今年は家族でひさびさの旅行、できれば海外旅行を楽しみたいという方も多いでしょう。そして、そんな旅行の際の家族写真、おもに子どもの写真がうまく撮れないと悩んでいる方も多いのでは? そんなみなさんに、筆者が3歳の息子と春節の中国ハルビンに出掛けた際の撮影のコツを具体的に紹介します。
旅行写真でも主役はあくまで「我が子」
コンパクトで高性能なマイクロフォーサーズ機はおすすめ
コンパクトなマイクロフォーサーズ機である『OM SYSTEM OM-5』と旅行の必要な小物や貴重品などをコンパクトなカメラバッグに入れて持ち歩いています。
新型コロナウイルスも、ひと段落というか、ひと区切りがついて、今年は旅行に、数年も待っていた海外旅行に行こうという方も多いのではないでしょうか? そして、せっかくの家族での旅行の様子をしっかり写真に収めておこうと、普段はスマートフォンしか使わないけど、レンズ交換式の一眼カメラを持っていくという方も多いのでしょう。
しかし、普段はあまり使っていないレンズ交換式の一眼カメラを持って行ったものの、さほど使わず、せっかく撮っても、思った以上にブレたり、ボケたりと期待したような写真が撮れなかったので、もうスマートフォンでいいやと感じたことのある方も多いと思います。
写真を撮り、文章を書くのが仕事の筆者は、仕事が絡むと35mm判フルサイズと呼ばれる、それなりに大型のカメラとレンズを携えて出掛けることが多いのですが、完全にプライベートになるとスマートフォンオンリーで、そのスマホでさえ写真を撮らないということもよくあります。ただし、家族旅行となると話は別です。現在3歳になった息子の写真を撮るためにコンパクトなレンズ交換式の一眼カメラを必ず持って行きます。
カメラ+レンズでできるだけコンパクトなほうがいいので、普段メインとなる35mm判フルサイズ機というよりもAPS-C機であったり、最近ではよりコンパクトなマイクロフォーサーズ機であったりすることが多いのですが、いうならばコンパクトな初心者向けのエントリー機やコストパフォーマンスの高い普及機を意図的に使っているのです。おそらく、多くの方が所有している一般向けの普及機を選んでプロが家族旅行を撮影しているわけです。
出発する空港に向かうじいのクルマのなかでの1枚。このクルマも、じいが免許を返納したので、今後乗ることはありません。大切な記録です。
今回は、カメラ+レンズというシステム全体が小さく高性能なマイクロフォーサーズの『OM SYSTEM OM-5』を持って、3歳の息子と家族での春節の中国ハルビンの旅行を様子を撮影しましたが、家族旅行の撮影とはいえ、筆者の場合、主役はあくまで我が子。極論するなら、春節のハルビンではしゃぐ3歳の息子がしっかりと記録できれば、背景である観光名所やそのほかはほとんどどうでもいいと思っています。
そんな筆者が「子連れ海外旅行でも片手で素早く、ぶらさず、ぼかさない“子ども撮影”のコツ」を5つのカメラ設定をメインに解説します。今回筆者は持って行ったコンパクトで高性能なマイクロフォーサーズ機『OM SYSTEM OM-5』以外のミラーレス一眼カメラはもちろん、ちょっと古くなったエントリー、初心者向けの一眼レフでも同じような効果が得られるように解説していきます。ぜひ、子どもがうまく撮れないとお悩みの方にご覧いただけると幸いです。
撮影のコツ1 撮影モードは「シャッター速度優先AE」がおすすめ
『OM SYSTEM OM-5』で「シャッター速度優先AE」を選択するにはモードダイヤルを「S」に設定するだけです。超簡単。
旅行のときだけでなく、筆者が子どもを撮影するときにおすすめする撮影モードは「シャッター速度優先AE」です。多くの子どもの写真でブレている原因のひとつは単純にカメラの選択したシャッター速度が遅いから。
「シャッター速度優先AE」ではシャッター速度を撮影者が自分で設定できるので、シャッター速度が遅いことによるブレを防ぐことができます。筆者は走っている、激しく動いている子どもは1/500秒より速いシャッター速度、普段の動きの子どもは1/100〜1/200秒、動いていない子どもや寝ている子どもは1/30〜1/60秒程度と考えて撮影しています。
ただしシャッター速度が遅いと子どもは動いていなくても撮影者の手ぶれがブレることがあるので注意してください。今回、持って行った『OM SYSTEM OM-5』はボディ内に5軸手ブレ補正機構を搭載し、最大で6.5段分の手ブレを補正してくれるのでとても安心でした。
飛行機のシートベルトのロックを自分でできることに気が付いた瞬間。この後、キャビンアテンダントさんに褒められてご満悦です。
