【実写チャートレビュー】かわいげがないほど高性能『SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS | Sports』は室内競技家庭に激推しの望遠レンズ

レビュー

70-200mmF2.8といえば、多くのカメラマニアが憧れる大三元の望遠レンズ。そのシグマのミラーレス一眼カメラ向けの新製品が『SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS | Sports』です。この高性能な望遠ズームレンズを実写チャートを使って分析した結果をお伝えします。

プロの定番大三元の望遠ズーム

多くのユーザーが憧れる高性能なF2.8通しレンズ

普段はソニー Eマウントを使うことの多い筆者。今回はテレコンバーターが使いたいのでPanasonic LUMIX S5 Ⅱに装着できるライカ Lマウント用を選択しました。

 

大三元レンズをご存じでしょうか? カメラの専門誌でよく使われる用語で、各カメラシステムやブランドを代表するF2.8通しの広角ズームレンズ、標準ズームレンズ、望遠ズームレンズの3本を大三元レンズと呼びます。

 

F2.8通しのズームレンズとは、多くのズームレンズで広角端と望遠端では選択できるレンズの明るさ(F値)が異なるのが一般的ですが、F2.8通しのズームレンズでは広角端でも、望遠端でも選択できる開放F値がF2.8と非常に明るいズームレンズを指しています。

 

この大三元レンズは、プロカメラマンやハイアマチュアカメラマンのレンズラインアップの基本ともいわれており、各社が技術の粋を尽くした高性能で高価なズームレンズのため、ある意味のステータスシンボルともなっています。

 

最近ではカメラメーカーの純正レンズ以上に高性能なレンズを発売するサードパーティーレンズメーカーとしてのポジショニングを固めているシグマが、この大三元レンズの望遠ズームに『SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS | Sports』を2023年末に投入しました。ミラーレス一眼カメラ向けで、対応マウントはソニー Eマウント用とライカ Lマウント用がそれぞれ用意されます。実勢価格は210,000円前後。

 

大きさは最大径約90.6mm、長さ約207mm、重さは1,335g(ソニー Eマウント用)と一眼レフ向けの従来モデルに比べて、500g近く軽くなっていることも大きな特徴です。また、AFについてもフローティングフォーカスを採用し、2つのフォーカス群をお互いに逆方向へ動かす構造を採用することで、フォーカスレンズの移動量を約半分に短縮、これに2つのフォーカス群それぞれに大推力のリニアモーターHLA(High-response Linear Actuator)を搭載することで高速なAFを実現するデュアルHLAを採用。静粛かつ高速なAFを実現しているといいます。

 

さらに 最新の手ブレ補正アルゴリズムOS2の採用により、広角側で7.5段、望遠側で5.5段という高い手ぶれ補正効果を実現する『SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS | Sports』は、まさに高画質で高性能なプロ、ハイアマチュア向けのハイエンドな望遠ズームレンズに仕上がっています。この『SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS | Sports』の性能を実写チャートを撮影して検証してみました。

 

かわいげがないほど高性能な『SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS | Sports』

解像力も、ぼけもズームレンズとは思えないレベルの高性能

写真の『SIGMA TELE CONVERTER TC-2011』や『SIGMA TELE CONVERTER TC-1411』といったテレコンバーターが使えるのも大きな魅力です。

いまでこそ、筆者はさまざまなレンズのチャートを撮影して、その結果などを含めたレンズレビューを書かせていただいていますが、このレンズチャートを撮影するようになったのは、筆者自身が感覚的な表現によるレンズの特性の違いよく理解できなかったからです。

 

そこでレンズ評価の筆者の師匠である小山壯二氏に分析用の実写チャートを作ってもらい、気になるレンズで撮影をしはじめたのが、そのはじまりだったのですが、それらを筆者の備忘録として、さらには多くの方にデータとしてご覧いただければとまとめたのがAmazon Kindle電子書籍の「レンズデータベース」や「レンズラボ」シリーズです。

 

今回は「SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS | Sports レンズデータベース」から実写チャートの結果を転載して紹介しています。電子書籍自体はかなりマニアックな内容なのですが、今回のレビューを読んで興味を持っていただけたら、電子書籍もご覧いただけるととてもうれしいです。

 

ちなみに筆者は今回の『SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS | Sports』のような大三元レンズのチャート撮影がもっとも嫌いなのです。理由は多くがフィルム時代から磨きに磨き上げられた高性能レンズなので、結果はおしなべて非常に良好、ものによってはライバルレンズを比べても、新旧モデルを比べても、結果を並べて比較しないとわからないほど、どれも高性能なことが多く、そのためチャート撮影に気を使う割に、びっくりするような結果を得られることがほとんどないからです。

 

最近のシグマを含む有名どころの大三元ズームレンズは、そんなレベルにまで洗練されていると考えてもらって間違いないといえます。

望遠端200mmでの解像力チャートの結果はうっとりするほど

基準となるチャートは1.1。絞り開放のF2.8から周辺部のチャートまでしっかりと解像しているのがわかります。周辺が少し暗いのは周辺光量落ちの影響です。

 

