変形性股関節症などの場合は、運動療法や手術などの治療を施す必要がありますが、股関節自体に特に問題がなく「股関節の動きが悪い」「違和感がある」「股関節まわりが硬くなった」といった不具合を感じたときにお勧めの手法が、6つの動きから成る「股関節ストレッチ」です。【解説】三木英之(とつか西口整形外科院長)
解説者のプロフィール
三木英之(みき・ひでゆき)
とつか西口整形外科院長。1955年、大阪府生まれ。信州大学医学部卒業。横浜市港湾病院整形外科、横浜市スポーツ医科学センター整形診療科などを経て現職。1996年のアトランタオリンピック日本選手団本部医師、1994年、2002年、2011年の女子バスケットボール世界選手権大会医師を務めるなど、スポーツドクターとしても活躍。著書に『痛くないストレッチ』(KADOKAWA)がある。
股関節は6つの動きが柔軟にできることが大事
脚のつけ根にある股関節は、太ももの大腿骨と、腰の骨盤をつないでいる部位です。
たとえば、歩いているときなら、股関節には体重の5倍もの負荷がかかることもあります。この重い負荷に耐えられるほど、丈夫にできているのが股関節なのです。
もし股関節に痛みがあるようなら、どこに問題が生じているのか、医師の診断により原因を究明することがたいせつです。
1つは加齢とともに股関節の軟骨がすり減り、骨どうしが触れて痛む、変形性股関節症の場合。もしくは、スポーツや事故などで外的な力が加わり、股関節自体が損傷している場合もあります。
股関節自体に問題を抱えている場合なら、運動療法や手術などの相応の治療を施す必要があるのです。
股関節自体に特に問題がなく、「股関節の動きが悪い」「違和感がある」「股関節まわりが硬くなった」といった不具合を感じたときにお勧めの手法が、6つの動きから成る「股関節ストレッチ」です。
股関節は、屈曲、伸展、内転、外転、内旋、外旋という6つの動きができる関節です。要は、股関節は曲げ伸ばししたり、開閉したり、内外にひねったりする動きです。
ところが加齢や運動不足により、股関節の6つの動きが悪くなって、可動域が狭まってしまったり、腸腰筋をはじめとする、股関節を動かしているさまざまな筋肉が硬くこわばったりしてしまいます。
そこで、私は診療にも「股関節ストレッチ」を活用しています。患者さんが股関節をどれくらい柔軟に動かせるかをはかる指標になるのです。
これは、股関節の6つの動きのセルフチェックにもなります。股関節の可動域を広げたり、股関節を動かしている筋肉をストレッチするのにも、非常に有効な手段なのです。
3分!「股関節ストレッチ」のやり方
❶あお向けに寝て、両脚を伸ばす。右ひざを曲げて、両手で抱え、太ももをできるだけ胸に近づける。このとき、左脚はまっすぐ伸ばしたまま、床につけるように。6秒静止を3~5回繰り返す。反対側の脚も同様に行う
❷うつ伏せに寝て、両脚を伸ばす。右ひざを軽く曲げて、太ももをグーッと上に持ち上げる。このとき、腰を反らすと傷めるので、腰が床から浮かないように。6秒静止を3~5回繰り返す。反対側の脚も同様に行う
❸壁に背中をつけて座り、両脚を伸ばす。足先とひざ頭を真上に向けながら、両脚を少しずつ横に開いて広げていく。心地よい痛みを感じるところまで広げて、6秒静止を3~5回繰り返す
❹床に座り、両ひざを曲げ、両足裏をつけて、できるだけ両脚を体に引き寄せる。このとき、腰を反らさないよう、おへその下に力を入れる。次に両ひざを横に広げて、両手で押しながら、できるだけ床に近づける。6秒静止を3~5回繰り返す
❺床に座り、両ひざを直角に曲げ、ひざ下は外側に伸ばす。いわゆる“お姉さん座り”の体勢になり、太ももの内側をできるだけ床につけるようにする。6秒静止を3~5回繰り返す
❻あお向けに寝て両脚を伸ばす。右脚を持ち上げ左脚と交差させながら、できるだけ左側に持っていく。腰をできるだけ浮かさないように。6秒静止を3~5回繰り返す。反対側の脚も同様に行う
前かがみの姿勢の改善や股関節痛の予防にも有効
股関節ストレッチは、息を止めないように行います。毎日、お風呂上がりや、歩いたり、運動した後の体がやわらかいときに行うのがお勧めです。
ストレッチをすると、左右差を感じますが、左右差があると歩行などの日常の動作にも違和感があります。
ストレッチを毎日続けることで、股関節を動かしている筋肉が柔軟になり、股関節の左右差が消え、可動域も広がります。背すじが伸びて、前かがみの悪い姿勢を改善したり、股関節痛の予防もできるでしょう。