注意してもらいたいポイントは、暗い場所で速いシャッター速度を選択するとレンズの明るさとISO感度オートでも対応しきれずにF値の表示「F○.○」などが点滅して警告が出るのですが、気付かずに撮影して、写真が暗くなってしまうことがあります。暗いシーンで撮影したときは、撮影した写真を確認して写真が暗いようならシャッター速度を遅くして、ちょうどよい明るさの写真が撮影できるように調整してください。
また、旅行中にデフォルトとして設定しているシャッター速度は1/160〜1/200秒です。このくらいが普通の動きの子どもを撮影するにはちょうどいいと思っています。
撮影のコツ2 ISO感度は「オート」に設定するのが基本
『OM SYSTEM OM-5』でISO感度をオートにするにはISO感度で「AUTO」を選択するだけです。写真のように「上限値」や「基準値」の設定も可能。
子ども撮影に限らず、最近のデジタルカメラでの撮影では多くの方がISO感度はオートを選択しているのではないでしょうか。カメラが撮影場所の明るさに合わせて適切なISO感度を選択してくれるので、とても便利です。
特に今回のように「シャッター速度優先AE」を選択している場合は、選択したシャッター速度で撮影できるようにレンズの絞り値だけでなく、ISO感度もオートで調整してくれるのでISO感度オートは必須ともいえる設定になっています。
2月の極寒のハルビン空港に迎えに来てくれた義姉に外は寒いのだからとダウンジャケットの上からダウンジャケットで包まれて抱かれていくところ。
機種によってはISO感度オートを選択した場合に使用するISO感度の範囲を設定することもできるので、こちらも設定しておくと使いやすいでしょう。筆者は高いISO感度を選択することで起きる画質低下よりも、画面が暗くなったり、撮影できなかったりすることがイヤなので、できるだけISO感度オートでカメラが選択できるISO感度の幅が広くなるように設定しています。
撮影のコツ3 被写体認識の「顔優先on」+コンティニュアスAF
個人的にはミラーレス一眼の最大のメリットだと思っている顔・瞳検出AF。『OM SYSTEM OM-5』では「顔・瞳優先On」を選択しています。
「シャッター速度優先AE」や「ISO感度オート」といった設定は、多くの場合レンズ交換式一眼レフカメラでも選択可能になっています。ただし、ここで紹介する被写体、または顔や瞳を検出するAF、カメラがリアルタイムで画面内の被写体を検出して、被写体の必要な部分にピントを合わせる機能はミラーレス一眼カメラの大きなアドバンテージとなっています。
マイクロフォーサーズのミラーレス一眼カメラである『OM SYSTEM OM-5』にも人物の顔や瞳を検出するAF機能が搭載されておりメニューから「顔優先On」を選択するだけで使用可能です。筆者はさらに顔のなかから瞳を優先してピントを合わせる「顔・瞳優先On」を選択して撮影しています。
ミラーレス一眼カメラであれば、多くの機種で、これらの人物の顔や瞳にピントを合わせてくれる機能が搭載されていますので、とっさに片手で撮影してもしっかり子どもの瞳にピントが合うように、ぜひこちらの機能を選択しておいてください。
世界最大規模といわれるハルビン氷祭りの会場で、レンタルのソリに乗ったまま眠ってしまった息子。すれ違う人の多くの方に早く暖かい室内に行くようにと心配されました。
また、顔や瞳が認識できないシーンに対応するために人物が認識できないシーンのAF動作についても選択できるようになっていますが、筆者は子ども撮影の場合、動いている被写体をシャッターボタン半押し状態で追尾し続けるコンティニュアスAF=C-AFを選択しています。これは一眼レフカメラでも選択可能なので、一眼レフの方もぜひC-AFを使ってください。
さらにAFエリアやAFターゲットの設定は画面全体やすべてのAFセンサーを使用する「ALL」を選択しています。これは旅行中の子ども撮影では、カメラを出してとっさに片手でそのまま撮影することも多く、ゆっくりとAFエリアを選択している余裕のないシーンでもカメラが自動でAFを合わせるターゲットを選択してくれるようにデフォルトの設定としています。
さまざまなシーンでピンボケを防ぐためにミラーレス一眼カメラでは「顔認識」+「C-AF」+「ALLエリア選択」、一眼レフでは「C-AF」+「ALLエリア選択」をAF設定のデフォルトとしています。ぜひお試しください。
撮影のコツ4 高速連写の「連写H」で3枚程度は連続撮影
『OM SYSTEM OM-5』では約10コマ/秒という高速連写が可能な「連写H」を選択しています。これで子どもの一瞬の表情もとらえることができるのです。
