【座骨神経痛とは】痛みやしびれの原因がわかるチェックリスト 腰に負担をかけない生活のコツ・セルフケア方法を専門医が解説

美容・ヘルスケア

座骨神経痛とは病名ではありません。腰から下肢にかけて伸びている座骨神経に沿って、しびれや痛みが起こる「症状」です。まずは、医療機関を受診してください。重篤な病気なのか、セルフケアで改善できるのか、医師の診断を受けることが大切です。【解説】田村睦弘(平和病院副院長・横浜脊椎脊髄病センター長)

解説者のプロフィール

田村睦弘(たむら・むつひろ)
慶應義塾大学医学部卒業後、同大学整形外科学教室入局。川崎市立川崎病院、国立病院機構村山医療センター、済生会横浜市東部病院を経て、2012年、平和病院・横浜脊椎脊髄病センターを設立、センター長に就任。医学博士。

チェックリストで自分の症状を把握しよう

座骨神経痛とは、病名ではありません。腰から下肢にかけて伸びている座骨神経に沿って、しびれや痛みが起こる「症状」であり、感覚マヒが現れたり、歩行障害を伴ったりすることもあります。

座骨神経痛の原因となる病気は、主に「腰部脊柱管狭窄症」と「椎間板ヘルニア」です。

高齢者に多いのが腰部脊柱管狭窄症で、その名のとおり、背骨の中を通る神経の通り道である脊柱管が狭くなる病気です。脊柱管に収まっている馬尾や神経根が圧迫されて、座骨神経痛が起こります。

椎間板ヘルニアは、椎骨と椎骨の間でクッションの役割を果たす椎間板が、なんらかの原因で変形したり断裂したりして飛び出す病気です。腰椎部分の椎間板が飛び出すと、馬尾や神経根を圧迫し、座骨神経痛が出現します。椎間板ヘルニアは、若い世代にもよく見られます。

そのほかにも、血流障害が原因で下肢に痛みやしびれが生じる「末梢循環障害」、お尻にある梨状筋が座骨神経を刺激して起こる「梨状筋症候群」、背骨とお尻をつなぐ神経が圧迫される「殿皮神経障害」などもあります。

また、まれにではありますが、泌尿器の病気や子宮筋腫など婦人科の病気、腰の骨の腫瘍、ガンの骨転移などで起こることもあります。

座骨神経痛が現れたら、自分で症状を把握することが大切です。下のチェックリストで確認しましょう。

そしてまずは、医療機関を受診してください。重篤な病気なのか、セルフケアで改善できるのか、医師の診断を受けることが大切です。

ほとんどの病気は整形外科で対応しますが、末梢神経障害の場合は血管外科か循環器内科になります。

【痛みやしびれの原因がわかるチェック表】
以下の質問に該当する人は、AからDの空欄すべてに〇を記入してください(斜線のあるマスは除く)。

【あなたの合計数が多かったものは?】

《合計数が多い》
腰部脊柱管狭窄症が疑われる→ 整形外科へ
《合計数が多い》
腰椎椎間板ヘルニアが疑われる→ 整形外科へ
《合計数が多い》
末梢循環障害が疑われる→ 血管外科や循環器内科へ
《合計数が多い》
梨状筋症候群、殿皮神経障害などが疑われる→ 整形外科へ

「3個以上」 → その病気が疑われる
「1~2個」 → その病気の可能性がある
「0個」 → その病気の可能性は低い
Ⓐ~Ⓓの病気が複数同時に起こっていることもあるので、少しでも可能性があれば整形外科を受診する。0個の場合でも、不安なら医師に相談する。

痛みがゼロにならなくてもOK!