シグマのミラーレス一眼カメラ向け大三元望遠ズームレンズである『SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS | Sports』の性能が低いなどということは、まず考えられないので十分以上の結果が出ることは予想していたのですが、それでも望遠端200mmでの解像力チャートの撮影結果はうっとりと眺めていられるレベル。

 

カメラはLマウントアライアンスのPanasonic LUMIX S5 Ⅱを使用したので有効画素数約2,420万画素、そのため画素数による解像力の理論限界はチャートの1.1になります。『SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS | Sports』はこの1.1サイズのチャートを絞り開放のF2.8から中央部はもちろん周辺部でまで軽々と解像。F2.8からF3.2あたりで多少周辺部のチャートで周辺光量落ちの影響を感じる程度で、どの絞りで撮影しても不満を感じることはないでしょう。

 

解像力のピークとしては周辺部のチャートのコントラストの差でF8.0からF11です。多くの撮影結果でさらに小さな3,000万画素クラスの基準となる1.0サイズのチャートも解像する結果でした。素晴らしい。

広角端の70mmでは絞り開放付近の周辺部の描写が解像していないわけではないのですが、ソフトな描写に。絞るとシャープになりますので、上手に活用したいところです。

 

一方、広角端の70mmの解像力チャートの結果は多少クセが感じられました。多くの場合70-200mmの望遠レンズは200mm側優先で設計されていることが多いのですが、『SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS | Sports』の場合、広角端での中央部分の解像力は望遠端の200mmと同じように絞り開放からパーフェクト。

 

F8.0からF11あたりまで絞ってもコントラストが変化する程度なのですが、周辺部はF2.8からF4.0くらいまでが、解像していないわけではないのですがソフト描写です。F5.6からF11あたりまで絞ると望遠端と同じように画面全体で高いコントラストとシャープネス、解像力を発揮する傾向になっています。

周辺部の描写がソフトになると、より中央部に配置した被写体を強調する効果が得られるので、この点は覚えておいて、画面の中心に人物などを配置するポートレート撮影などで活用するとよいでしょう。

ズームレンズとは思えないレベルの美しいぼけチャートの結果

望遠端200mmの玉ぼけを撮影したぼけディスクチャート。ぼけ内部のザワつきやタマネギぼけなども少なく、色つきもない美しい結果になっています。

 

超小型のLEDライトを使って点光源を撮影し玉ぼけを発生させるぼけディスクチャートの撮影も行ったのですが、『SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS | Sports』は、15群20枚で FLD6枚、SLD2枚、非球面レンズ3枚という複雑なレンズ構成のズームレンズでありながら、望遠端の200mm、広角端の70mmともに非常に美しいぼけの傾向を示しました。

 

ぼけディスクチャートから読み取れる傾向は、玉ぼけのなかにざわざわとしたゴチャつきや非球面レンズの影響といわれることの多い同心円状のシワ(タマネギぼけ)、玉ぼけの外周部分の色つき、フチ付きなどが、いわゆるぼけがガチャつく、ぼけがゴチャゴチャして汚い、二線ぼけといったものの原因になります。

 

『SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS | Sports』のぼけディスクチャートは、非球面レンズを3枚も使っているのですが、タマネギぼけの傾向はほぼなく、玉ぼけのなかのゴチャつきも感じられず、玉ぼけの外周に発生する色つきもありません。唯一気になるとしたらフチ付きのみといった結果です。

広角端70mmでのぼけディスクチャート。望遠端の200mm同様、ザワつきやタマネギぼけ、色つきを感じない素晴らしい結果。美しいぼけが楽しめます。

 

このことから「SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS | Sports」は、単焦点レンズ並みの美しいぼけが、望遠端でも広角端でも楽しめるといえます。これは実際に撮影した作例でも同傾向です。

また、11枚羽根の円形絞りを採用しているため、ぼけの形も真円に近く美しいのも特徴。絞っても円形を保つ傾向で、画面全体に玉ぼけが発生するようなシーンでは望遠端はF6.3、広角端はF5.0まで絞ると口径食の影響を回避し、画面周辺部までで欠けのない玉ぼけを楽しむことができます。

 

プロ・ハイアマチュアはもちろん室内競技家庭におすすめしたい1本

高性能が故にテレコンバーターを積極的に使いたい

ソフトテニス大会での1枚。1.4倍のテレコンバーターとクロップで300mm相当、開放F値は4.0ですが、シャッター速度1/500秒でISO感度は12800まで上がります。

デュアルHLAで実現した高速なAF、強力な手ぶれ補正、実写チャートの結果からもわかる高い解像力、そして、それをさらに引き立てる形も質も素晴らしいぼけ。『SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS | Sports』はプロやハイアマチュアも納得レベルの大三元望遠ズームレンズに仕上がっているといえます。

 

