脊柱管狭窄症による症状の多くは、セルフケアで改善することができます。神経を休ませ、症状が落ち着いてきたら、股関節などを柔軟にするストレッチ、さらには、体の深部の筋肉を強化する体操などを行います。【解説】松平浩(東京大学医学部附属病院22世紀医療センター運動器疼痛メディカルリサーチ&マネジメント講座特任教授)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

松平浩(まつだいら・こう)

1992年順天堂大学医学部を卒業後、東京大学医学部整形外科教室に入局。1998年東京大学医学部附属病院整形外科の腰椎・腰痛グループチーフに就任。同大学にて博士号を取得。2016年より東京大学附属病院22世紀医療センター運動器疼痛メディカルリサーチ&マネジメント講座長(特任教授)。著書『「腰痛持ち」をやめる本』(マキノ出版)、『腰痛体操&肩こり体操』(NHK出版)など多数。

脊柱管狭窄症とは

脊柱管が狭窄してもしびれがない場合もある

背骨は、お尻から首までを支える、いわば人体の柱の役目をしています。ですから、「脊柱」とも呼ばれます。人間に限らず、脊椎動物には背骨がありますが、直立歩行をする人間の場合は、とりわけ「柱」としての役割が大きくなっています。

物理的に体を支える柱であるとともに、背骨には、もう一つの大きな役割があります。

それは、脳からの司令と体の各部からの感覚を相互に伝達する重要な神経「脊髄」の通り道であるということです。

背骨は、椎骨という小さい骨が、積み木のようにいくつも重なってできています。椎骨の真ん中には穴があり、これが連なってトンネルとなっています。このトンネルが「脊柱管」で、この中に、脊髄が通っているのです。

脊髄は、脳と並ぶ神経の総司令部のため、とても重要で、脊柱管という骨のトンネルで厳重に守られています。

しかし、加齢による組織の変形で、脊柱管が狭くなることがあります。その結果、脊髄や馬尾(脊髄の下部にある脊柱管内の神経)が圧迫されると、しびれや痛みなど、さまざまな症状を起こすことがあります。それが「脊柱管狭窄症」です。

こういった症状は首や、背中にも起こりますが、多くは腰に起こる「腰部脊柱管狭窄症」(以下「脊柱管狭窄症」)です。

ただし、レントゲンやMRI(磁気共鳴画像)などの画像検査で、「脊柱管が狭くなっている」と言われても、症状が出ないことが多々あります

その場合は、本当の意味の脊柱管狭窄症とは言えず、特に治療は必要ありません。脊柱管狭窄症がどんな病気かを知っておき、症状が出た場合に備えておけばよいでしょう。

脊柱管狭窄症は、たとえ症状が出ても、適切に対処すれば怖くはありません。むやみに怖がらず、正しい知識を備えるようにしてください。

脊柱管狭窄症で現れることが多い特徴的な症状は、以下のようなものです。

立ったり、歩いたりすると、左右一方のお尻〜足に痛みやしびれが出る
しばらく歩くと足や腰が痛んだりしびれたりするが、少し休むとまた歩ける(間欠性跛行)
座ったり、自転車に乗ったり、ショッピングカートを押したりすると症状がらくになる

セルフケアで改善を見込める場合も

脊柱管狭窄症によるこれらの症状の多くは、セルフケアで改善することができます(重症例を除く=後述)。そのポイントは、症状が出ているときは、狭くなった脊柱管をさらに狭める姿勢や動作を避け、広げる姿勢を取ることです。

具体的には、少し背中を丸めるような姿勢を取ると、脊柱管を広げて神経の圧迫を和らげることができます(イラスト参照)。次項で紹介する「足上げリラックス」も有効です。

《腰部脊柱管狭窄症の症状と姿勢の関係》

画像: 【脊柱管狭窄症の体操】痛みやしびれを改善する姿勢 再発を予防する体操も紹介

圧迫された神経は、血流が乏しくなり、酸素不足の状態になっています。脊柱管を広げる姿勢を取ると、血流を増やして酸素を供給し、痛みやしびれを和らげることができるのです。

これらの方法で神経を休ませ、症状が落ち着いてきたら、股関節などを柔軟にするストレッチ、さらには、体の深部の筋肉を強化する体操などを行います。(体操の詳しいやり方は、下項参照)この方法で、背骨をサポートできるので、脊柱管狭窄症の悪化や再発予防に役立ちます。