高齢のかたがたに多いのは、腰部脊柱管狭窄症かもしれません。50歳を過ぎると、多くの人に腰部脊柱管狭窄症が起こる可能性が出てきます。体のほかの組織と同じように、脊柱管も老化するからです。

椎骨にトゲのような突起ができたり、椎間板が盛り上がったり、脊柱管を内側から支えている靭帯が分厚くなったりして、脊柱管の内腔を狭めます(下の図を参照)。

ただし、腰部脊柱管狭窄症になったからといって、すべての人に座骨神経痛が起こるわけではありません。症状が出る人と出ない人がいます。

先述したように、下肢に痛みやしびれなどの症状が出たら、まずは整形外科を受診しましょう。座骨神経痛の大半は、手術ではなく、保存療法で症状が改善します。すぐに手術をすることはないので、安心してください。

多くの場合、最初に消炎鎮痛剤を処方され、安静を指示されます。座骨神経が炎症を起こしているからです。血管拡張剤で血行を促進し、神経症状を抑える治療や、痛みを遮断する神経ブロック薬を使うこともあります。いずれも、神経痛を鎮める治療です。

強い痛みが引いてきたら、再発を防ぐために、運動することも大切です。ただし、無理や焦りは逆効果になります。運動を始める時期や運動の強度は、医師の判断に従ってください。

また、民間療法や鍼灸、マッサージなどは、間違った方法で行うと、かえって症状を悪化させることもあります。必ず、医師の診断と治療のあとで行いましょう。

3ヵ月以上通院を続けても、「痛みが軽減しない」「歩けない」など、生活に支障が出たままの場合、ほかの医療機関を受診することを考えてもいいでしょう。その際、日本整形外科学会認定の脊椎脊髄病医がいる病院にかかれば間違いありません。日本整形外科学会のホームページで検索できます。

くり返しになりますが、神経が圧迫されて炎症を起こしても、適切な治療を受けてしばらく安静にすれば、痛みやしびれなどの症状は治まります。

しかし、神経が強く圧迫され続け、炎症の期間が長くなると、神経組織が傷んでしまいます。そうなると、投薬治療が効かず、たとえ手術をして神経の圧迫を取っても、しびれやマヒが残るケースがあります。したがって、治療や手術のタイミングは非常に重要なのです。

もう一つ大事なのは、「痛みがゼロにならなくてもOK」とすること。「痛みが完全に取れないうちは、治っていない」と思い込み、なかなか元の生活に戻れない患者さんがいます。これは非常にもったいないことです。

「歩いて買い物に出かける」「バス旅行に参加する」「ゴルフをする」など、自分が望む生活に支障がないレベルまで改善することをゴールとしましょう。

座骨神経痛自体は、痛みの原因や対処法がはっきりしているので、症状が多少残っても「危険なサイン」と考える必要はありません。そこが脳や心臓とは違うところです。

下記で紹介するセルフケアを習慣にし、座骨神経の圧迫を避ければ、再発することなく、日常生活を送ることができます。

神経を圧迫から解放し修復するイメージで!

座骨神経痛になったら、まず先述のチェックリストで症状を把握し、医療機関を受診します。症状が治まったら、腰に負担をかけない生活と、背骨周辺の筋肉を緩め、筋力をつけるリハビリを始めましょう。

まず、腰に負担をかけない生活について、説明します。

簡単なことですが、痛みを感じる動作や姿勢は避けてください。座骨神経痛の原因にもよりますが、腰部脊柱管狭窄症の場合、背すじを伸ばしたり、背中を反ったり、腰をひねったりすると、痛みが出ます。

痛みやしびれが出るのは、神経が圧迫されている証拠です。その状態が続けば、神経が損傷を受け、炎症を起こしてしまいます。ですから、「姿勢をよくしなければ」と思わずに、少し前かがみになってください。

日常で背すじを伸ばす動作といえば、「洗濯物を干す」「電車やバスでつり革につかまる」などでしょうか。物干しざおを低い位置に変えたり、つり革ではなく手すりにつかまったり、座席に腰かけたりしましょう。

