糖尿病性腎症の治療の基本は血糖コントロールです。私が患者さんに勧めるのは低糖質・高たんぱくの「MEC食」です。体に必要なたんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルを効率よく摂取するために、肉、卵、チーズを優先的に食べ、一口30回噛むという食事法です。【解説】福田世一(小倉台福田医院院長)

解説者のプロフィール

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福田世一(ふくだ・せいいち)
小倉台福田医院院長。四街道徳洲会病院「MEC食外来」担当医。日本透析医学会専門医。内科認定医。医学博士。

たんぱく質より糖質のほうが害が大きい

透析治療に至る原因疾患の第1位は、糖尿病性腎症です。日本透析医学会の調査では、2016年12月時点、糖尿病性腎症は血液透析導入の原因疾患のうち、約44%を占めています。

糖尿病性腎症はその名のとおり、糖尿病の合併症の一つです。段階を踏んで進行しますが、初期は自覚症状がほとんどありません。早期発見、早期治療が重要なので、ぜひ定期的に健康診断を受けてください。

さて、糖尿病性腎症の治療の基本は、血糖コントロールです。以前は「低カロリー(低エネルギー)・低たんぱく」の食事療法が主流でした。しかし私が患者さんに勧めるのは、「低糖質・高たんぱく」のMEC食です。

MECとは肉(Meat)、卵(Egg)、チーズ(Cheese)の頭文字。

MEC食は、体に必要なたんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルを効率よく摂取するために、肉、卵、チーズを優先的に食べ、食欲を抑制するために一口30回噛むという食事法です。沖縄のこくらクリニック院長・渡辺信幸先生が提唱しています。

前述したように、腎臓病にたんぱく質は禁忌とされてきました。

しかし、尿毒症(尿中に排出される廃棄物が血液中に残存した状態)やネフローゼ(尿中に大量のたんぱく質が出て、血液中のたんぱく質が減った状態)がなければ、たんぱく質摂取は問題ありません。むしろ、糖質の害のほうが大きいのです。

糖尿病の人は、ご飯や麺類、パンなどの糖質を好む傾向があります。そうした患者さんに「糖質は控え、肉と卵、チーズを食べてください」といっても、実行してもらえません。

そこで私は、「今の食事でいいので、一口30回噛んで」といいます。「時間がない」という人には、肉を食べるように勧めます。肉なら、飲み込むまでによく噛む必要があるからです。

そして、「卵は高栄養・低カロリーなので、1日3個は食べてください」といいます。コレステロールを気にする人には、食品のコレステロールと血中のコレステロールは相関しないことを説明します。

おやつにはチーズがお勧めです。個包装されているチーズなら、携帯にも便利です。

どうしても糖質を摂取したい人には、果物を勧めます。ご飯や麺類に比べて糖質が少なく、噛みごたえがあるからです。また、果物に含まれる果糖は、甲状腺ホルモン(FT3)を活性化し、代謝低下を防ぎます。

完璧を目指さず、できることから始めてください。それでも効果は期待できます。

画像: たんぱく質より糖質のほうが害が大きい

糖質制限で糸球体の負担が減りたんぱく尿が改善

腎臓は、毛細血管が毛糸玉のように集まった「糸球体」が、約100万個集まっている臓器です。

腎臓に流れ込んだ血液中のブドウ糖(グルコース)とナトリウムは、糸球体でろ過されたのちに尿細管に流れ、尿中に排出されます。

ただし、尿細管に流れたブドウ糖とナトリウムの一部は、SGLT2受容体というポンプのしくみで回収され、再び血液に戻ります。

糖尿病になると、SGLT2受容体が過剰増殖します。SGLT2受容体は糖質を回収する際に酸素を使うので、ブドウ糖が多いほど酸素消費が増え、腎臓が酸欠になって機能が低下するのです。

さらに、SGLT2受容体がナトリウムを回収すると、尿細管内のナトリウムを増やそうとして、糸球体に大量の血液が流れ込み、過剰な負担がかかります。その結果、尿中にアルブミンやたんぱくが漏れ出てきます。これが、尿アルブミンや尿たんぱくです。

糖質を制限すると、腎臓の酸素消費量が減り、糸球体の負担が軽減します。たんぱく尿が「+」程度の初期の糖尿病性腎症なら、糖質を制限することで「-」に持っていくことは十分可能です。たんぱく尿が「2+」「3+」の人が「+」になることも珍しくありません。

たんぱく質については、厚生労働省の定める「1日当たりのたんぱく質の推奨量」を見てみましょう。成人男性が60g、成人女性は50gですが、これだけのたんぱく質を食品で摂取するのは、けっこう大変です。

例えば、ショウガ焼き用の豚ロース肉を5枚食べても、たんぱく質は20gしかとれません。200gのステーキでも40g。卵1個は7gです。

腎機能の低下が著しい場合は、たんぱく質の摂取量に注意すべきです。しかし、初期の糖尿病性腎症であれば、糖質を控え、たんぱく質をしっかり摂取したほうがいいと思います。

MEC食で、多くの糖尿病性腎症の患者さんの腎機能が回復し、体重が減って、ヘモグロビンA1cも下がるといった効果を得ています。

ただし、糖尿病や腎臓病の進行状況によっては、MEC食が適さない場合もあります。必ず主治医と相談してください

画像: この記事は『壮快』2019年5月号に掲載されています。

この記事は『壮快』2019年5月号に掲載されています。

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