最近では、5~6月に運動会を行う小学校がふえている。「わが子に一等賞をとらせたい!」と願う親御さんも多いことだろう。そこで今回は、世界選手権やオリンピック代表の選手を輩出している福島大学陸上競技部の川本和久監督に、速く走る独自の理論「ポンピュン走法」について解説していただいた。

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

川本和久(かわもと・かずひさ)
1957年、佐賀県生まれ。筑波大学卒業、同大学院修了(コーチ学専攻)。小学校講師などをへて、84年に福島大学教育学部に助手として勤務し、陸上競技部監督に就任。91年、同大学同部助教授。同年、文部省(当時)の在外研究員として1年間、カナダと米国に留学。カール・ルイスのコーチ、トム・テレツに学ぶ。2003年、同大学同学部教授。09年、福島県立医科大学大学院博士課程修了。
走り幅跳びの日本記録保持者である井村(旧姓・池田)久美子選手、400メートルの日本記録保持者である千葉(旧姓・丹野)麻美選手など、地方の国立大学から日本記録保持者とオリンピック・世界陸上出場選手を多数育て上げ、陸上界のカリスマと称されている。福島大学トラッククラブ・東邦銀行陸上競技部監督兼任。
主な著書に『足が速くなる「ポンピュン走法」DVDブック』などがある。

「ポンピュン走法」とは?

「ポンピュン走法」とは、「ポン」と「ピュン」を組み合わせて速く走る走法です。

「ポン」とは、緩衝しない(地面から力を逃さない)姿勢から、太ももの表側の筋肉だけを使って足を上げ、上から下に力を加えて足をポンと下ろす動作のことです。

一方、「ピュン」とは、前に振り出す足をピュンとスイングして進むことを指します。
これだけだとイメージがしづらいかと思いますので、速く走るための方法をこれから解説していきましょう。

画像1: 世界で活躍する陸上選手を育てた“陸上界のカリスマ”が教える「ポンピュン走法」とは
画像2: 世界で活躍する陸上選手を育てた“陸上界のカリスマ”が教える「ポンピュン走法」とは

速く走るには歩幅(ストライド)を広くする

そもそも、走る速さは、足の回転数(ピッチ)と歩幅(ストライド)で決まります。

ピッチは、子供も大人も、それから男女にかかわらず、さほど変わりません。
一方、ストライドはトレーニング次第で広くすることができます。

ストライドは、走る際に足を振り下ろす動作である「ドライブ動作」と、足を後ろから前に振り出す「スイング動作」によって広くなります。

まず、ドライブ動作を説明しましょう。

走るときには「地面の大きな力を加える」ことが重要です。
地面の大きな力を加えれば、大きな反発力を生むことができ、それがストライドを広くする原動力になります。

走るときには、ドライブ動作で大きな力を体の真下に加えると、いちばん理想的な反発力が得られるとされています。

しかし、人の足は、高いところから飛び降りるとき、無意識に関節を曲げて体への衝撃をやわらげてしまいます。
走るときも同様で、足を踏み込むときに、体の関節を曲げてしまうことで、反発力が少なくなるため、ストライドは広くなりません。

足と地面との接地時間を短くして弾もうとすると、ふくらはぎの筋肉が、アキレス腱を引っぱります(腱は伸びない)。
足の着地のときにふくらはぎの筋肉と足が落ちるエネルギーがアキレス腱を引っぱり合い、アキレス腱の張力(引っぱる力のこと)は増します。
そのぶん高く弾むことができるため、ストライドも広くなります。

つまり、ストライドを広くするポイントのひとつには、足が地面に着くときに、足首やひざ・腰の関節が曲がらないように意識することなのです。
足が地面に着くときに少し力を入れ、体を1本の棒としてイメージするのがコツです。

次に、「スライド動作」です。

スライド動作は、ドライブ動作で地面からもらった反発力を、前に進むエネルギーに変えるための動作です。
ひざから下は意識せず、太ももを体の前で動かして前へと進んでいくイメージで動作を行います。

前への推進力を効率よく高めるためには、タイミングよく体を動かすのも重要です。
ドライブ動作をした瞬間、その足のひざを、もう片方のひざが「ピュン」と追い越すのが、いちばん
効率のよいタイミングです。

また、腕のタイミングも、前へ速く進む力には大切です。
垂直跳びでは上へ高く跳ぶために、両手を一気に上で振り上げます。それといっしょで、足と腕の両方をタイミングよく動かすことで、より速く前へ進むことができるのです。

