睡眠不足が続く毎日、ぐっすり眠れず翌朝もスッキリしない――。そんな悩みを抱えて、数え切れないほどの枕を試してきた筆者にとって、『ヒツジのいらない枕 ー調律ー』との出会いは、まさに枕ジプシーの旅の終着点となったようです。3週間かけて試した寝心地をレポート!
『ヒツジのいらない枕』ブランドとは?

『ヒツジのいらない枕』は、太陽(東京都目黒区)が2020年8月に発売を開始した睡眠ブランド。創業者の川嶋氏自身の寝付きの悪さや、ぐっすり眠れないことで翌日のパフォーマンスが落ちるという実体験から誕生したそう。製造パートナーは1965年創業の枕専門メーカー、ナオ・シング(旧・直寝具)。60年近くにわたって大手寝具メーカーや一流ホテルに枕を納めてきた老舗の技術力と、新しい発想が融合した製品です。
初代モデルはクラウドファンディングサイトMakuakeで枕製品カテゴリーNo.1となる応援購入金額を達成し、累計100万個以上を販売する人気ブランドへと成長しました。
14段階調節を実現する4層構造テクノロジー搭載の『ヒツジのいらない枕 ー調律ー』

『ヒツジのいらない枕 ー調律ー』(550×350×100/115mm・約2.3kg・税込19,800円・2024年10月1日発売)の最大の特徴は、前モデルの8段階から大幅にアップグレードされた14段階の高さ調節機能です。この細やかな調整を可能にしているのが、独自の4層構造テクノロジーです。
まず土台となるのが、TPE(熱可塑性エラストマー)素材を使った本体部分。TPEとはプラスチックの加工性とゴムの弾力を併せ持つ素材ですが、この製品のTPEは実にやわらかく、つきたてのお餅のような触り心地が特徴です。表面はウェーブ状になっており、頭部に触れる面積を最適化しています。

内部構造にも工夫があります。一般的なTPE製品が六角形のハニカム構造を採用しているのに対し、本製品は三角格子構造を採用。しかも上層は小さめの三角で体圧分散を高め、下層は大きめの三角でしっかり支えるという二層構造になっているのです。この複合的な弾力が、柔らかいのに反発力もあるという不思議な感覚を生み出し、しっかりした反発力で頭の重量を支えながらも柔らかく感じるマジカルな寝心地を実現しています。

大きな三角と小さな三角の2層構造。
さらに活性炭を配合することで、TPE特有のゴム臭さを抑え、汗や年齢によるニオイを軽減する効果も備えているのだとか。

ぐにゃぐにゃ。
高さ調節を担うのが、3種類の厚さの「高密度クリスタルファイバー」。ガラス繊維のように丈夫なのにクッション性があり、1cm、2cm、3cmの3種類の厚みのシートを組み合わせることで、調節材なしの4cm~最大11.5cmまで、計14通りの高さ調整が可能です。枕の上下をひっくり返すことでも微調整ができ、その日の気分や体調に合わせて理想の高さを見つけられます。

3種類の厚さの「高密度クリスタルファイバー」で高さを微調整できる。
【実体験レビュー】『ヒツジのいらない枕 ー調律ー』3週間連用でわかったこと

Zzzz…
筆者はこれまで、硬い枕から柔らかい枕まで、低反発から高反発まで、素材もわた、そば殻、パイプと、形状も中央がくぼんだタイプからバラバラにして部位ごとの高さを調整できるものまで、数え切れないほどの枕を試してきました。その中で気づいたのは、枕はけっこう簡単にへたるということ。ちょうどいい高さがいつの間にか低くなって、首が痛くなったりするのです。

カバーで包むと何の変哲もない枕。
だからこそ『ー調律ー』を選んだ理由は、14段階の高さ調整機能でした。TPE本体は10年持つと言われる耐久性があり、もし経年でへたってきても、クリスタルファイバーで調整できるという安心感がありました。
実際に高さを変えながら眠ること3週間。いろいろ試した結果、最終的に1cm厚のクリスタルファイバーを取り去った2枚の組み合わせに落ち着きました。頭蓋骨をやさしく包み込みながら、適度に反発するので、まるで水に浮いているような浮遊感があって非常に心地よく、すやすや眠れるようになりました。起きたときの首の痛みもどこへやら、このチョイスが筆者には最適だったようです。

押し込んでみると、最初はウニョンと沈み、その後は沈み込みを抑制してくれます。この瞬間が無重力な浮遊感。これが気持ちいいんです。
メンテナンス性と清潔さへのこだわり

柔らかで肌触りの良いテンセル素材のカバー。
睡眠の質を追求する上で、清潔性は欠かせません。ホコリやダニの温床にもなり得る枕だけに、洗える、干せることは必須条件です。
『ヒツジのいらない枕 ー調律ー』は、TPE本体もクリスタルファイバーも完全に丸洗い可能です。汚れたらぬるま湯シャワーで豪快に洗うことができて、布と違って乾燥が早いのも超便利です。通気性も抜群で、三角格子構造による空気の通り道が蒸れを防ぎ、じめっと寝苦しい夏もサラっと快適に過ごせます。
付属の肌触りの良いテンセル製カバーを装着した状態で届くので、到着したその日からすぐに使えます。筆者はこのカバーの上からさらに枕パッドをかけて寝ています。好みの枕カバーに替えたい場合は、55×35cm以上のサイズを選ぶと良いでしょう。
思わぬ落とし穴が……!?

重ッ!
もちろんすべて良いところばかりではありません。一番驚いたのはその重さです。普通の枕のつもりで指先や片手で持とうとすると、どこかしらの関節がグキッとなりそうな重量感があります。約2.3kgですから、MacBook Proなみのずっしり感で、油断は禁物です。ただし一度ベッドに置くと、そう簡単にズレないというメリットにもなります。
価格については、19,800円という初期投資は高く感じるかもしれません。しかしへたらず長く使えそうなこと、1年間の品質保証が付いていること(通常使用で規定以上のへたりが生じた場合は新品と交換)を考えると、日割りにすればそれほど高くないのではないでしょうか。
ちなみに『ヒツジのいらない枕』シリーズには、ベーシックモデルの『ー至極ー』(税込15,800円)、柔らかさを追求した『ー極柔ー』(税込22,000円)もあります。『ー調律ー』は、その中間に位置し、高さ調節機能に特化したモデルです。
まとめ:そうは簡単にへたらない耐久素材と水に浮いているような心地よさ

3週間連用しても、「水に浮いているような」心地よさが消えることは一切ありませんでした。素材・構造的にへたりにくいのは頼りがいあり。枕とは思えない重量感という欠点はあるものの、それを補って余りある寝心地と、自分だけの最適な高さを見つけられる自由度が、長年の枕ジプシーの旅を終わらせてくれたと感じています。
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