私が長年研究し、治療に取り入れて高い効果を上げているのが「山元式新頭針療法(YNSA)」です。専門的には頭部にあるポイントに鍼を打ちますが、患者さん自身がこれらのポイントを爪で刺激する「頭の爪刺激」も補助療法としてたいへん役立ちます。【解説】加藤直哉(健康増進クリニック副院長)

解説者のプロフィール

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加藤直哉(かとう・なおや)
健康増進クリニック副院長。心理学博士、社会科学博士。2000年、琉球大学医学部卒業。日本小児科学会専門医を取得後、東洋医学の道を志す。現在は、西洋医学に加え、漢方(日本東洋医学会漢方専門医)、頭針療法(山元式新頭針療法学会副会長)、波動療法(バイオレゾナンス医学会員)、催眠療法(米国催眠士協会認定セラピスト)などを取り入れた統合医療を実践している。

頭をもむと脳が落ち着き治療効果が高まる

「腰が痛むときは、腰が悪い」「胃が痛むときは、胃が悪い」多くの人は、このようにとらえるでしょう。しかし、実は、主たる原因が腰にない腰痛や、胃にない胃痛も多いのです。

痛むところに主要な原因がないのなら、どこに原因があるのでしょうか。それは「」です。

例えば、腰痛で病院に行き、骨の変形が見つかると、そのこと自体に恐怖を感じてしまうことがあります。すると、骨の変形と痛みに直接的な関係がない場合でも、実際以上に痛みを感じてしまいます。

これは脳に生まれた「恐怖」が腰痛を助長し、固定化させてしまうからです。腰に限らず、同じようなことが、全身の症状でみられます。

脳の奥には、扁桃体という部分があり、痛みやストレスが大きいと、ここが興奮します。恐怖も扁桃体を興奮させるので、恐怖で痛みやストレスが増大されてしまうのです。

扁桃体の興奮が大きくなると、脳の前頭前野(額に近い領域)が、それを抑える働きをします。しかし、恐怖が長く続くと、脳のこの部分が萎縮するので、抑えがきかなくなり、それによっても痛みが強くなります。

また、恐怖に支配され始めると、「痛みが増すのが怖い→動かない→筋肉の硬直や血流不足→ますます痛む」という悪循環に陥ります。これは「恐怖回避思考」と呼ばれるもので、痛みと過敏脳の負のスパイラルです。

ですから、体のどの部分であれ、患部だけでなく、脳もケアすることが重要なのです。そのための方法として効果的なのが、「頭をもむ」という方法です。

頭には、脳に効くツボや反応点が多く存在します。それらを刺激すると、過敏な脳を落ち着かせ、恐怖を和らげるのに役立ちます。その結果、増幅されていた痛みやストレスを正常化することができるのです。

治療効果が高く海外で高い評価

私が長年研究し、治療に取り入れて高い効果を上げているのが、「山元式新頭針療法(YNSA)」です。

YNSAは、1973年に、宮崎県在住の医師、山元敏勝先生によって確立されました。山元先生は、臨床中、頭に全身各部につながるポイントがあることを発見しました。そのポイントに鍼を打つと、体の痛みやマヒ、不調などが、劇的に改善することを見いだしたのです。

このポイントは、伝統的な中国式のツボとはまったく違うため「新頭針療法」と名づけられました。

YNSAは世界中で高く評価されています(下のコラム参照)。YNSAが世界で評価されているのは、治療効果が非常に高いからです。難治とされる病気にも高い効果を示します。

私は、統合医療医(西洋医学だけでなく伝統医学や代替療法も行う医師)を目指していたこともあり、大学病院をやめて山元先生に師事し、YNSAを学びました。以来、治療に取り入れて高い効果を得ています。

【山元式新頭針療法(YNSA)とは】
YNSAは、Yamamoto New Scalp Acupunctureの略。欧米や南米など、世界中で1万人以上の治療家が実践する治療法。ドイツでは整形外科をはじめとして麻酔科、内科などの医師が実践し、ブラジルでは山元医師の名前を冠した病院がブラジル政府の国費で建てられている。オーストラリアやイタリアには、YNSAがカリキュラムに組み込まれた大学もある。日本では、2013年にはYNSA学会が設立され研究が進められている。中国鍼灸に比べて非常に簡便でわかりやすく、治療効果が高いので世界に広がっている。

