足もみ療法の歴史はとても古く紀元前の古代エジプトに始まります。足の運動をつかさどる脳の領域は脳の中心部に近い部分にあり、足をもむことでその刺激が脳に伝わり、その領域を中心に脳の血流や機能が活性化・正常化して心身の不調の改善につながると考えられます。【解説】篠浦伸禎(都立駒込病院脳神経外科部長)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

篠浦伸禎(しのうら・のぶさだ)
都立駒込病院脳神経外科部長。1958年生まれ。東京大学医学部卒業後、富士脳障害研究所、都立荏原病院を経て、2009年より現職。患者の意識を覚醒した状態で脳の手術を行う「覚醒下手術」ではトップクラスの実績を誇る日本を代表する脳外科医。また、病気を少しでも改善し、医療レベルを上げるため「篠浦塾」を主催し、統合医療に関するセミナーを行い、講師や塾生と情報交換する場をつくっている。『発達障害を改善するメカニズムがわかった!』(共著、コスモトゥーワン)ほか、著書多数。

医師の私も足の裏もみを実践

私は脳神経外科医で、脳腫瘍の覚醒下手術(患者が意識のある状態で行う手術)を数多く手がけてきました。

医療の現場で日々、患者さんたちの脳に触れていると、脳の使い方がその人の健康や生き方に大きな影響を及ぼしていることに気づきます。

また、これまで医学的には実証が難しかった伝承療法や健康法の中にも、脳科学の観点からみると「効く理由」の説明がつくものがたくさんあります。

そこで私は診療のかたわら、食事や運動、生活習慣、ものの考え方なども含めて、「脳と体によい健康法」を幅広く研究し、実際の治療にも取り入れています。

足の裏もみ」も、私が患者さんたちに推奨している健康法の一つです。

足もみ療法の歴史はとても古く、紀元前の古代エジプトに始まります。その後、ヨーロッパやアジアなど世界じゅうに広まり、現在でも広く行われています。

「足の裏もみ」を実践して、頭部の外傷や脳梗塞などの影響で体がマヒしていた人が改善したり、ガンなどの病巣が縮小したりなど、難病から奇跡的な回復を遂げた例は、枚挙にいとまがありません。

私自身も自宅などで、健康維持のために足をもんだり、足をもむのと同等の効果のある官足法(※)のマット踏みを行ったりしています。

なぜ、足をもむと体が元気になり、病気が治るのでしょうか。

その理由の一つとして、足をもむことでその刺激が脳に伝わり、足の運動をつかさどる領域を中心に、脳の血流や機能が活性化・正常化して、心身の不調の改善につながると考えられます。

足の運動をつかさどる脳の領域は、脳の中心部に近い部分にあります。

《脳の足の領域の位置》

画像: 足の運動をつかさどる脳の領域は、脳の中心部に近いところにあり、足の裏もみで脳の血流がよくなると、脳の全体の活動にプラスに働く

足の運動をつかさどる脳の領域は、脳の中心部に近いところにあり、足の裏もみで脳の血流がよくなると、脳の全体の活動にプラスに働く

人間の脳は三層構造になっており、いちばん奥に位置するのが、体温や呼吸、血圧の調整など生命維持に関わる「生命脳」です。

二層目にあるのが大脳辺縁系で、食欲や性欲、快感、恐れなど本能的な情動をつかさどり、「動物脳」と呼ばれます。

三層目が大脳新皮質で、理性による高度な判断を行い、「人間脳」と呼ばれています。足の領域は動物脳と人間脳の間のところにあり、非常にストレスの影響を受けやすいのです。

※官足法:台湾の官有謀先生が考案した、足をもんで、血流の循環をよくする足もみ健康法

左半身マヒの人が動けるようになった

例えば、うつ病や不安神経症、不眠症、PTSD(心的外傷後ストレス障害)など、強い精神的ストレスが関係する心の病気の人は、脳の足の領域が異常に低下していることがわかっています。

脳の血流の画像で判明!
《ストレスは「足」に出る!》

画像: 64歳・男性の脳の血流の画像。男性は強いストレスがあり、歩行中足の力が抜け、倒れる。脳のCTには異常がないが、血流の画像を見ると、一次運動野の足の領域が異常に低下している

64歳・男性の脳の血流の画像。男性は強いストレスがあり、歩行中足の力が抜け、倒れる。脳のCTには異常がないが、血流の画像を見ると、一次運動野の足の領域が異常に低下している

上の画像は、私が経験した症例です。この患者さんはストレス過多で足が硬直し、まともに立っていることができずに倒れてしまうほどでした。

この患者の脳を調べると、CTでは何の異常もないのですが、血流を見ると、脳の足の領域のところだけ、異常に低下していたのです。

これらは一見、矛盾するように思えますが、ストレスに対する人体の反応を考えると納得がいきます。

人はストレスを受けると、体の状態を調整する自律神経や免疫系・内分泌系が反応して、「闘争・逃走反応」と呼ばれる生理的な変化が起きます。

敵と戦うか、逃げるかするために、脈拍や血圧が上昇したり、消化器系の機能や免疫力が低下したりするわけです。

敵と戦うにしても逃げるにしても足が重要ですから、過剰なストレスを受けると、脳の足の領域も異常に活性化するのです。

「活性化」というとイメージはいいですが、こうした異常な活性化は体に悪影響を及ぼします。

この状態が続くことで、おそらく疲労のためやがて血流が落ち、足が動かなくなるのです。まさに「ストレスは足に出る」というわけです。

足の裏をもむと、脳の足の領域が刺激され、血流が安定し、脳機能も正常化します。

脳の足の領域は、体を支える体幹の働きはもちろん、隣接する動物脳や人間脳にも影響します。そのため、全身の働きを調整する自律神経や免疫系も活性化して、生命力を高めてくれるのです。

看護師であり、シスターでもある小田美津江さんというかたがいらっしゃいます。

小田シスターは、1989年から2010年までの21年間、エチオピアにわたり、長年の内戦や飢饉の影響で物資や医療設備にも事欠く状況の下、現地の患者さんに足の裏もみを行い、多くの病気から救いました。

栄養失調で目がパンパンに腫れていた子どもが、足の裏もみをした翌日には片目が開くようになったり、頭部の外傷で左半身がマヒしていた人が足のマッサージでマヒが取れたり、目覚しい成果を上げたそうです。

足の裏もみは、ストレスに強い脳を作り、病気や不調から心身をケアする意味で、非常に有効な健康法だと思います。毎日の習慣として足の裏もみを取り入れてください。

画像: この記事は『ゆほびか』2019年4月号に掲載されています。

この記事は『ゆほびか』2019年4月号に掲載されています。

This article is a sponsored article by
''.