安静にしてばかりでは、じわじわと悪化することになりかねません。無理をする必要はありませんが、できる範囲でこれらの体操を心がけましょう。

さて、脊柱管狭窄症の大部分は先に挙げた症状が出ますが、一部にもっと重い症状が出る場合があります。それは以下のような症状です。

両足全体がしびれる
肛門や性器付近の灼熱感
尿が出にくい
両足の裏の異常感覚(砂利を踏む、足裏に膜がかぶるなどの違和感)
手すりや壁につかまって足踏みするなど、簡単な運動ができない(筋力の低下)

これらの症状が出ている場合は、セルフケアでは改善が望めないので、医療機関を受診し、専門医と手術も視野に入れた相談を行うことをお勧めします。

逆にいえば、それ以外の大部分の脊柱管狭窄症は、あわてて手術を検討する必要はまったくありません。先に挙げた注意点や、下記の体操で改善が期待できます。あきらめずにぜひお試しください。

「脊柱管狭窄症に効く体操」のやり方

「痛みとしびれをらくにする体操」は、脊柱管の圧迫を緩和し、症状をらくにします。
「痛みが落ち着いたら行う体操」は、股関節と背中を柔軟にすることにより、腰の負担を減らします。
「痛みの再発を防ぐ体操」は、背骨の周囲の筋肉を強化するため、脊柱管狭窄症による痛みが起こりにくくなります。

【痛みとしびれをらくにする体操】

❶︎足上げリラックス
あおむけになって頭を枕に乗せ、両足のふくらはぎをイスに乗せる。足首をときどき曲げ伸ばししながらリラックスし、5~10分間休んで②を行う。

画像1: 【痛みとしびれをらくにする体操】

❷ひざ抱えストレッチ
息を吐きながら、両手でひざを抱えて引き寄せ、1分間ほど保つ。❶の足上げリラックスと交互に全体で10~30分行う。

画像2: 【痛みとしびれをらくにする体操】

【痛みが落ちついたら行う体操 1】

背中反らしストレッチ
イスに座り、頭上に腕を伸ばして手のひらを床側にして手を組む(ただし、手のひらを天井にしたほうがやりやすい場合は、痛みがなければこちらでもよい)。
息を吐きながら、腰を反らして体を後ろに傾ける。そのさい、ヘソの下(丹田)に力を入れ、10秒間保つ。
①の姿勢に戻り、また伸ばすのを3回くり返す。以上を1セットとして1日2〜3セット行う。

画像: 【痛みが落ちついたら行う体操 1】

【痛みが落ち着いたら行う体操 2】

股関節伸ばし
左足をイスに乗せ、両手を左ひざに置く。
息を吐きながら、イスに乗せた左足に体重をかけながら、腰を前方に移動させ、股関節の内側全面を伸ばす。そのさい、へその下(丹田)に力を入れ、10~30秒間保って、①の姿勢に戻る。これを3回くり返す。
右足でも同様に3回行う。以上を1セットとして1日2〜3セット行う。

画像: 【痛みが落ち着いたら行う体操 2】

【痛みの再発を防ぐ体操】

おなかへこませ体操
《目安の回数と時間》
1日に、おなかをへこませている時間が、合計3分間くらいになるようにして、3日に1回程度行う。

あおむけになって頭を枕に乗せ、ひざを立てる。鼻からゆっくり息を吸い、おなかをふくらませる。

画像1: 【痛みの再発を防ぐ体操】

へその下(丹田)を引き込むイメージで吸った息を吐ききり、おなかをへこませたまま息を止めて10秒間以上保つ。

画像2: 【痛みの再発を防ぐ体操】

手足伸ばし体操
《目安の回数と時間》
最初は1日1セット。慣れてきたら、20秒間、30秒間と時間を長くする(目標は60秒間で1日3セット)。

床に両手・両足をつき、顔を下に向ける。姿勢が安定したら、右腕だけ床と水平にまっすぐ上げる。

画像3: 【痛みの再発を防ぐ体操】

右腕を上げたまま、左足も床と水平にまっすぐ上げてへその下(丹田)に力を入れる。10秒間保つ。

画像4: 【痛みの再発を防ぐ体操】

両手両足をついた姿勢に戻り、次は左腕と右足を上げて同様に行う。これを左右交互に1回くり返す。

※この記事は『安心』2019年6月号に掲載されています。

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