【効果が期待できる症状】
■脳神経疾患
脳出血、脳梗塞、脳卒中、片マヒ、パーキンソン病、アルツハイマー病、不眠、三叉神経痛、顔面神経マヒ、難治性神経疾患
■感覚疾患

耳鳴り、めまい、視覚障害、聴覚障害、口腔疾患、失語症
■整形外科疾患

痛み(頭痛、首、肩、腰)、神経痛、慢性疼痛(リウマチ、線維筋痛症)、しびれ
■その他

内分泌疾患、不妊症、更年期障害、不定愁訴など

画像: 山元式新頭針療法を考案した山元敏勝先生(左)

山元式新頭針療法を考案した山元敏勝先生(左)

自律神経を整えるのにきわめて有効

専門的には、頭部にあるポイントに鍼を打ちますが、患者さん自身がこれらのポイントを爪で刺激する「頭の爪刺激」も、補助療法としてたいへん役立ちます。実際に行っていただくと、治療効果が明らかに高まるのを感じていただけると思います。

新頭針療法の重要なポイントは、額の真ん中寄りから頭頂部まで、縦に2本のラインを描くように並んでいます。ここを爪でこするように刺激します。そして、痛みや違和感を覚えるところは、改めてじっくり刺激するのがコツです(詳細は下記参照)。

頭の爪刺激は、さまざまな症状に効果があります。特に春から初夏にかけては、自律神経の働きが不安定になりやすいのですが、それを安定させるために頭の爪刺激が役立ちます。

「気持ちが落ち着かない」「イライラする」「うつっぽい」「やる気が出ない」といった場合に行うと、すぐれた効果が得られます。

心が不安定になると、体の不調も起こりやすくなります。耳鳴り、めまい、不眠、頭痛などは、精神面の影響から悪化しやすいものです。これらの症状の予防・改善に、頭の爪刺激を大いに活用してください。

「頭の爪刺激」のやり方

画像1: 「頭の爪刺激」のやり方

頭皮の上には、全身を反映するポイント(治療点)があります。特に、前頭部の中心線から左右1cm外側のライン(上写真参照)には、YNSAの治療点である「十二脳神経・十二内臓点」と「脳点」があります。

そして、そのラインをまっすぐ下がった額の上には、「」「」「」に対応する三つの感覚点があります。

両手の親指の爪を鼻のつけ根のくぼみに当て、そのまま頭頂部に向かって指を滑らせましょう。頭頂部に到着したら、また元の場所まで戻ります。こうすることで、すべての治療点と感覚点を一度に刺激できます。

指を滑らせたときに違和感や痛みがあれば、そこに対応する神経や臓器が弱っているということです。そこを重点的に押したりもんだりしましょう。

❶始点は眉間

画像2: 「頭の爪刺激」のやり方

両手の親指の爪を、写真のように鼻のつけ根のくぼみに当てる。
ゆっくり息を吐きながら、いた気持ちいい程度の力で、頭頂部に向かって指先を滑らせる。

❷終点は頭頂

画像3: 「頭の爪刺激」のやり方

頭頂部に達したら息を吸う。ゆっくり息を吐きながら、爪の先を滑らせて1の始点に戻る。
※❶~❷を5~10往復行う。

❸違和感のある部分は集中的に

画像4: 「頭の爪刺激」のやり方

❶~❷を行ったときに、痛みや違和感があった部分を、ゆっくりと息を吐きながら集中的にもみほぐす。握りこぶしやペンの頭など、やりやすい方法で刺激してかまわない。ただし、痛すぎるほどの刺激は避ける

画像: やる気が出ない・イライラする時に効果的な「頭」のもみ方

ペンの頭の丸いほうで刺激する。目を突かないように注意する。

画像: この記事は『安心』2019年6月号に掲載されています。

この記事は『安心』2019年6月号に掲載されています。

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