国民皆保険制度の日本では、どこでも同じ質の医療が受けられる建前ですが、実情はちがうことはだれもが知っています。そのうえ、電子カルテの普及に伴い、特に若い医師が患者の目を見ず、体にもさわらないで診察を行うことがふえています。「医師が患者に向き合ってくれていない」と感じるかたがふえてきているのです。そこで今回は、「患者のパフォーマンス(診察室での振る舞い)を変えることによって、名医を発見するメソッド」をご紹介します。ぜひ参考にしてください。
医師と上手につきあい、「名医」を発見するメソッドとは?
医師のコミュケーション力不足が大きな問題
そもそも、皆さんにとって、「名医」とはなんでしょうか?
これまで、私の研究では、「患者に伝える力があり、腕もいい医師であること」という結論が出ています。つまり、患者ときちんとコミュニケーションが取れること、そして確かな技術があること、です。
日本じゅうの医師がそうであればいいのですが、なかなかそうはいかないのが現実。実際、患者から医師への苦情の上位3位までは、医師のコミュニケーション力に関するものです。
医師を4つのパターンに分けてみると……
ここで、医師を以下の4パターンに分けてみたいと思います。
A群は、実力があり、人柄もよい「名医」です。こうした医師に巡り合った人は、さらに良い関係づくりをしてください。
B群は、実力はあるが、対人態度が悪い「名医予備軍」です。上手につきあえば、名医になる可能性があります。
C群は、実力は足りないが、人柄はよい「凡医」です。上手につきあって気にいられれば、「名医」を紹介してくれる可能性があります。
D群は、実力もない、人柄も悪い「NGドクター」です。いわゆる「やぶ医者」です。名医に変身することも、名医を紹介してくれることも期待薄なので、基本的にはつきあいをやめたほうがいいでしょう。
では、私たちは診察室でどのように振る舞えばいいのでしょうか。
パソコンだけを見ている医師の振り向かせ方とは
医師と患者のコミュニケーション研究の先駆者である、ジョンズ・ホプキンス大学のオスラー博士は、『平静の心 オスラー博士講演集』のなかで、「大概の答えは患者の顔に書いてある」と指摘されています。つまり、きちんと医師が患者の顔を見て話をすることは、医療の基本だといえます。
しかし、特に若い医師は、診察の間じゅう、体をパソコンに向けたまま、データを打ち込むことに夢中です。患者はそれに不満でも、「先生、私の顔も見てください」とはいいにくいもの。
ではどうしたらいいか。私が研究しているパフォーマンス学から、1つヒントをお話しします。
小さい動作で注意を引こう
力の下位の者が、上位の者から発言権を取ったり、注目を集めたりするときは、動作の小さいものから大きいものへと、しだいにステップを踏みながら信号を送っていくのがお勧めです。
小さい動作としては、例えば医師がパソコンに夢中なときに、カサっと音を立ててメモ帳を取り出し、「今の説明をメモに取りたいのですが」「その言葉がわからないのですが」などと聞くことです。最初から声を出してしまうと、患者が医師をさえぎってしまうことになるので、よくありません。
ですから、小さな音を出すのが第1ステップ。
机の上にメモ帳が置いてあれば、そこにペンで書きこむ音をさせるのもいいでしょう。それでも気づいてくれなければ、「今のお話をメモにまとめて、忘れないようにしたいのですけど」と声をかけましょう。
それでも気づいてくれないときは、自分の体を医師のほうに向けて乗り出し、斜めから視線を合わせるような姿勢で、「あのう」といい出すのも有効です。
それでも振り向いてくれなければ、この医師は「NGドクター」だとあきらめたほうがいいでしょう。
これは、患者が医師と上手につきあうためのメソッドの、ほんの一例です。私と大阪市立大学理事長兼学長との共著『あなたの主治医が名医に変わる本』では、「いい医療を受けるための13ポイント」「名医を味方につける診察室のふるまい16」など、さらに詳しくご紹介しています。