私たちの顔には血管が張り巡らされています。顔面の血流がよい状態に保たれていれば、皮膚細胞も元気で肌の生まれ変わりもスムーズです。顔の血流をよくする、あるいは保つことはアンチエイジングの大前提なのです。【解説】安野富美子(東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科教授)
解説者のプロフィール
安野富美子(やすの・ふみこ)
東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科教授。お茶の水女子大学大学院博士後期課程修了。鍼灸師、理学博士。専門は鍼灸学、レディース鍼灸。20代後半のときに初めて鍼灸治療を受け、長年続いた体調不良が消えたことがきっかけで鍼灸師を目指す。資格取得後、東京大学医学部老年病学教室、財務省印刷局東京病院東洋医学センターなどを経て、2009年より東京有明医療大学保健医療学部教授に就任。著書に『ヘルシー・エイジングをもたらす鍼灸のちから』(医学と看護社)など。
顔を若く保つには「血流」がカギ
50代なのに30代のように若々しい顔の人、逆に30代なのに年齢より老けて見られる人。この差に大きく関連しているのが、「血流」です。
私たちの顔には血管が張り巡らされています。顔面の血流がよい状態に保たれていれば、皮膚細胞も元気でターンオーバー(肌の生まれ変わり)もスムーズです。
皮膚の新陳代謝や皮脂の分泌によるバリア機能が高まり、肌の色つや、水分保持機能などが維持されます。顔の血流をよくする、あるいは保つことはアンチエイジングの大前提なのです。
顔の血流をよくすることで、次のような効果が期待できます。
(1)乾燥肌の改善
(2)むくみ、たるみの改善と、それによるリフトアップ、小顔効果
(3)シワ、シミの改善
(4)顔色の改善
逆に血流が悪くなると、さまざまなトラブルが起こります。
特に最近よく聞くトラブルが、目の下のクマです。目の下の皮膚は非常に薄く、多くの毛細血管が走っています。この毛細血管の血流が不良になると、毛細血管が青みを帯び、クマとなります。
寝不足の人に起こるイメージが強いですが、それだけではありません。慢性的に疲れている人、パソコンやスマホなどで目を酷使している人は、眼精疲労が起こりやすく、その結果、目の周辺の血流が悪くなりクマが出やすくなるのです。
また、加齢とともに気になるたるみは、顔だけが原因ではありません。首や肩がこっていると筋肉が収縮し、後頭部の筋や顔全体が下に引っ張られて、それがたるみとなります。
顔の血流が低下する原因には、生活のリズムの乱れ、紫外線などによる外部環境、ストレス、自律神経のバランスのくずれなどがあげられます。さらに加齢により血管が老化して動脈硬化が起こると、血流は悪くなる一方です。
ニキビや吹き出物、肌荒れにも効果的
そこで今回私がお勧めするのは、顔の血流をよくする「5つの美顔ツボ」です。
まず、顔にある攅竹(さんちく)、巨髎(こりょう)、顴髎(けんりょう)という3つのツボ、そして首の後ろにある風池(ふうち)、もう1つ、顔とは離れていますが、関連が深い合谷(ごうこく)という手のツボになります。
攅竹は左右の眉頭にあるツボです。巨髎は瞳からまっすぐに下ろした線と、鼻の下の高さで水平に引いた線が交差するところのほお骨の下にあるツボ。
顴髎は鼻の下の高さで水平に引いた線と、目尻から下に下ろした線が交差するところのほお骨の下にあるツボです。詳しい位置と押し方は、下項の写真をご参照ください。
東京有明医療大学の研究では、これらの顔のツボに鍼を打ち、血流の変化を見たところ、鍼を刺さなかった場合に比べて8%血流が増えたことがわかりました。ツボ押しでもこれに近い効果が得られます。
風池は首すじのやや外側、うなじのくぼみにあるツボです。特に目の疲れや頭痛、首や肩のこりに効果のあるツボで、筋肉の収縮をやわらげ、たるみの解消につながります。
合谷は「万能ツボ」とも言われ、全身の健康に役立ちますが、顔との関連も深いツボです。手の甲側の親指と人さし指の骨の分かれ目の、やや人さし指側にあります。合谷はニキビや吹き出物などに効果があるほか、歯の痛みや鼻づまりなどの改善にも役立ちます。
こりや痛みなど、ほかの治療で訪れた人も、鍼灸治療を受けた後、むくみが取れて顔がスッキリしたり、顔のくすみや肌荒れが改善して潤いが戻っていたりします。
最近では、最初から美容目的で顔に鍼を打つ人も多く、リフトアップや小顔効果をすぐに実感できることから人気が高まっています。
今回紹介したツボは、代表的なもので、自分で刺激しても効果を得やすいツボです。日々の生活に取り入れて、習慣化するときっとうれしい効果を実感できるはずです。
5つの「美顔ツボ」の位置と押し方
【 ツボ刺激のやり方の基本 】
◎爪を立てないようにして、痛気持ちいい程度の強さで押す
◎息を吐きながら3秒かけてゆっくりと力を強めていき、3秒そのまま維持してから、息を吸いながら3秒かけてゆっくりと力を弱めていく。これを5〜6回(約1分)1セット行う
※1日のうち、いつ行ってもよい
※2セット以上行うときは間隔をあける
※押すと痛みがある場合は行わない
美顔ツボ❶『攅竹』
【 位置 】
左右の眉頭にある
【 押し方 】
中指または親指の指先の腹をツボに当て、眉の下を押し上げるようにもむ
美顔ツボ❷『巨髎』
【 位置 】
瞳からまっすぐに下ろした線と、鼻の下の高さで水平に引いた線が交差するところのほお骨の下にある
【 押し方 】
親指の指先の腹をツボに当て、下から押し上げるように軽く押す
美顔ツボ❸『顴髎』
【 位置 】
鼻の下の高さで水平に引いた線と、目尻から下に下ろした線が交差するところのほお骨の下にある
【 押し方 】
親指の指先の腹をツボに当て、下から押し上げるように軽く押す
美顔ツボ❹『風池』
【 位置 】
首すじのやや外側、うなじのくぼみのところ。左右にそれぞれにある
【 押し方 】
両手の親指の指先の腹をそれぞれのツボに当て、押しながら、頭をゆっくり前後に動かす
美顔ツボ❺『合谷』
【 位置 】
手の甲側の、親指と人さし指の骨の分かれ目のやや人さし指側
【 押し方 】
親指の指先の腹を当て押しもみを繰り返す