季節の変化が心臓の負担に?体を季節に対応させる「セルフ整体」のやり方

美容・ヘルスケア

我慢強い人、忍耐がすぎる人は常に肛門が締まっている状態なので、その結果痔になりやすく、心臓にも不調が出やすい傾向があります。また、春は汗をかきやすい体へと変化していく時期です。心臓の働きも活発になるので、心臓が弱い人は不調が出やすくなります。【解説】佐藤裕博(整体ヨガ道場悠遊塾主宰)

解説者のプロフィール

佐藤裕博(さとう・ゆうはく)
昭和48年生まれ。整体ヨガ道場「悠遊塾」を主宰。10代の頃より東洋医学、禅、修験道などに興味を持ち、中心感覚研究会の故岡島瑞徳氏に師事。自然治癒力を引き出し、体を敏感にしていく整体を行っている。

心臓の悪い人は痔主に多い!?

整体では、「病気や症状は、すべてその人にとって、必要があるから起こっている」と考えます。

一見、性格上の欠点と思われるようなことも同じです。たとえば、平気でうそをつく人がいますが、これはただ単に、性格が悪いというわけではありません。実は、心臓を守ろうとして、無意識にそうしていることもあるのです。

うそをよくつく人は、追い込まれることが極端に苦手なのです。追い込まれると苦しくなり、心臓に負担がかかるので、心臓を守るため、その場をどうにか逃れようとうそをつきます(※心臓の悪い人にうそをつく人が多いというわけではありません)。

そんなとき、人は無意識に肛門をキュッと締めるので、痔になりやすい、という傾向もあります。

我慢しすぎる人も同じです。
通常、じっと耐えているときは、肛門が締まります。我慢強い人、忍耐がすぎる人は常に肛門が締まっている状態なので、その結果、痔になりやすく、心臓にも不調が出やすい傾向があります。

肛門と心臓はどちらもキュッと締まる動きをする部位で、密接なかかわりがある、と整体では考えています。実際に、心臓の不調で来院される患者さんに、痔があるケースは、非常に多いものです。

そのほか、心臓の不調が治る過程で、痔になることもあったり、心臓をかばうために痔になっているケースもよく見受けられます。

暖かくなると心臓も活発になる

また、私たちの体は、季節に適応して変化すると整体では考えています。

たとえば、春は、それまで寒さで縮こまっていた体がゆるみ、寒さから身を守るために溜め込んでいた脂肪を排泄し、汗をかきやすい体へと変化していく時期です。

同時に、心臓の働きも活発になるので、心臓が弱い人は、体の変化についていくことができず不調が出やすくなります。

このとき、どのように体がゆるむかというと、最初に左の後頭部がゆるみ、次に左の肩甲骨、最後に左の骨盤の順で、締まっていた骨が開いていきます。夏に向けて、活発に動かせる体になるための準備なのです。

しかし、体に不調があると、この三つの骨がスムーズに開いていかず、体のバランスがくずれてしまいます。

すると、左足の小指に重心がかかり、痔になりやすい体になるのです。歩き方も、左の外側に重心がかかったような不自然な形になるため、見る人が見れば、すぐに痔だとわかります。実際、3~4月に私の整体院にいらっしゃる人は、痔のかたが増えます。

カイロではなく蒸しタオルを使う

そこで今回ご紹介するのが、春先の体の変化をスムーズに移行させ、心臓の不調を快方に向かわせる「セルフ整体」です。

写真を見ながら、ぜひ行ってみてください。それでは、各セルフ整体のやり方をご説明します。

その(1)「左の肋骨呼吸」

狭心症や不整脈、動悸がある人には、必ずお勧めするセルフ整体です。胸部を囲う骨格である胸郭の動きをよくして、左の肩甲骨や骨盤をゆるめる効果があります。

みぞおちから指幅2本分下がった位置から水平に左に移動して、肋骨に当たる部分に指を当てます。

圧をかければ誰でも痛みを感じる部分ではありますが、心臓が弱い人はこの部分に触れただけで、痛みを感じることがあります。続けるうちにその痛みもなくなっていきます。

左の鼠径部(足のつけ根)に左手を当て、そこから息を吸い、左の肋骨に当てた指から息を吐くイメージで呼吸をします。静かに気の済むまで行ってよいですが、短くても3分ほど行うとよいでしょう。

その(2)「肛門の温め」

ポイントは足の形と、蒸しタオルを使うことの2点です。足を大きく開くことで、骨盤の開閉と関係がある、腰椎(背骨の腰の骨)4番という骨に刺激が入り、開きにくくなっていた骨盤が開きやすくなります。

蒸しタオルは、水で濡らしたタオルを、レンジで温めたものを使います。温めた蒸しタオルはたいへん熱いので、肌に触れても熱くない温度をご自身で確認してください。

うつぶせになり、足をできるだけ大きく開きます。足を開くときは、目一杯、開いてください。痔をお持ちのかたは痛みが伴うかもしれません。その場合は、「できるだけ大きく」でかまいません。
つま先を上げ、かかとを突き出し、肛門の周囲を温めるように蒸しタオルを当てます。服の上から行う場合は、ビニール袋に包みます。
肛門に意識を集中し、徐々に冷めてくるタオルをじっくり感じます。
※蒸しタオルが冷めたら再び温め、もう1度行う。

ときどき「カイロでもよいか」と質問されますが、蒸しタオルでなくてはなりません。時間とともに徐々に冷めていく蒸しタオルがよいのです。冷めていく過程で、体の内側から熱が引き出されます。

温度の変化を感じることで、自然に肛門を意識することもできます。肛門に意識を集めることも、このセルフケアの目的です。ですから、テレビなどを見ながら行うのはもってのほかです。

以上の二つのセルフ整体に、日常で手軽にできるケアも併用するとより効果的です。

その(3)「左手で首たたき」

左目は心臓の収縮と関係があり、心臓に負担がかかると、左目が開きづらくなります。ですから、左目が開けにくい人は、左手で頸椎(背骨の首の骨)7番をたたいてください。心臓病の予防にもなります。

頸椎7番(首を前に倒したときに、ボコッと飛び出す骨)の位置を確認する。

左手で、頸椎7番を5~6回、勢いよくたたく。

その(4)「小鼻プッシュ」

整体では、鼻は生殖器と深いかかわりがあると考えています。そして、不整脈は性エネルギーの滞りから起こるととらえています。

セルフ整体では、左の小鼻を押して圧痛を加えることで、鼻の通りをよくして、鼻呼吸を誘導し、性エネルギーを整えていきます。小鼻を押さえながら、ゆっくり深く呼吸をくり返しましょう。

小鼻のふくらみの横を押して圧痛点のある場所を探す。

そこに左手の中指を当て、じんわりと押す。30秒ほど押して、ゆっくり手を離す。

それでは最後に、症例をご紹介しましょう。

体に起こっている現状を意識することも大事

「心臓の手術後も調子が悪い」と、来院されたAさん(60代・女性)は、夫婦仲が悪く、子育てにも失敗したと、常にご自分を責めていらっしゃいました。

しかし、整体を受けながら自宅でもセルフ整体を行っているうちに、どんどん体調がよくなり、同時に、我慢しすぎていた自分に気づき、離婚。子育てについても、「自分のできることはやった」と受け入れることができるようになりました。

すると、長らく続いていた心臓の不調は、一切、起こらなくなったのです。

Aさんのように環境を変えるのは難しいかもしれません。しかし、体に起こっている症状は、必要があって起こっていることです。それを意識するだけで、体はよいほうに変わっていくと、私は考えています。

この記事は『安心』2019年4月号に掲載されています。

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