「熊リハパワーライス」は、慢性腎臓病のかた以外にも、サルコペニアやフレイルを起こしているかたなどにもお勧めできます。熊リハライスで腎機能を維持しながら、エネルギーを確保して元気になれば、リハビリにも積極的に取り組めるようになってきます。【解説】嶋津さゆり(熊本リハビリテーション病院栄養管理部栄養管理科科長・管理栄養士)

解説者のプロフィール

嶋津さゆり(しまづ・さゆり)

熊本リハビリテーション病院栄養管理部栄養管理科科長。管理栄養士。
1987年、尚絅短期大学家政科食物栄養専攻卒業。2011年、九州保健福祉大学通信教育部社会福祉学部臨床福祉学科卒業。1992年より熊本リハビリテーション病院勤務。日本病態栄養学会(学術評議員)、日本静脈経腸栄養学会(代議員・学術評議員)、日本リハビリテーション栄養学会(学術評議員)。病院管理栄養士業務だけでなく、熊本県立大学環境共生学部非常勤講師を兼務している。「熊リハパワーライス®」を考案。著書に『低栄養対策パーフェクトガイド』(医歯薬出版)などがある。

必要なエネルギーをしっかり確保できる

私たち、熊本リハビリテーション病院では、2012年から、慢性腎臓病の患者さんなどの食事療法に、「熊リハパワーライス®︎(以下熊リハライス)」を取り入れています。

熊リハライスは、軟らかめに炊いた白飯に、MCTオイルMCTパウダープロテインパウダーを混ぜたものです。ご飯軽く一膳(150g)で305kcalと、少量で大きなエネルギーが得られるのが特徴です。

MCTとは、中鎖脂肪酸のことで、ココナッツ油やパーム油、母乳などに含まれている成分です。

脂肪酸は、油の主成分ですが、一般的な食用油に多い長鎖脂肪酸に比べ、中鎖脂肪酸は、分子の鎖が約半分と短いものを指します。

そのため、消化吸収されやすく、速やかにエネルギーに変わって、しかも体脂肪として蓄積されにくいのです。

MCTは無味無臭のため、混ぜてもご飯の味や風味を損ないません。ただ、オイルだけだとベタベタし、パウダーだけだと粉っぽさが出てしまいます。

そこで、この二つを組み合わせることで、味も見た目もボリュームも、普通のご飯と同じように食べられるように工夫しました。

私たち管理栄養士が、腎臓病の食事指導でいちばん気をつけているのは、いかにエネルギーを確保するかということです。

慢性腎臓病の患者さんは、塩分、カリウム、たんぱく質などの制限が必要なうえ、食が細くなる高齢のかたが多いこともあり、低栄養になりがちです。

腎臓食では、筋肉などの体を作るのに不可欠な一方、腎臓に負担をかける老廃物のもとにもなるたんぱく質を、いかに上手に、効率的にとれるようにするかが重要なポイントです。

けれども、なかには、たんぱく質をとってはいけないと思い込んでいて、肉も魚も一切食べなくなってしまう人がいます。

たんぱく質を必要以上に減らしてしまい、エネルギー不足や低栄養に陥ると、体は筋肉を分解してエネルギーを確保しようとします。

すると、腎臓に負担をかける老廃物の量は減らないのに、筋肉がどんどんやせていきます。そのため、サルコペニア(筋肉減少)やフレイル(虚弱状態)を合併して、患者さんの状態が悪化していってしまうのです。

ですから、たんぱく質を制限することで不足するエネルギーを、炭水化物(糖質)や脂肪でしっかり補うことが必要になります。けれど糖質が過多になると、腎臓病に糖尿病を合併しているような場合は、疾病のコントロールが難しくなります。

その点、MCTは糖質を含まず、無理なくエネルギーの補給に役立つため、使い勝手がよいのです。

熊リハライスの基本レシピでは、プロテインパウダーを加えていますが、患者さんの状況に合わせてプロテイン抜きにすることもあります。このように患者さんのたんぱく質の摂取状況を常に確認しながら、取り入れられるのもメリットです。

どんどん元気になりリハビリもはかどる

腎臓病で入院される患者さんは、最初は食欲がなく、元気もありません。必要なのはわかっていても、どうしてもおかずまで食べる気になれず、ご飯をちょっと口にするのがせいいっぱいというかたがとても多いのです。

気力や体力を底上げするいちばん大切な時期に、熊リハライスが特に有効なことが、多くの事例でわかっています。

熊リハライスは、食べなれたいつものご飯と同じように食べられるのに、自然にエネルギーを補給することができます。

熊リハライスを食べているうちにだんだん顔色がよくなって元気になり、食欲も回復してきた患者さんをたくさん見てきました。体力がつけば、QOL(生活の質)の向上にもつながります。

熊リハライスで腎機能を維持しながら、エネルギーを確保して元気になれば、リハビリにも積極的に取り組めるようになってきます。

今は腎臓病でも、できる範囲でリハビリをして体力をつけることが、腎機能の維持に役立つといわれるようになってきました。

熊リハライスは、慢性腎臓病のかた以外にも、食欲不振で低栄養になりがちなかたや、嚥下障害があり少量しか食べられないかた、サルコペニアやフレイルを起こしているかたなどにもお勧めできます。

十分なエネルギーをとれるようになると、気力がわき、食欲も出て、食事療法やリハビリもうまく回るようになってきます。

MCTは料理の味の邪魔にならず、みそ汁やヨーグルトなどに混ぜることもできるので、普段の食卓に上手に取り入れてみてください。

熊リハパワーライスの作り方

画像: 熊リハ病院の【慢性腎臓病の食事療法】MCTオイル入り「熊リハパワーライス」の作り方

エネルギー …305kcal
たんぱく質 …5.8g
脂質…14.6g(MCT…13.1g)

【用意するもの】(1人分)
ⒶMCTオイル…大さじ1(12g)
 MCTパウダー…小さじ1と1/2(1.5g)
 プロテインパウダー(※1)…小さじ2(3g)
軟飯(※2)…茶わん1杯分(150g)

【作り方】
Ⓐをよく混ぜておく。
軟飯に①を加え、よく混ぜる。

※1)腎臓病の場合は、リン・カリウム含量を低く調整したプロテインがお勧め。たんぱく質制限の状況に合わせて、増減するとよい。
※2)米1に対し水2.5の割合で炊いた軟飯を基本に、好みで水分を加減する。

This article is a sponsored article by
''.