとツルツル靴下」という、どストレートなネーミングで販売を開始した。

靴下職人だった先代は、自分の足のケガから「かかとツルツル靴下」の開発を思い立ったという

 

ところが……あまりにも画期的な商品だったために、当初すぐには受け容れられなかった。

 

平山「営業活動を始めてみたものの、『履くだけでかかとがきれいになるわけがない』と、どこも相手にしてはくれなかったようです。ただ一軒、大阪本町の問屋さんが興味を示してくださいましてね。そこから効果が口コミで広がり、ゆっくりと拡大してゆきました。一定の軌道に乗るまでに『5年かかった』と聞いています」

 

足のケアのために生まれた靴下にも、足蹴にされた歴史があったのだ。

 

バリエーションは増え続けている

 

発売後もオリジナルシートの厚さを変えるなど改良を重ねた。かかとのみならず、角質化した足裏一帯をシートで包んだり、つま先を露出させ「かかとのみ」をサポートする商品が誕生したりと、バリエーションを増やしつつ現在も進化している。

コロナ禍によって、売れ筋の動向にも変化が見られたという。

 

平山「“家の中需要”で、もっとぶ厚くて、内側の素材がシルクになったルームソックスも人気商品となりました」

つま先が露出するタイプや、厚みを増したルームソックスなどバリエーションが増えている

 

当代2代目の取締役社長、岡橋洋治氏がECサイトに注力し、主たる購買層が20代~30代の女性へと若返ったのも要注目。さすが足元のケアに特化したメーカー、フットワークは軽いのだ。

 

「購入する8割が女性」というかかとツルツル靴下だが、メンズ向けの商品も充実している。筆者はこれからもこの靴下とともに歩んでゆく所存である。

 

入手はオンラインショップで可能だ。

公式サイト

公式オンラインショップ

 

PR

大切な愛車を守る“最後の砦”!データシステム『カースティールブロッカー』で乗り逃げを阻止する!【盗難防止】[PR]
ひと昔前と比べれば減少傾向にはあるものの、依然として自動車盗難が各地で発生している。ここ数年の盗難被害台数は、1年間で5000台以上! なかでも、プリウス、ランクル、レクサスLX、アルファードなどのトヨタ車に盗難事例が集中している。大切な愛...

PRニュース