2016年、世界的な医学誌『ランセット』に注目すべき研究が発表されました。以前から握力の弱い人は強い人に比べて死亡率が高いことがわかっていましたが、この研究では握力が落ちると心血管疾患になりやすいことが証明されました。【解説】原田和昌(東京都健康長寿医療センター副院長)

解説者のプロフィール

原田和昌(はらだ・かずまさ)
1985年、東京大学医学部卒業。93年、東京大学大学院医学研究科学位取得。ハーバード大学研究員、東京大学医学部附属病院助手などを経て、現在、東京都健康長寿医療センター副院長。専門は、循環器内科。

握力が落ちると心血管疾患になりやすい

ウォーキングなどによって下半身をよく使うことが、全身の血流を改善する。このことはよく知られています。

しかし近年、下半身だけでなく上半身を鍛えることも、血管に大変よい影響をもたらすことがわかってきました。特に注目すべきは、握力と血流との関係です。

2016年、世界的な医学誌『ランセット』に注目すべき研究が発表されました。欧米やアジアなどの世界17ヵ国で、35~70歳の約14万人の健康状態を4年間にわたって追跡調査した研究です。

以前から、握力の弱い人は強い人に比べて死亡率が高いことがわかっていましたが、この研究では、握力が落ちると心血管疾患になりやすいことが証明されました。

つまり、握力を維持することは、心血管疾患のリスクを避けるうえで、重要であるとはっきりしたのです。

握力は、日常生活のなかでも鍛えやすいといえますが、私はさらなる握力強化のために、患者さんに特に「グーパー体操」を勧めています。

手のひらを軽く握って、パッと開く。行うのは、これだけです。握って開くのを1回として、1秒に1回のペースで、100回ほどくり返します。これを1セットとし、できれば早朝を除いた日中に、1日1セット以上行うといいでしょう(やり方は下記参照)。

重要なのは、握る際の力の入れ方です。目安としては、最大握力の3分の1くらいの力で握ること。あまり強く握りしめてはいけません。

力いっぱいにギュッと握りしめ過ぎると、自律神経(体の諸器官を調整する中枢的神経のこと)のうち、交感神経が緊張して血管が収縮し、血流の悪化につながるからです。その結果、血圧の上昇を招く恐れもあるでしょう。

血流がアップ!「グーパー体操」のやり方

画像1: 握力が落ちると心血管疾患になりやすい

両手の手のひらを、3分の1ぐらいの力で軽くにぎる。

画像2: 握力が落ちると心血管疾患になりやすい

手のひらを開く。①〜②を1秒に1回のペースで、100回ほどくり返す。これを1日につき、1セット以上行う。

血管をやわらかくする物質が分泌される!

手を握り、パッと放したときに、血管の内皮細胞から、NO(一酸化窒素)という物質が分泌されます。

NOは、血管の中膜にある平滑筋という組織に作用し、その緊張を緩めて血管を広げる働きがあります。

NOの分泌量が少ないと血管は固くなり、NOが十分に分泌されていると、やわらかい状態に保つことができます。NOは、血流改善に欠かせない物質といえるでしょう。

一般的に握力は、女性より男性のほうが数値が高めです。しかし、女性が加齢によってそれほど握力が低下しないのに対して、男性は大きく低下していくことがわかっています。

一説では、女性のほうが日常的に手を使う家事を行うため、握力が低下しにくいのではないか、ともいわれています。

ですから、中高年男性には、日ごろからグーパー体操以外に、家事を積極的に手伝うこともお勧めしたいと思います。

ちなみに、狭心症、高血圧のかたは、発作や血圧上昇を引き起こす恐れがあるので、グーパー体操は控えたほうがよいでしょう

実は私自身も、毎日1~2セット、グーパー体操を行っています。

仕事柄、どうしても体を動かす機会が少なく運動不足になりがちです。ですから、朝に1セット、仕事中に合間を見つけて1セット行うように心がけているのです。

そのおかげか、健康な血管を維持できていると思います。皆さんも、私のようにぜひ毎日の習慣にしてください。グーパー体操で、いつまでも若々しい血管を保ちましょう。

画像: この記事は『壮快』2019年2月号に掲載されています。

この記事は『壮快』2019年2月号に掲載されています。

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