旅先で胸を打たれた美しい夕焼け空。この感動を思い出に残そうと写真を撮ったものの、出来上がった写真は、記憶の中の感動の色には程遠い、あっさりした薄い色だったという経験はないだろうか。画面の広い範囲が「オレンジに染まった夕焼け空」のような単色で占められるシーンでは、カメラが「勘違い」をしてその色味を補正しようとする。その結果、夕焼けの色味が弱まり、あっさりした仕上がりになってしまうのだ。これを防ぐには、カメラの設定で「ホワイトバランス」を手動で調整するのが簡単、かつ確実な方法だ。
まずはホワイトバランスについて知っておこう
(×)オートホワイトバランスで撮ると夕焼け空のきれいなオレンジ色が薄まってしまう。
(○)ホワイトバランスの設定を変えることで見たままの色に再現できる。
ホワイトバランスとは「写真の色味を決める機能」で、白いものが白く写るように調整するところからそう呼ばれている。
写真を撮るのに使う光源には、自然光(太陽光)のほか、写真電球(白熱灯)、ストロボ、蛍光灯などがあり、それぞれに「光の色」が違っている。
その違いを補正して、どんな光源ででも正しい色味で撮れるようにするための機能が、ホワイトバランスというわけだ。
スマホのカメラアプリはホワイトバランスが変えられないものが多い
一眼レフやミラーレスカメラ、コンパクトカメラには、さまざまな光源に対応できるようホワイトバランスを変えられるようになっているが、スマートフォンのカメラアプリなどはカメラまかせのオートだけのものも多い。
たいていのシーンではオートのままで見た目に近い色味になるが、たまにうまくいかないこともある。
たとえば、左下の写真は画面の大半が黄色いバラで占められている(変な色で写っているだけで、ほんとは黄色いバラである)。
そのため、カメラは「黄色みのある光で照らされているのだ」と勘違いして、黄色みを打ち消すように補正してしまう。結果、こんなふうに青緑っぽい不自然な色味に写ったというわけだ。
最近のカメラは、昔に比べてずいぶん賢くなったとは言え、ときどきこんな失敗をやらかしてくれるので要注意なのだ。
(×)黄色いバラを撮ったはずが、オートホワイトバランスだと青っぽく写ってしまった。
(○)ホワイトバランスを「太陽光」に設定すれば、黄色いバラらしい色で写すことができる。
設定方法は「オート」から「太陽光」に変更するだけ
コンパクトカメラや一眼レフ、ミラーレスカメラなどであれば、メニューの中に「ホワイトバランス」という項目があるはずだ。
メニューからホワイトバランスを選択して中に入ったら、設定を「オート」から「太陽光(または「昼光」「晴天」など)」に変更する。これだけでOKだ。
人間の目は昼間の太陽光を白(色の偏りのない光)と認識するので、ホワイトバランスを「太陽光」に合わせてやれば、原則的には目で見たのと同じ色味に写る。
ただし、人間の脳は実際よりもきれいな色であったかのように記憶する変なくせがあるため、正しい色再現であっても少しあっさり気味に感じることもある。
記憶色を再現できる「ピクチャーモード」を選ぶと良い
記憶の中に残る、実際よりも鮮やかな色のことを「記憶色」と言う。
この記憶色を再現するには、カメラのピクチャーモードを変更するといい。
ピクチャーモードは、写真のコントラスト(メリハリ)や彩度(色の鮮やかさ)、シャープさ(解像感)などを調整できる機能のことだ。
キヤノンのカメラなら「ピクチャースタイル」、ニコンのカメラなら「ピクチャーコントロール」という項目がメニュー内に用意されている。
標準的なピクチャーモードも、記憶色寄りの再現になるようチューニングされているが、それをさらに鮮やかな「風景」や「ビビッド」などに変更することで、記憶の中の色にぐっと近づけられる。
まとめ
ホワイトバランスとピクチャーモードを設定するだけで、写真の色味はぐっと良くなるはずだ。
特に、ホワイトバランスは写真の色味を大きく左右する要素なので、カメラまかせ(オート)ばかりにせずに、必要に応じて設定を選ぼう。
スマートフォンのカメラアプリは、ホワイトバランスが変更できない(オートで固定されている)ものも多いので、アドビシステムズの「Lightroom CC」アプリのような、ホワイトバランスの設定が変えられるものをインストールしておくといいだろう。
◆北村智史
いろいろなメーカーのカメラを使って写真を撮ったり記事を書いたりするのがなりわいのフリーライター。カメラ専門誌や一般誌、ウェブ媒体で活動中。文字数多めのブログも運営してます。他人を沼に招く習性があるため、取り扱いには注意が必要です。愛用ソフトウェアはPhoto MechanicとLightroom Classic CC。
Twitter:kitamura_sa
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