子ども撮影の際は、筆者は基本的に連写します。そのためカメラのドライブ設定は高速連写です。今回持って行った『OM SYSTEM OM-5』では約10コマ/秒という高速連写が可能なので、子どもの一瞬の表情の変化も逃さずに撮影できるというメリットがあります。
ただし、高速連写といっても1度に撮影するのは3枚前後。ピントを合わせて3枚前後連写したら、また角度などを変えて3枚連写といった感じで撮影しています。これによって同じシーンでも子どもの表情が細かく変化しているそれぞれのシーンをとらえることができますし、1枚目は手ブレしていたけど2枚目は大丈夫とか、連写した3枚のなかからもっともピントがしっかりあった写真を選択するといったことが可能になります。撮影の成功率が大きく上がるわけです。
ホテルのルームサービスを利用する3歳児。非常にシンプルな味が気に入ったらしく、次の日もルームサービスのピザを要求していました。
高速連写を使うと最初はちょうど3枚程度で止めるのがなかなか難しいので、練習しながら慣れておくことをおすすめします。デジタルカメラの場合、たくさん撮影しても後から消すこともできるので、できるだけたくさん撮影して後からベストショットをセレクトするのも上手に撮影するコツのひとつと言えるでしょう。
撮影のコツ5 露出補正は+0.7EV、女の子なら+1.0EVもあり
『OM SYSTEM OM-5』の露出補正は「露出補正ボタン」を押して、操作ダイヤルを回転するだけと非常に簡単。小さいけど操作性が高いのも、このカメラの特徴のひとつです。
ほとんどのカメラで「マニュアル露出(M)」「バルブ(B)」といった撮影モードを除くと「AUTO」「プログラムAE(P)」「絞り優先AE(A)」「シャッター速度優先AE(S)」などはカメラが写真が適切な明るさになるように自動で絞り値やシャッター速度、さらにはISO感度などを自動で設定してくれます。
しかし、このカメラが適切と感じる明るさは、子どもを撮影しているとちょっと暗く感じることも多いはずです。そこで筆者は「露出補正」という機能を使ってカメラが適切と感じる明るさよりも写真がより明るくなるように設定しています。
春節、中国の新年の飾りを手伝って(邪魔して)いるところ。最終的には自分にも春節の飾りを貼ってもらって、やっと満足しました。
多くのカメラでは「+/−」と表示されたボタンを押したり、メニューから「露出補正」を選択したりして設定できるはずです。筆者は『OM SYSTEM OM-5』で息子を撮影する際には、この露出補正を「+0.7」EVとしていますが、女の子を撮影する際にはさらに明るい「1.0」EVでも問題ないかと思います。
撮影するシーンや好み、カメラの機種などによっても露出補正の適正値は異なるので、実際に試してみて微調整することをおすすめします。子ども撮影の場合は、程度の差はあれ、基本的にプラスの補正が適切に感じられることが多いと思います。
旅行中の子ども撮影のコツ+α
コンパクトなカメラバッグと明るくて小型の標準ズームがおすすめ
筆者は『M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO』を取り付けた『OM SYSTEM OM-5』をコンパクトな『Luce メッセンジャーS』に収納して持ち歩いています。
「片手で素早く、ぶらさず、ぼかさない“子ども撮影”5つのコツ」はカメラ設定をメインとした、すでに紹介した5つになるのですが、これらに+αとして旅行中の子ども撮影のポイントを2つほど紹介させていただきます。
ポイント1 収納について
ひとつ目のポイントは意外に感じるかもしれませんが、カメラはコンパクトな肩掛けカメラバッグに入れて、胸やお腹の前で収納しておくことです。移動中なども子どもを撮影するのにカメラはいつも出しておいて肩などの掛けておく方がよいように感じますが、実際の旅行ではコンパクトな肩掛けカメラバッグに収納してパスポートや財布、スマートフォン、ペン、記録メディアなどといっしょに胸やお腹の前に下げておくのがおすすめです。
カメラをいつも小型のバッグなどといっしょにそれぞれの肩に下げておくスタイルだと思う以上に動きが制限が多くなり不便です。しかも撮影していないときに下げているカメラが子どもの頭に当たり泣き出すといったトラブルも発生するので、筆者は安全性も高く、取り出しやすい胸やお腹の前に下げたカメラバッグにカメラを収納して、必要なシーンで取り出して撮影する今のスタイルになりました。