腰を伸ばして痛みが出るなら、歩くときも少し前かがみにします。ただ、前かがみだと太ももを上げにくく、つまずきや転倒につながるので、杖やカートを利用しましょう。自転車も、前かがみの姿勢で乗れるタイプならお勧めです。

寝るときは、あおむけより横向きのほうが腰に負担がかかりません。あおむけで寝る人は、ひざの下にクッションを入れると、腰が楽です。

腰部脊柱管狭窄症以外の病気による座骨神経痛の場合も、「痛い動作・姿勢」は避けるのが基本です。神経を圧迫から解放し、傷ついた神経を修復させるイメージで行動しましょう。

痛みが出なければ、腰を反ったり曲げたり伸ばしたりしてもけっこうです。

腰に負担をかけずに動くには、股関節を意識して使うのがコツです。例えば、イスに腰かけたり、イスから立ち上がったりするときは、股関節から体を折り、太ももとお尻を使います(下の図を参照)。頻繁に行う動作なので、腰への負担を減らすコツを身につけましょう。

腰に優しい立ち上がり方と座り方

手のひらを上にして、小指側のへりをそけい部に当てると、股関節を上手に使える

《座り方》

イスの前に立ち、上半身を軽く前に傾ける

お尻を後ろに引きながら、ゆっくりひざを曲げる

静かにお尻を下ろし、上半身を起こす

《立ち上がり方》

手をそけい部に当て、上半身を軽く前に傾ける

頭を下げてお尻を上げる

上体を起こしながら立ち上がる

屋外でのウォーキングはいろいろな意味でお勧め

さて、投薬や安静によって急性期の痛みが落ち着いたら、無理のない範囲で運動を始めます。冒頭でお話ししたように、背骨周辺の筋肉の緊張を緩め、筋力をアップするためです。

座骨神経痛のある人は、腰周辺の筋肉がこわばり、血行が悪くなっています。「いったん腰を曲げると固まってしまって、なかなか元の姿勢に戻れない」という声をよく聞きます。

体を動かすと、血行がよくなり、筋肉が柔軟になります。また、神経に栄養や酸素が十分に行き届き、痛み物質も排出されやすくなります。腰周辺の筋肉の強化もでき、腰椎(背骨の腰の部分)や骨盤を支える力がつくのです。

運動の種類は問いませんが、翌日筋肉痛になるような強度の高い運動や、重い物を持ち上げるスポーツはやめましょう。腰をひねったり、跳んだりはねたりする運動も避けてください。

当院の患者さんに人気の運動は、なんといってもウォーキングです。ウォーキングは、太陽の光を浴びられるというメリットがあります。日光を浴びると、体内でカルシウムの吸収率を高めるビタミンDが形成され、骨の強化を促進して、骨粗鬆症を予防します。

痛みが完全に消えなくても、歩ける程度の痛みなら、積極的に屋外に出たほうが改善への近道になるのです。

歩くときには、大きく手を振りましょう。平衡感覚が鍛えられて転倒防止になるばかりでなく、運動量が増えて、食欲が増します。筋肉量を増やし、代謝を上げるには、しっかり食べることも大事です。

外を歩くのが難しいときは、プールでの水中ウォーキングもお勧めです。ほかには、ゆっくりした動きで徐々に力を入れていく、太極拳やヨガのような運動がいいでしょう。

そして、意外かもしれませんが、バランスボールも効果的です。

不安定なボールに腰かけると、バランスを取ろうとして全身の筋肉が働きます。特に、背骨を支える深層の筋肉群(インナーマッスル)に負荷がかかり、鍛えられるのです。転倒には十分注意が必要ですが、両足が床につく大きさのボールに、1日数分腰かけるだけでも効果があります。

運動療法は、気持ちよくできる範囲で行うことが大切です。腰やお尻、足に痛みが出たら、中止してください

1日数分でOK!

この記事は『壮快』2019年7月号に掲載されています。

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