白樺のポーズで「ポン」を身につける

走るときに、足や腕を動かす動作は、体の構造上ねじれます。
せっかく地面からの強い反発力があっても、体がねじれていると、力が分散して効率よく速く走れません。
そのため、緩衝しない(地面から力を逃さない)姿勢である「白樺のポーズ」が有効です。

真っすぐ立つ白樺の木をイメージした姿勢で、次の4つで立ちます。

①直立姿勢をとる

②かかとはつけたまま、つま先だけを外に開き、お尻の筋肉に力を入れて背すじを伸ばす

③肩を前に出す意識で、体の前で木を抱くようにする

④腕とつま先を元に戻し、頭の上から糸でつられるような意識でスッと背すじを伸ばす

この白樺のポーズから、太ももの表側筋肉だけを使って足を上げ、上から下に力を加えて足を下す動作が「ポン」です。

頭が「前に移動する感覚」がつかめたらOKです。

ポンは、止まって行うのではなく、足のサイズ2つ分くらい先に「空き缶」があるのを想像します。その空き缶を真上から踏みつぶすつもりで、「ポン」と片足を振り下ろして、前に移動するイメージです。

ランニングなどでイメージされる2拍子とは違い、ポンの動作を行うときには、「イチ」のワンモーションで動作を行います。
空き缶を踏みつぶした瞬間に、その足のひざを、反対側の足のひざが追い越すタイミングを身につけましょう。

画像: 白樺のポーズで「ポン」を身につける

スイングで遠くへ

走るためには、足を前にスイングする必要があります。

大きくスイングができれば、ストライドも広くなります。
しかし、ただ足を大きくスイングすればいいわけではありません。

足を前に大きくスイングするためには、体に合った適切な足の運びが大切です。
それを行うためのトレーニングとして、スイングの方向を確かめるためのドリル「ひざペッチン」という方法があります。

ペアで行うもので、選手のひざの高さに合わせて、ひざより前に手を差し出します。
選手は差し出された手を「ペッチン」と当てにいきます。

慣れてきたら、手の位置を少しずつ遠くに離していきます。
支持足にしっかり力を加え、スイングのスピードを上げて、手にひざを当てていきましょう。

画像1: スイングで遠くへ

また、実際の走りに近い動きで、ひざをどんどん前に出していくドリルを「シザース」といいます。
支持足を動かさずに真下に向かって力を加えながら、もう一方の足を前にピュンとスイングして進んでいきます。

スイングする足は、股関節を広くことを意識しつつ、「タターン、タターン」とリズムよくひざを前に出します。
このとき、支持足は後ろに蹴り上げないようにしましょう。

画像2: スイングで遠くへ

正しいスタートは右足前?左足前?

スタートで大切なのは、体や足を素早く動かすことではありません。
地面に大きな力を加えることができる姿勢をつくることです。

両足をそろえて立ち、体を前に倒していったときに前に出た足を、スタートでは後ろ足にします。

両足のつま先、腰、肩は進行方向に向け、腕は引いた足と同じ側の腕を前に出します。
次に、垂直飛びをするつもりで、ひざを直角に曲げて沈み込みます。
その姿勢のまま足を引き、上半身を股関節で折ります。

実際に走るときには、首を背骨のラインと垂直になるように固定して、足元から数十センチ先を見るようにしましょう。

スタートでは、少しだけ重心をずらし、その重心に向かって体を動かし始めます。
重心のずらし方は「スタンディング」と「クラウチング」で異なります。

スタンディングでスタートの姿勢をとったときは、両足のひざを少しだけ下に落とします。
ひざを落とすと重心がずれるので、ポンと飛び出せます。

一方のクラウチングスタートでは、スタートの姿勢から後ろ足のかかとを少しだけ後方に押します。
すると、地面からの反発で重心が前にずれるので、体を動かすことができます。

すべてを完璧にやりこなすことが難しいかもしれませんが、ひとつできれば、そのぶん速く走れるようになります。
いま走るのが苦手でも、必ず走ることが楽しくなるはずです。
ぜひ実践してみてください。

最新刊『マンガ 足が速くなる! ポンピュン走法』

画像: 最新刊『マンガ 足が速くなる! ポンピュン走法』

※この原稿は書籍『マンガ 足が速くなる! ポンピュン走法』から一部を抜粋・加筆して掲載しています。

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