アボカドに含まれるステロールは分子が非常に小さいので、胃や腸で分解されることなくそのままの形で関節に届き、軟骨の修繕を助けると同時に、COX-2阻害作用で痛みも軽減するというわけです。食べ方としては、みそ汁の具にするのがお勧めです。【解説】戸田佳孝(戸田リウマチ科クリニック院長)
解説者のプロフィール
戸田佳孝(とだ・よしたか)
戸田リウマチ科クリニック院長。1960年、大阪府生まれ。医学博士。保存療法の研究を熱心に行う。『ひざ痛の97%は手術なしで治せる』『腰痛はヤンキー座りで治る』(ともにマキノ出版)、『100歳まで自分の力で歩ける「ひざ」のつくり方』(星雲社)など著書多数。
▼戸田リウマチ科クリニック(公式サイト)
軟骨のすり減りを抑制するとわかった!
近年、海外の論文に目を通していたところ、意外な果物に股関節痛の軽減効果があるというデータを見つけました。それは、「アボカド」です。
フランスのリキーネ博士らは、変形性股関節症の患者を、アボカドと大豆の不鹸化物(油脂にアルカリを加えたときに分解されずに残る物質)のサプリメントを飲んだ群と、飲まなかった群に分け、2年間追跡調査を行いました。
その結果、アボカドと大豆のサプリメントを飲んだ群は、飲まなかった群に比べ、関節のすきまが狭くなる速度が遅くなったと結論づけています。
「関節のすきまが狭くなる」というのは、軟骨が減ることを示します。アボカドと大豆の不鹸化物は、変形性股関節症患者の軟骨がすり減るのを、抑制する作用があるということです。
そのメカニズムについては、トルコで次のような研究が発表されています。
軟骨に傷をつけた実験用のイヌを、アボカドと大豆の不鹸化物を飲ませた群と、飲ませなかった群に分け、ひざ関節の滑液(関節を包む膜内を満たす液体)の成分を比較しました。すると、前者では滑液中にTGF-βという物質が増加していました。
TGF-βとは、ひと言でいうと「かさぶた」を作る物質です。肌をすりむくと、かさぶたができて、出血や感染を防ぎ、組織の修復が促されます。これを「線維化」といいます。
TGF-βは、線維化を促進するのです。滑液中にTGF-βが増えて線維がつくられると、軟骨の修繕が進みます。
フランスではすでにサプリメントとして販売
また、カリフォルニア大学の研究では、「アボカドと大豆から抽出した不鹸化物に、COX-2阻害作用が確認された」と報告されています。
COX-2阻害作用とは、胃を荒らすことなく痛みを鎮める作用のことです。この働きを利用したCOX-2阻害剤は、現在、鎮痛剤の主流となっています。つまり、「アボカドには、痛みを和らげる可能性がある」ということです。
アボカドに含まれる不鹸化物の代表であるステロールは、分子が非常に小さいので、胃や腸で分解されることなく、そのままの形で関節に届きます。
そのため、滑液中でTGF-βをたくさんつくるよう刺激して、軟骨の修繕を助けると同時に、COX-2阻害作用で痛みも軽減するというわけです。
こうして見ると、アボカドは変形性関節症の人にとって、まさにいいことづくしの食べ物といえそうです。
ただし、アボカドは「森のバター」といわれるとおり、脂肪が多く、高カロリー(高エネルギー)なので、食べ過ぎには要注意です。アボカドは、週に1個を目安に食べるのがいいでしょう。
食べ方としては、みそ汁の具にするのがお勧めです。
今回ご紹介した研究はすべて、アボカドと大豆の不鹸化物を使用しています。アボカドを、大豆が原料のみそと組み合わせることで、より効果が期待できるのではないかと考えられます。
アボカド以外の具はお好みでけっこうですが、私のお気に入りはタマネギ入りのアボカドみそ汁です。薄切りにしたタマネギをだし汁で煮て、みそを溶き入れたら、2〜3cm角に切ったアボカドを入れます。ひと煮したら火を止め、万能ネギを散らして完成です。
アボカドは、マグロや納豆と和えたり、豆腐にのせたりするのもお勧めです。
フランスではすでに、アボカドと大豆の不鹸化物が、変形性関節症のサプリメントとして販売されているそうです。
私のクリニックでも、変形性股関節症の患者さんにアボカドを勧めています。特に、アボカド入りのみそ汁は、患者さんからの評判も上々です。