私たちは近年、こうじにグリコシルセラミドという糖脂質が含まれることを発見しました。〝こうじセラミド〟は、肝臓に運ばれて脂肪の代謝を活性化させます。肥満予防・メタボ改善に、大いに有効なのです。また、肌細胞を活性化することも判明しました。【解説】北垣浩志(佐賀大学農学部教授)

解説者のプロフィール

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北垣浩志(きたがき・ひろし)

佐賀大学農学部教授。東京大学農学部卒業。国税庁醸造研究所研究員、米国サウスカロライナ医科大学などを経て現職。専門は発酵醸造学。日本の伝統食品の機能性開発や、グリコシルセラミドの化粧品・機能性食品の開発などに携わる。こうじ研究の権威。科学技術分野の文部科学大臣表彰、日本農学進歩賞など受賞多数。

こうじで作る甘酒は有効成分量がダントツ!

こうじで作った甘酒に、日本の伝統食である梅干しを合わせた調味料が、「梅こうじ」とのこと。梅こうじの味は、甘酒の糖分と梅の塩分、酸味が相まった絶妙なコンビネーションです。

そこで、甘くておいしいこうじ甘酒を飲むと、メタボ対策になる──といったら、皆さん驚かれるでしょうか。

糖尿病や肥満の予防には、糖を控えたほうがいいことは、誰でも知っています。しかし甘酒には、意外なことに、そうした生活習慣病の改善につながる成分が含まれているのです。

私たちは、こうじの健康機能性について、数多くの研究を行っています。こうじは、みそやしょうゆ、清酒をはじめとした和食の発酵調味料を造る過程で欠かせない菌です。

このこうじを発酵させると、甘酒ができます。米のデンプンが糖化することで、砂糖なしでも非常に甘くなります。

なぜ、甘酒をとることで、メタボが改善するのでしょうか。

私たちは近年、こうじにグリコシルセラミドという糖脂質が含まれることを発見しました。この糖脂質は、米やコンニャクなどさまざまな食物に含まれていますが、こうじにも多量に含まれていたのです。

そこで、私たちはこれを、「こうじグリコシルセラミド(以下、こうじセラミド)」と名付けました。

しかも驚くべきことに、こうじセラミドは米よりもこうじに多く含まれており、甘酒になるとさらに増えることがわかりました。こうじ由来のほかの発酵食品である、みそやしょうゆ、清酒などと比較しても、ダントツに多いのが甘酒でした。

そう、メタボを改善するカギとなるのは、このこうじセラミドなのです。

画像: こうじ菌(写真:北垣浩志先生)

こうじ菌(写真:北垣浩志先生)

ダブルの作用機序で腸内環境を改善!

通常、食べ物は小腸で分解されますが、こうじセラミドは、一部が小腸で、大半は大腸まで届いて分解・吸収されます。この小腸で分解されたこうじセラミドは、肝臓に運ばれて、脂肪の代謝を活性化させます。そのため、肥満予防・メタボ改善に、大いに有効なのです。

さらに、こうじセラミドには肝臓のコレステロール値を下げる作用もあります。肝臓の余分なコレステロールが減ると、胆汁酸の分泌が促され、大腸の環境がよくなります。

こうじセラミドは、別の機序からも腸内環境改善に役立ちます。大腸に届いたほうのこうじセラミドは、腸内で「ブラウティア・コッコイデス」という善玉菌のエサになり、この菌を増やしてくれるのです。

善玉菌といえば、ビフィズス菌や乳酸菌が有名ですが、ブラウティア菌も、日本人の腸内に多く存在する腸内細菌です。

腸内細菌叢(腸内フローラ)は、善玉菌に多様性があるほうが、よりいい状態になります。こうじセラミドは、こうした二重の作用機序で、腸内環境の改善に寄与するのです。

ところで、「セラミド」という言葉に聞き覚えがありませんか。

セラミドは脂質の一種で、肌の表皮に存在します。肌のバリア機能や保湿にかかわるため、化粧品にもしばしば配合される成分です。

私たちは、こうじセラミドを肌の培養細胞に投与し、その影響を調べました。すると、こうじセラミドは表皮の最も下にある基底層に到達することで、肌細胞を活性化することが判明しました。つまり、肌全体の状態を、文字どおり底上げしてくれるのです。

ちなみに、こうじセラミドを口から摂取しても、同様の効果が期待できることが認められています。

このように、こうじセラミドが豊富に含まれる甘酒をとることは、メタボの改善や、美肌づくりに大いに役立ちます。

今回、こうじと組み合わせる梅も、疲労回復食欲増進などの、体にいい作用があります。梅こうじは、おいしいうえに健康効果が高い、注目の発酵食といえるでしょう。

※この記事は『壮快』2019年7月号に掲載されています。

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