なぜこんな簡単な体操で糖尿病が改善するのか。それは「骨ホルモン」と呼ばれるオステオカルシンを効率的に分泌させることができるからです。オステオカルシンは臓器を活性化させ、糖や脂質の代謝や動脈硬化の改善に有効だという研究が発表され、注目を集めている物質です。【解説】藤澤孝志郎(Dr.孝志郎のクリニック院長)

解説者のプロフィール

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藤澤孝志郎(ふじさわ・こうしろう)
Dr.孝志郎のクリニック院長。宮崎大学医学部卒業。 東京都多摩北部医療センター、東京都立府中病院等を経て、Dr.孝志郎のクリニックを開院。総合内科と超音波画像診断の幅広い知識を備え、診察に十分な時間をかけるスタイルが特徴。現在はリハビリテーション医学に力を入れている。医学教育界のパイオニアとしても知られ、今日までにその講義を聴いて医師になった者は海外医師達も合わせると10万人を超える。代表作の「病態生理講座」、「症候学」、「サマライズシリーズ」は全国70大学以上の医学部で長く親しまれている。

メタボ体形でも全て正常な数値

私は体重が98kgで、いわゆるメタボ体形ですが、過去1~2ヵ月の血糖値の平均的な高さを示すヘモグロビンA1cは5.3%と、完全なる正常値(ヘモグロビンA1cの正常値は6.5%未満)。

血糖値だけでなく、中性脂肪値、肝機能値、血圧などほかの血液検査の数値も全て正常な「健康デブ」を自認しています。

そんな私が10年以上、寝る前に続けているのが、ウミガメのように腹ばいになってグッと10回床を押す「ウミガメ腕立て」です。

一般的な腕立てふせのように、腕の力で体を持ち上げる必要はありません。ですから、力のないお年寄りでも無理なくできる、とても簡単な運動です。

当院の糖尿病の患者さんにも私はこの体操を勧めています。

血糖を細胞に取り込むホルモンであるインスリンの分泌が途絶えてしまうような重度の糖尿病でなければ、この簡単な体操を行い、食事を工夫するだけで、血糖値コントロールがうまくいくようになる人が多いのです。8割の患者さんは、薬をやめたり減らしたりできています。

なぜこんな簡単な体操で糖尿病が改善するのか。それは、この体操が、「オステオカルシン」という物質を効率的に分泌させることができるからです。

骨ホルモンがインスリン抵抗性を改善する

オステオカルシンは、全身の臓器を活性化させ、糖や脂質の代謝や動脈硬化の改善に有効だという研究が発表されたことから、近年急速に注目を集めている物質です。

オステオカルシンの一部は、血流に乗って膵臓に運ばれ、インスリンを分泌するβ細胞を刺激してインスリンの分泌を促します

さらに小腸の粘膜にはオステオカルシンの受容体があり、ここにオステオカルシンが結びつくとインクレチンという物質が分泌されます。インクレチンにも膵臓のβ細胞を活性化する作用があり、インスリンの分泌が高まるのです。

オステオカルシンは直接的、間接的に、インスリンの分泌を促すだけではありません。血糖を取り込む側である筋肉や脂肪組織に働きかけてインスリン抵抗性を改善する作用があることも、九州大学などの研究で次々に明らかになってきています。

実は、オステオカルシンは骨が作り出されるときに、分泌される物質です。ホルモンと同様にさまざまな情報を伝達する働きがあるため、「骨ホルモン」と呼ばれることがあります。

骨は、古い骨を壊す破骨細胞と、新しい骨を作る骨芽細胞がバランスよく働くことで新陳代謝をくり返しています。オステオカルシンは骨芽細胞が分泌しますから、骨の新陳代謝が活発に起こるほどオステオカルシンの分泌も増えます。

骨の新陳代謝を促しているのが、体内で発生する電気です。

脳波計や心電図などでもわかるとおり、私たちの体は電気によって動かされています。骨は衝撃や圧力が加わることで電気を発生する、体内の発電機でもあるのです。

この「衝撃や圧力を与えると電気が発生する」現象を、物理の世界では「ピエゾ電気効果」といいます。ピエゾ電気効果は、大きい骨で起こるほど、大きな電気を生み出します。

ですから、かかとや大腿骨といった大きな骨を、体重という大きな圧をかけて刺激できるウォーキングは、オステオカルシンの分泌を促すための、大変効率のよい方法です。

1日3000歩程度、週3~4回歩くとよいでしょう。

たまにするきつい運動より毎日の軽い運動

しかし、腰やひざが悪い人やお年寄りでは、歩くのがつらいということも多いはずです。

足腰の弱い人でも、オステオカルシンの分泌を促せる方法として考えたのが、足の骨に次いで大きい肩や肩甲骨、上腕の骨に圧をかける「ウミガメ腕立て」です。

朝起きたときか寝る前に、上腕や肩に圧をかけるようなイメージで10回、グッと床を押し込みます。ゆっくりやっても1分もかからず、疲れもしない動きです。その代わり、必ず毎日行ってください

運動の効果は、運動のエネルギーの大きさと継続時間に比例します。

「ウサギとカメ」の逸話ではありませんが、一瞬だけがんばるきつい運動よりも、負担にならない程度の運動を毎日コツコツ続けるほうが、結果的に大きな成果を得ることができます。

その意味で、もう一つ、イスに腰かける直前の姿勢で3秒キープするだけの運動をご紹介します。スクワットを簡易に安全にできるようにした方法で、太ももの筋肉を鍛えることができます。

筋肉は血糖の貯蔵庫ですから、筋肉量が少ないとすぐに容量がいっぱいになってしまい、血液中の糖を十分取り込めないため、高血糖を起こしやすいのです。

ウミガメ腕立てとあわせて、ぜひ続けてみてください。

骨ホルモンを効率的に出すお勧めの運動のやり方

1歩1歩で圧電できる!
【3000歩ウォーク】

画像: オステオカルシンの分泌を高める運動「ウミガメ腕立て」のやり方  骨ホルモンが血糖値コントロールに役立つ!

ウオーキングはいちばん簡単なピエゾ電気効果を得る方法!1日合計3000歩でOK!

足腰が弱った人でもらくらくできる!
【ウミガメ腕立て】

画像1: 骨ホルモンを効率的に出すお勧めの運動のやり方

床に腹ばいになり、手を胸の横につく。

画像2: 骨ホルモンを効率的に出すお勧めの運動のやり方

床を手でグッと押し込み2秒キープしたら力を抜く。10回くり返す。

画像3: 骨ホルモンを効率的に出すお勧めの運動のやり方

筋力が少なく顔を上げているのもつらい人は、床に顔をつけたまま、手を押し込むだけでもよい。

大きな筋肉を効率的に鍛える!
【簡単!イススクワット】

画像4: 骨ホルモンを効率的に出すお勧めの運動のやり方

イスの前に足を肩幅に開いて立ち、ゆっくりと腰を下ろし、座面に座る寸前で3秒キープしてから座る。また立ち上がって、10回くり返す。

画像: この記事は『安心』2019年7月号に掲載されています。

この記事は『安心』2019年7月号に掲載されています。

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