私たちの体には、自分の意志で制御できる体性神経と、自分の意志では制御できない自律神経があります。ただし呼吸だけは唯一、その両方の支配を受けています。つまり呼吸をコントロールすることで自律神経を制御することが可能なのです。【解説】岩瀬敏(愛知医科大学生理学教室教授)

解説者のプロフィール

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岩瀬敏(いわせ・さとし)
愛知医科大学生理学教室教授。1980年、名古屋大学医学部卒業。医学博士。自律神経疾患を専門とし、神経内科医として外来も担当。人体を対象にした環境生理学、宇宙医学など、幅広い研究に従事。

昼と夜のメリハリが血圧を安定させるカギ

血圧は、全身を循環する血液量、心臓が血液を送り出す拍出力、末梢の血管抵抗力の三つでコントロールされています。

このうち、②と③に深く関与しているのが、自律神経(意志とは無関係に内臓や血管の働きを支配している神経)です。

自律神経は、心身を活動的にする交感神経と、休息モードにする副交感神経が、バランスを取り合って働いています。

日中は活発に動くために交感神経が優位になり、血圧も高めです。夜は副交感神経が優位になって心身がリラックスするので、血圧も下がります。これが自然のリズムです。

この「オン」と「オフ」の切り換えがうまくいかないと、自律神経が乱れ、血圧が高いままになってしまう一因となるのです。

患者さんのなかにも、夜眠れないという人が非常に多く見られます。夜が更けても交感神経優位の状態が続き、副交感神経がうまく働かないのでしょう。

心身が常に緊張状態で、夜も休息モードに入らなければ、血圧は下がる暇がなく、血管はダメージを受け続けます。また、十分な休息が取れないと日中イライラして、さらに交感神経が過剰に働き、ますます血圧が上がるという悪循環に陥ります。

この悪循環を断ち切り、血圧を安定させるには、オンとオフのメリハリをつけること。つまり、昼間は活動的に働き、夜はぐっすり眠るというリズムを取り戻すことが大切なのです。

体と脳が休まりストレスも軽減

夜に副交感神経を優位にし、良質の睡眠を取る方法として、呼吸法が役立ちます。

私たちの体には、自分の意志で制御できる体性神経と、自分の意志では制御できない自律神経があります。ただし、呼吸だけは唯一、その両方の支配を受けています。つまり、自分の意志で呼吸をコントロールすることで、自律神経を制御することが可能なのです。

副交感神経を優位にするには、呼吸の際に最も重要な働きをする横隔膜を、ゆっくり下げ、ゆっくり上げるという動作が有効です。

ヨガや気功、太極拳なども、横隔膜をゆっくり動かすことで副交感神経を優位にする健康法といえます。

今回、紹介する呼吸法は、ヨガの経験や知識がない人でも簡単にできます。15秒かけて鼻から息を吸い、15秒かけて鼻から息を吐くだけ。つまり、30秒間で1回、呼吸をすることになります(やり方は下の図を参照)。

《30秒呼吸》のやり方

画像1: 【自律神経を整える方法】ヨガの呼吸法で「呼吸筋」を鍛えると血圧が下がり熟睡できる

あおむけになって、鼻から15秒かけて息を吸い、15秒かけて息を吐く。30秒で一呼吸。これを30回くり返す。途中で眠ってしまってもよい。

最初はおそらく、途中で息が切れてしまうでしょう。呼吸に必要な筋肉が弱いと、なかなか難しいと思います。

寝床に入ってから、30秒で一呼吸を目標に、ゆっくり吐いて吸ってをくり返してください。できれば15分、つまり「30秒呼吸」を30回、くり返してほしいところですが、途中で眠ってしまってもかまいません。

慣れてきたら、座ったり立ったり、上体を起こして行うと、呼吸筋がさらに鍛えられます。そうすると、夜、自然に深い呼吸ができるようになり、副交感神経がきちんと働き、血圧降下につながります。

このような横隔膜を大きく動かす呼吸法を2ヵ月程度続けると、血圧が有意に下がるという研究データがあります。15分は難しいと思いますが、できる範囲で続けてみてください。

ちなみに、「鼻から吸って、鼻から吐く」理由は、口で呼吸するよりも空気抵抗が大きく、呼吸筋を鍛えるのに役立つからです。

30秒呼吸を15分間続けられるようになったら、さらに呼吸筋を鍛えるために、「片鼻呼吸」にもチャレンジしてください。

片方の鼻を指で押さえ、反対の鼻だけで、30秒呼吸を行うのです。左右交互に行い、トータルで15分行うのを目標にしましょう。

画像2: 【自律神経を整える方法】ヨガの呼吸法で「呼吸筋」を鍛えると血圧が下がり熟睡できる

片方の鼻を指で押さえる片鼻呼吸は、呼吸筋をより鍛えることができる。

画像3: 【自律神経を整える方法】ヨガの呼吸法で「呼吸筋」を鍛えると血圧が下がり熟睡できる

慣れてきたら、座ったり立ったり、上体を起こして行う。

深い呼吸ができるようになると、夜に副交感神経がしっかり優位になり、ぐっすり眠れます。体も脳も休まり、ストレスがたまりにくくなります。

加えて、昼間にウォーキングなどの運動をしましょう。心拍数が100を少し超えるぐらいの速度で、1日6000〜8000歩を目指して歩きます。おなかを引き締め、腕をしっかり振って歩くのがコツです。

このように、昼と夜のメリハリをつけることで、自律神経のバランスが整います。それによって、高血圧の改善が期待できるでしょう。

画像: この記事は『壮快』2019年4月号に掲載されています。

この記事は『壮快』2019年4月号に掲載されています。

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