「納豆が体にいい」というのは、皆さんご存じでしょう。納豆に酢をかけるだけで、納豆の健康効果がより高まり、血圧を下げる作用がアップするのです。酢納豆は、「降圧食のチャンピオン」といっても過言ではありません。【解説】渡辺尚彦(愛知医科大学客員教授・日本歯科大学臨床教授・聖光ヶ丘病院内科医師)
解説者のプロフィール
渡辺尚彦(わたなべ・よしひこ)
愛知医科大学客員教授・日本歯科大学臨床教授・聖光ヶ丘病院内科医師。高血圧を中心とした循環器病が専門。1987年8月から連続携帯型血圧計を装着開始。以来、24時間365日、血圧を測定し続けている。『血圧を下げる最強の方法』(アスコム)など著書多数。
自信を持ってお勧めする「降圧食」
私はもう30年以上、血圧計を24時間腕に巻きつけ、自分の血圧を測り続けています。循環器科の医師として、高血圧の患者さんを治療するうえで、「血圧の真実」を探究するためです。
そもそも、なぜ高血圧は体に悪いのでしょうか。高血圧とは、血液が血管を内側から圧迫している状態です。放置すると、血管はダメージを受け続け、脳卒中や心筋梗塞という恐ろしい病気を誘発します。
ですから私は、患者さんの命を守るため、血圧に関する情報収集にも余念がありません。世界中の医学論文から、昔ながらの民間療法や流行している降圧法までチェックし、実際に行って効果を確認します。
そのなかから、「これはほんとうに効果がある!」と確信した物だけを、患者さんに勧めているのです。食生活をはじめ、無理なくできる運動や入浴法、睡眠の取り方まで、患者さんへの指導は多岐にわたります。
今回は、私が効果を確認し、自信を持ってお勧めする「降圧食」をご紹介します。最近、テレビや雑誌で注目されている「酢納豆」です。
「納豆が体にいい」というのは、皆さんご存じでしょう。納豆に酢をかけるだけで、納豆の健康効果がより高まり、血圧を下げる作用がアップするのです。酢納豆は、「降圧食のチャンピオン」といっても過言ではありません。
血圧を下げる成分を摂取できる組み合わせ
まず、納豆の有効成分から説明しましょう。
納豆には、ナトリウムを体外に排出するカリウムが含まれています。ナトリウムは塩の主成分で、カリウムは過剰な塩分を出してくれるのです。
納豆には、食物繊維も豊富です。食物繊維は、悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロールの吸収を抑制し、便中に排出させて、動脈硬化を防ぎます。
納豆に含まれる大豆イソフラボンにも、血圧の上昇を抑える作用が確認されています。
また、納豆といえば、ナットウキナーゼという酵素が有名です。ナットウキナーゼは、血栓(血の塊)を溶かして血液をサラサラにし、血圧を上げるホルモンの働きを抑えます。
これらの成分を一気に摂取できるのですから、納豆が非常に優秀な食品であることは間違いありません。さらにここで、納豆を食べる際、添付のたれやしょうゆではなく、酢をかけるのです。
酢には、血圧を下げる成分が多く含まれています。
酢の主成分である酢酸は、血管を拡張させるアデノシンという体内物質に働きかけ、血流を改善して血圧を下げます。
クエン酸には、強い抗酸化作用があり、LDLコレステロールの酸化を防いで動脈硬化を予防します。
さらに、酢に含まれるアミノ酸の一つであるアルギニンにも、血圧の上昇を抑える働きがあります。
実際に私は、高血圧の患者さんに毎日15ml(大さじ1杯)の酢を18日間とってもらい、血圧計で24時間測定しました。
すると18日後には、一日の平均血圧が、3.6mmHg下がったのです。血圧1mmHgは塩分1gに相当するので、一日当たり3.6gの減塩をしたときと同程度の効果といえます。
濃い味つけに慣れている人が、毎日3.6gの塩を減らすのは、簡単ではありません。ところが、いつも食べている納豆を、たれやしょうゆを使わず、酢納豆にするだけで、ここまでの降圧効果が得られるのです。
さらに特筆すべきは、酢納豆にすると味がよくなるということです。私自身、初めて酢納豆を食べたときは、「うまい!」と感じました。
酢は納豆に混ぜると酸味が和らぐので、摂取しやすくなります。一方、納豆が苦手な人にとっても、酢によって納豆のにおいと粘りが軽減するため、やはり食べやすくなるのです。
納豆に加える酢を、リンゴ酢やバルサミコ酢、黒酢など、いろいろ替えてみるのもお勧めです。バリエーションが広がり、飽きずに続けられます。
納豆1パックに、酢を大さじ1杯加えて混ぜるだけです。ぜひ、お試しください。