年を取れば誰でも、筋肉や関節が老化します。しかし、痛みが出る人と出ない人がいるのはなぜでしょう。痛みと無縁の人は体を正しく使い、負担を分散して対処しているのです。正しい体の使い方の第一歩として、股関節の動きをよくする太もも伸ばしは、お勧めしたい体操の一つです。【解説】増渕喜秋(整形外科 スポーツ・栄養クリニック代官山 理学療法士)

解説者のプロフィール

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増渕喜秋(ますぶち・よしあき)
整形外科・スポーツ・栄養クリニック代官山 理学療法士。総合病院やクリニックで理学療法士として勤務。国際認定のピラティス指導者。プロスポーツ選手から高齢者のリハビリまで、さまざまな分野でピラティスを取り入れたリハビリテーションの実施経験を持つ。

「太もも伸ばし」をリハビリに活用

当院は、理事長で医師の武田淳也が、医療として日本で初めて、運動療法にピラティスメソッド(理想的な姿勢と動作を学ぶエクササイズ)を取り入れ、医師の指示のもと、リハビリテーションを展開している整形外科クリニックです。福岡と東京の二ヵ所にあります。

初めての患者さんはリハビリ室を見ると、「え?ここは整形外科?」と驚きます。ピラティス器具が置かれ、スポーツウェアを着た理学療法士が対応するためです。

当院では、理学療法士とピラティス・インストラクターの二つの資格を持つスタッフが、リハビリを実施。痛みの改善や再発予防、身体能力の向上をサポートします。

ピラティスは、美容とダイエットのための体操と認識されがちです。しかし欧米では、整形外科医が患者さんに、運動療法として勧めています。専用の器具を使い、1対1で教えるのです。当院でも同様です。

専用の器具を使うことで、運動の負荷量を調整できるため、ご高齢のかたにも、安全で効果的な運動療法を提供できます。

別記事「太もも伸ばし」のやり方でご紹介しているジャックナイフストレッチをはじめ、太ももを伸ばす体操は、当院でも多くの患者さんにお伝えしています。ピラティスの器具を使い、より安全に、効果的に指導することもできます。

腰やひざ、股関節、首、肩の痛みで来院する患者さんは、まず医師の診察を受けます。レントゲン撮影だけでなく、筋肉や靭帯(骨と骨をつなぐ組織)の状態がわかる超音波画像診断も行います。

骨粗鬆症診断で最も推奨される、大腿骨頸部と腰椎両方の骨密度を測定する機器も備えています。必要に応じて、MRI撮影(磁石と電磁波を使って体内を見る検査)の依頼を出します。

それらの結果と機能診断により、正確な診断に基づく薬や注射はもちろん、国内トップレベルの運動療法などの処方と指導がなされます。

股関節が固い人は腰やひざが痛みやすい

リハビリは、痛みの原因を探る問診と評価から始まります。

痛みの原因は、「間違った姿勢や体の使い方(モーターコントロール不全)」の場合も少なくありません。患者さんに、ふだんどおり、立って、歩き、実際に痛みが出る動作をしてもらいます。それを動画で撮影し、いっしょに確認します。

正しい姿勢や動作を指導することで、その場で痛みが改善することも多々あるのです。

その後、筋力や柔軟性を評価し、かたいところは筋膜リリースやストレッチ、温める物理療法などで柔軟性を高め、筋力を運動療法で強化していきます。

それだけにとどまらず、前述したように、体の使い方を習得することが非常に重要です。その際、患者さんの体力や性格、目指すレベルに応じてプログラムを組み、患者さんと二人三脚で取り組んでいきます。

理事長の武田は、体の使い方の重要性にいち早く目をつけ、アメリカで取り入れられていたピラティスを導入。その活動に西良浩一先生(別記事を参照)も賛同され、高度な脊椎の手術とピラティスを用いたリハビリの組み合わせとなり、著名人を含む多くの患者さんから支持をいただいています。

画像: 《もも裏の筋肉(ハムストリング)がかたいと腰に負担がかかる》

《もも裏の筋肉(ハムストリング)がかたいと腰に負担がかかる》

加齢に伴って失われやすい機能として、足首と股関節、そして背骨の柔軟性があります。股関節が固い人のお辞儀や、物を取る動作は、上図のように、腰椎(背骨の腰の部分)を曲げる場合が多くなります。

デスクワークや車での移動など、座った姿勢が多いと、股関節の前側の筋肉が縮みます。また、イスに浅く腰かけ、イスの背にもたれて座っていると、もも裏の筋肉(ハムストリングス)が縮みます。その結果、股関節の動きが悪くなります。

すると、股関節のかわりに腰を使い過ぎたり、ひざが伸びにくくなったりして、痛みが出る場合があるのです。

年を取れば誰でも、筋肉や関節が老化します。しかし、痛みが出る人と出ない人がいるのはなぜでしょう。痛みと無縁の人は、体を正しく使い、負担を分散して対処しているのです。

痛みの出ない体になるためには、まずは正しい体の使い方を学習し、それを日常生活やさまざまな運動のなかに生かしていくことが大切です。そのための第一歩として、股関節の動きをよくする「太もも伸ばし」は、お勧めしたい体操の一つです。

画像: この記事は『壮快』2019年1月号に掲載されています。

この記事は『壮快』2019年1月号に掲載されています。

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