画質やレンズの明るさを追求するプロやハイアマチュアにおすすめなのも当然なのですが、筆者は室内競技を家族で楽しんでいるご家庭には、いきなりの望遠ズームレンズとして『SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS | Sports』をおすすめします。

 

筆者の知人にも何人かいるのですが、例えばバスケットボールを兄妹3人、両親も、おじいちゃんもレベルで楽しんでいるご家庭や、全国大会レベルでお姉ちゃんもお兄ちゃんも軟式テニスを楽しんでいるご家庭などは、写真を撮影する理由が大会などでの記録であったりすることが珍しくありません。

 

そんな屋内で行う、バスケットボール、バレーボール、バドミントン、卓球といった競技を撮影するなら、最終的にF2.8通しの明るい大三元ズームレンズが絶対にほしくなるので、最初から、やや高価ではありますが『SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS | Sports』を選択するのもありだと思っています。

 

どうしても屋外とは異なり光量の足りない屋内で、屋外競技と比べてもスピーディーな動きの多い屋内競技の撮影では明るく、AFの合焦も速い『SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS | Sports』のような大三元望遠ズームが圧倒的に優位なのです。

 

『SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS | Sports』+『SIGMA TELE CONVERTER TC-2011』で400mmの超望遠撮影。屋外の動物撮影にも十分活躍してくれます。

 

さらに『SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS | Sports』の場合、ライカ Lマウント用のみになってしまいますが、多くの大三元望遠ズームレンズは焦点距離を拡張することができるテレコンバーターが用意されているのも大きな魅力です。『SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS | Sports』用は焦点距離を1.4倍に拡張する『SIGMA TELE CONVERTER TC-1411』(実勢価格43,000円前後)と焦点距離を2倍に拡張する『SIGMA TELE CONVERTER TC-2011』(実勢価格47,000円前後)が用意されています。

 

テレコンバーターを使用するとレンズの画質が低下することと、1.4倍のものでは1段、2.0倍のものでは2段レンズの開放F値が暗くなるという弱点があります。しかし『SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS | Sports』のような高性能レンズは元々の画質が極めて良好なので画質低下の影響は小さく、開放F値が2.8と明るいので1.4倍にすれば98〜280mm相当のF4.0通し、2.0倍にすれば140〜400mm相当のF5.6通しのズームレンズとして活用できます。

 

小中学生の室内競技の大会や試合は、その規模によって体育館などのサイズや撮影制限がまちまちなので、その環境に合わせて、テレコンバーターなし、1.4倍装着、2.0倍装着を使いわけると『SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS | Sports』1本でズームレンズ数本分の活躍をしてくれます。

 

ちょっと贅沢ですが、高速なAF、高画質に美しいぼけ、さらに最短撮影距離も短い『SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS | Sports』は普段の子どもの撮影にもぴったりです。

 

望遠性能としても400mm相当F5.6とかなり明るい超望遠として使えるので、屋内だけでなく屋外の撮影でも便利なのですが、これに35mm判フルサイズのカメラでAPS-Cサイズの撮影をするクロップを併用すると、さらに焦点距離にして1.5倍相当の画角を得ることができます。すなわち『SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS | Sports』に2倍のテレコンバーターを使い、クロップすれば210〜600mm相当F5.6と単焦点の超望遠レンズ並みの望遠性能と明るさを実現することができるわけです。

 

運動会など屋外メインの子ども撮影であれば、同じ望遠ズームレンズでも『SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG DN OS | Sports』といった、より望遠で開放F値は暗いのですが、価格の安いものをおすすめします。ただし、室内競技をメインで撮影する予定なら、最初から『SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS | Sports』メインでテレコンバーターやクロップを組み合わせるのがおすすめです。

 

純正の大三元望遠ズームレンズに比べるとコストパフォーマンスは高いとはいえ、やや高価な『SIGMA 70-200mm F2.8 DG DN OS | Sports』ですが、撮影しているときには、そのAFの小気味よい動きに、撮影後は撮影画質の美しさにうっとりとできるレベルの素晴らしいレンズに仕上がっています。プロやハイアマチュアのような作品撮影を目指す方でなくても一度は試していただきたい、まさにプロレベルの望遠ズームレンズです。

SIGMA公式サイト

レビュー文具・ホビー・カメラカメラ
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齋藤千歳(フォトグラファーライター)

元月刊カメラ誌編集者。新しいレンズやカメラをみると、解像力やぼけディスク、周辺光量といったチャートを撮影したくなる性癖があり、それらをまとめたAmazon Kindle電子書籍「レンズデータベース」などを出版中。まとめたデータを元にしたレンズやカメラのレビューも多い。使ったもの、買ったものをレビューしたくなるクセもあり、カメラアクセサリー、車中泊・キャンピングカーグッズなどの記事も執筆。現在はキャンピングカーを「方丈号」と名付け、約9㎡の仕事部屋として、車内で撮影や執筆・レビューなどを行っている。北海道の美しい風景や魅力を発信できればと活動中。

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