ふくらはぎへの刺激によって全身の血流がよくなると高血圧の改善が期待できます。ほかにも肩や首のコリ、頭痛、足腰の冷えやむくみの改善にも役立つでしょう。全身の血流がよくなることによって自律神経が整い、多くの不定愁訴が改善されるでしょう。【解説】宮本啓稔(新宿西口治療院院長)
解説者のプロフィール
宮本啓稔(みやもと・けいじ)
新宿西口治療院院長。鍼灸・マッサージ師。整体師。幼少の頃から武道や整体に親しむ。こりの真の原因である「筋肉・骨膜の癒着」に対するアプローチを考案。あらゆる病や不定愁訴に対応できる独自の理論と手法を日夜研究し治療に生かしている。
▼新宿西口治療院(公式サイト)
▼@sn_chiryo(Twitter)
血行不良対策には「ふくらはぎ」への刺激が効果的
筋肉の奥深くまでもみほぐす必要がある
ふくらはぎは、「第二の心臓」と呼ばれ、非常に重要な働きをしています。
人間が直立二足歩行をするようになった結果、足先まで送り届けられた血液は、重力に逆らって心臓まで戻る必要が生じました。このため、足には血液が滞りがちになります。ふくらはぎがポンプのような働きをして、たまった血液を心臓へ戻すことを助けるのです。
冷えや運動不足によって、ふくらはぎの筋肉がこわばるとポンプ機能が低下します。心臓へ血液を戻す働きが弱まって全身の血液循環が悪くなり、さまざまな支障を来すのです。
そこで、ふくらはぎを上手に刺激してこわばりを解消することが必要になります。
ふくらはぎへの刺激によって、全身の血流がよくなると、高血圧の改善が期待できます。ほかにも、肩や首のコリ、頭痛なども解消します。足腰の冷えやむくみの改善にも役立つでしょう。
さらに、全身の血流がよくなることによって、自律神経(意志とは無関係に働き、血管や内臓をコントロールしている神経)の働きが整います。自律神経の乱れから生じる多くの不定愁訴が改善されるでしょう。
このように血流を改善させるには、ふくらはぎへの刺激が有効ですが、実際にきちんと効果的に行うことは、思ったよりも難しいものです。
ふくらはぎがこわばってかたくなり、血流が悪くなっている場合、筋肉の奥深くまで、もみほぐす必要があります。筋肉の深部にあるコリをほぐさないかぎり、血流を大きく改善することはできないからです。
指の力でもみほぐすのは難しい
ところが、力の弱い女性や高齢のかたの場合、刺激をふくらはぎの深部にまで届かせることが難しいのです。ふくらはぎに両手を添えて、指の力でもみほぐしても、なかなかうまくいきません。
どれだけ力を入れて押しても、ふくらはぎのこわばりは簡単に緩まないはずです。手でふくらはぎをマッサージするのでは、血流を改善させるのは難しいかもしれません。
太い血管を効果的に刺激する運動がおすすめ
血行を促す二つのツボも刺激できる!
そこで、力を入れなくてもふくらはぎ深部にある、太い血管を効果的に刺激する方法として私が考案したのが「ひざ乗り押圧(おうあつ)」です。
そのやり方は、次のようなものです。最初のうちは、トータルで5分くらい左右のふくらはぎを刺激するといいでしょう。慣れてきたら、少しずつ時間を延ばしてください。理想は、片足10分ずつ、合計20分です。これを朝晩2回行ってください。
《ひざ乗り押圧のやり方》
❶四つんばいになります。
❷左足のひざを右足のふくらはぎに乗せます。
❸乗せている左足の重みだけを利用して、ひざのお皿をふくらはぎに押しつけ、その位置で上下に左ひざを動かします。このとき、無理に力を入れる必要はありません。これによって、「痛気持ちいい」刺激が与えられるはずです。
❹ひざを乗せる位置をかかとのほうへずらし、 (3)と同じようにふくらはぎを3ヵ所ほど刺激しましょう。
❺同様のやり方で、左足のふくらはぎも刺激します。
血行を促すツボも刺激できる
実際に試してみるとわかりますが、足の重さを使った刺激は、手でふくらはぎを押しもみするのと違います。はるかに強い、有効な刺激が与えられます。
東洋医学の観点からすると、ふくらはぎには、「承筋」や「承山」といったツボがあります。
承筋は、ふくらはぎのいちばん高い位置にあります。承山は、アキレス腱けんからふくらはぎに向かってさすり上げていったときに、指が止まるふくらはぎの最下部に位置します。
承筋と承山は、ともに足がつったときの特効ツボとしてもよく知られていますが、血行を促すツボでもあるのです。ですから、ふくらはぎを押すことによるツボ刺激の効果も見逃せません。
今回のひざ乗り押圧は、手で行うふくらはぎマッサージよりも、はるかに効率よく刺激を加えられるセルフケアです。ぜひお試しになって、その効能を実感してください。