具体的にはケンコー・トキナーが取り扱っている『Luce メッセンジャーS』(実勢価格 税込3,600円)にレンズと取り付けたカメラとパスポートなどを入れているわけです。旅行用バッグよりもカメラバッグをおすすめする理由は、カメラを守るための緩衝材などがしっかりしているので、中に入れたカメラやレンズ、スマートフォンなどの精密機器を守ってくれますし、子どもの頭とぶつかったときも衝撃が小さく子どもが泣き出すこともほぼないためです。普段のお散歩にもおすすめなので、ぜひ検討してみてください。
ポイント2 軽量でコンパクトな明るい標準レンズ
『OM SYSTEM OM-5』(約414g)とF4.0通しで24〜90mm相当までをカバーしてくれる『M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO』(約254g)を合計しても約668gと軽量。
子連れで荷物のパンパンに詰まったスーツケースやキャリーケースを持ち歩いている旅行の移動の際に頻繁にレンズ交換をしながら撮影をするのは、かなり難易度が高いと言わざる得ません。ホテルなどに荷物を置いてきた状態なら多少はレンズ交換をする余裕もありますが、走り回る3歳児の安全を確保しながらになると、さほど頻繁に行う余裕はないのです。
そのため、旅行中のメインとなるレンズは重要なのですが、筆者はできるだけ軽量コンパクトな明るい標準レンズをおすすめします。撮影可能なズーム範囲の大きな高倍率ズームなどを考える方も多いかもしれませんが、実際問題、とっさに片手で撮影することも多い旅行時の子ども撮影ではレンズの軽さは重要です。『OM SYSTEM OM-5』のようにマイクロフォーサーズ機で約414gと軽いカメラ本体を選択しても、これにレンズの重さが加わるので自分が片手で持っても疲れず、しっかりホールドできる重さがおすすめです。
そのため、筆者は今回の春節の中国ハルビン旅行では『M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO』を選択しました。プロ向けのズーム全域でF4.0が選択できる明るいF4.0通しレンズでありながら、重さはわずか約254g。『OM SYSTEM OM-5』と合計しても約668gと片手でも十分に取り回せる重量で、35mm判換算で広角の24mm相当から中望遠域の90mm相当までカバーしてくれるので、子ども撮影には最高の組み合わせといえるでしょう。
2020年2月12日現在、開放F値固定の標準ズームレンズにおいて、世界最小最軽量だという『M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO』はかなり恵まれたレンズ選択といえますが、暗いシーンでの撮影も多く、近接撮影になることも多い子ども撮影では、高性能で小型でコンパクト、しかも明るい標準ズームズレンズをメインとして選択することも撮影の大きなコツと言えます。
旅行の際に息子がどんな顔をしていたかを記録したい
ドンドン変化する子どもの顔をできるだけ残しておきたい
ハルビン発成田行きの便を待つ間に、日本への持ち込みができない肉加工品のソーセージを食べてしまう息子。スーツケースと身長の関係が将来写真を見るときに楽しめそうです。
職業柄、息子の写真を撮影する機会も多く、一般的なご家庭よりもかなり多く息子の写真を撮影していると思うのですが、3歳になった今、どうしてその時期ならではの可愛さが光る1歳の頃にもっと撮影しておかなかったのか? と後悔しています。旅行先でどこかの有名な名所などを撮影しておらず、後悔したことはほぼないので、筆者にとって重要なのは我が子の変化であって、どこで撮影したかは二の次のようです。
そのため、筆者にとって海外などの旅行先でも重要なのは息子がどんな顔や表情で、なにをしていたかです。いつのどこかは、いっしょに行った筆者や妻は写真をみればだいたい思い出せるので、さほど気にしていません。それよりも過去の写真を見ると、予想以上に顔がドンドン変わっていくことに驚くばかりです。
ほんの1、2年前である1歳の時期に比べても、3歳の息子は写真で見るとまったく違う顔になっています。どこに行ったかよりも、この子どもの成長による変化のほうがはるかに楽しく、ついつい過去の写真を見てしまうのです。ぜひ、みなさまにもそんな楽しみを共有していただきたく、今回の「片手で素早く、ぶらさず、ぼかさない“子ども撮影”5つのコツ」をまとめてみました。なにかのお役に立てると幸いです。また、筆者は今回の子連れ海外旅行で10日間で約1万カットほど撮影をしていました。掲載した写真は、その一部となっています。
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