股関節の痛みは「筋肉」を鍛えて改善!歩けなくなる前に始めたい体操を紹介

美容・ヘルスケア

股関節の違和感を放置していると、股関節を支える筋肉群が弱っていくだけでなく、動かせる範囲が狭くなります。そうなると、さらに痛みが深刻化する恐れがあります。8の字タオル体操は、股関節の機能に必要な筋肉を効果的に鍛えるのに役立ちます。【解説】古賀直樹(中野坂上治療院代表・鍼灸師)

解説者のプロフィール

古賀直樹(こが・なおき)
中野坂上治療院代表。 日本で最初の鍼灸大学、明治国際医療大学卒。鍼灸師・整体師。メディア掲載多数。近著に『はた らく女子のオフィスで「カベ」ストレッチ』(雷鳥社)がある。

筋力低下が股関節に負担をかける

股関節は、日常的な動作のほとんどに関係する大切な関節です。歩くこと、階段を上り下りすること、イスから立ったり座ったりすることは、股関節がうまく動くことでスムーズに行えるのです。

ゴルフや野球などのスイングをする場合も、ほとんどの人は腰の動きだと思っていますが、基本となるのは股関節です。股関節がうまく動かないと、腰もスムーズに回転しません。

ところが、加齢とともに、しだいに股関節の動きが悪くなっていきます。その理由は、次の二つが考えられるでしょう。
股関節周辺の筋肉がかたくなる
股関節を支える筋肉が弱る

この結果、股関節にかかる負担が大きくなり、日常の動作や歩行に支障を来すようになります。そして、股関節に痛みが出てくる段階では、特に筋力低下が大きく影響しています。

若いときには、筋肉が股関節をしっかりサポートしてくれるので、あまり影響は出ません。ある程度の年齢になると、運動不足も加わって筋力が弱ってくるので、歩いているときにふんばることができなくなります。

しっかり歩けないと、その分だけ、一歩一歩の動きにブレが生じます。そうしたことがすべて、股関節へ負担をかけることになるのです。

また、年齢を重ねると、どうしても骨密度が低下するものです。この点でも、歩き方にブレが生じて、股関節に悪影響が及びます。

その結果、股関節に違和感や痛みが現れてきます。なんとか我慢できるうちはよくても、限界に達すると歩けなくなるでしょう。

そこで、皆さんにお勧めしたいのが、「8の字タオル体操」という健康法です。

「8の字タオル体操」のやり方

まずは、そのやり方を説明しましょう。用意する物は、バスタオル1枚だけです。

肩幅くらいに足を開いてイスに座ります。バスタオルをたてに折りたたんで、両ひざの近くで8の字になるように巻きつけてください。これによって、ひざをしっかりと固定することができます。

タオルが交差した部分が、ひざとひざの間にくるようにして、両手でしっかり握ります。そして、両ひざを内側へ思い切りギューッと3秒ほど押しつけます。タオルをつかんだこぶしを挟む感じです。

一度力を抜いてから、今度は外へ思い切りグーッと3秒ほど広げるようにしてください。タオルで固定されているのに逆らう感じです。

このように、内→外→内→外という動きを、30回くらいくり返しましょう。これを1セットとして、できれば、朝昼晩とそれぞれ1セットずつ行うと効果的です。

ちなみに、この体操は、やり過ぎはかえってよくありません。1セットで行うのは、せいぜい30回以内に留めておきましょう。

股関節への負担が軽減し痛みが改善する!

では、なぜ、この体操が股関節痛を解消するのに役立つのかをご説明します。

バスタオルでひざを固定して、内→外と太ももを動かすときに使われるのが、太ももの外側及びお尻にある外転筋と、太ももの内側にある内転筋です。

外転筋は、股関節を外側に開く、つまり、足を開くための筋肉です。お尻の中殿筋、小殿筋、大腿筋膜張筋などがそれに当たります。

一方、内転筋は、股関節を内側に閉じる(足を閉じる)ための筋肉です。これには、大内転筋、短内転筋、長内転筋などが含まれます。

股関節は、体の要ともいうべき関節で、ここには、非常に多くの筋肉が関わっています。ほかにも、屈筋や伸筋など多くの筋肉がありますが、外転筋と内転筋を鍛えるだけでも、股関節を支える力をかなり補強することができます。

しかも、この体操は、ある程度お年を召したかたでも、楽にでき、有効に筋肉を強化することができるのです。特に外転筋のうち、大腿筋膜張筋などは、なかなか鍛えにくいものですが、この8の字タオル体操なら、効果的に鍛えることができます。

この体操を根気よく続けることによって、弱っていた筋肉をしだいに強化していけば、歩いているときのブレが少なくなり、股関節への負担も軽減します。その結果、股関節痛の予防や改善につながるのです。

股関節に違和感を覚えたとき、それを放置していると、股関節を支える筋肉群が弱っていくだけでなく、その筋肉がしだいにかたくなり、動かせる範囲が狭くなります。

そうなると、さらに痛みが深刻化する恐れがあります。最悪の場合、人工関節に交換する手術を受けざるをえなくなるでしょう。

この8の字タオル体操は、股関節の機能に必要な筋肉を効果的に鍛えるので、根気よく続ければ、いつまでも思いどおりに歩くうえで役立ちます。難しいものではありませんし、イスに座って行うので運動の負担も少ないはずです。ぜひ、今日からお試しください。

この記事は『壮快』2019年6月号に掲載されています。

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