骨は、圧をかけると破骨細胞や骨芽細胞が動き出し、オステオカルシンという骨ホルモンを分泌します。骨トレなどの運動で骨に圧をかけると、骨が丈夫になるだけでなく、インスリンの分泌がよくなって血糖値が下がるのです。【解説】藤澤孝志郎(Dr.孝志郎のクリニック院長)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

藤澤孝志郎(ふじさわ・こうしろう)
Dr.孝志郎のクリニック院長。2004年、宮崎大学医学部卒業。07年、日本内科学会認定内科医取得。総合内科、ER、心臓血管外科の臨床経験を積み、現在に至る。医学教育の第一人者として、海外の医師を含め10万人以上の医学生を指導。著書に『世界一効率よく若返る!1日5秒 骨トレーニング!』ビジネス社)など。

A1c 7%未満を保てば三大合併症は予防できる

当院には、糖尿病の患者さんが多数来られますが、私はヘモグロビンA1cが7%台のかたには、基本的に薬を処方しません。運動と食事の指導で改善を目指しています。

運動と聞いて尻込みする人がいるかもしれませんが、私が勧めている骨トレーニング(骨トレ)は、簡単なものばかり。ほとんどの患者さんはこれを実践し、血糖値が下がっています。

まず、骨トレの効果を調べるために、3人の患者さんにご協力いただきました。60〜70代の男性1名、女性2名です。

いずれもヘモグロビンA1cが7%台で、薬の処方も食事指導もしていません。試していただいたのは、三つの骨トレ(やり方は下記参照)だけです。

これを5ヵ月続けたところ、皆さんヘモグロビンA1cが0.3〜0.5%下がりました。

現在、よく使われている糖尿病薬の一つ、DPP-4阻害薬を1錠飲み続けると、ヘモグロビンA1cが0.5%下がるといわれています。三つの骨トレだけで、それと遜色のない効果が得られるわけです。

骨トレーニングのやり方
私が患者さんに行っていただいたのは、次の骨トレです。

骨トレ
① 手のひら押し(5秒ずつ10回)

胸の前で両手の指を組み、手のひらを合わせて、全力で5秒間押し合うだけです。手、腕、肩の骨をしっかり刺激します。

画像1: ヘモグロビンA1cを下げる運動「骨トレ」のやり方とは?骨と血糖値の関係に注目!

ポイントは両ひじから手首までを床と水平にすること。手首が上がって腕が曲がると力が逃げてしまいます。

骨トレ
② ウミガメ体操(10回)

うつぶせになり、体の両わきに手をつきます。そして、上体を上げるのではなく、手で床をグッと10秒押します

画像2: ヘモグロビンA1cを下げる運動「骨トレ」のやり方とは?骨と血糖値の関係に注目!

そうすることで、上半身の骨全体が刺激を受けます。起床時や就寝時に布団の上で行うと、習慣化できます。

骨トレ
③ ウォーキング(3000歩)

かかとの骨でしっかり着地し、足指の骨で後ろにける。常に、下半身の骨を使うことを意識して歩きましょう。

骨トレは、このように簡単ですが、「骨を鍛えよう」と意識して行うことで、短時間でも高い効果が得られます。

簡単な運動でも、続ければ必ず効果が出ます。私の母は、この骨トレを1年間続けて、85歳相当だった骨密度が実年齢相当の60歳に改善しました。

運動でヘモグロビンA1cが下がった3名の患者さんは、その後、簡単な食事療法を行って、全員6%台になりました。

日本糖尿病学会は、2013年に「ヘモグロビンA1cを7%未満に維持できれば、細小血管障害を予防できる」という熊本宣言を発表し、世界中から注目されました。

細小血管障害とは、糖尿病の三大合併症を招く、毛細血管の障害です。それを防ぐための糖尿病治療の第一目標は、ヘモグロビンA1cを6%台に下げることなのです。

骨に圧をかけるとインスリンの分泌が促進

このように骨トレが糖尿病に効果があるのはなぜでしょう。

骨は日々生まれ変わっています。破骨細胞が骨を壊し、骨芽細胞がそこに新しく骨を作って、3〜5年で、全身の骨が生まれ変わります。

しかし、骨は圧をかけなければ、活性化されません。圧をかけて初めて、それに耐えうる強い骨を作るべく、骨の中に電気が生じ、破骨細胞や骨芽細胞が動き出すのです。

圧によって活性化された骨芽細胞は、オステオカルシンという骨ホルモンを分泌します。

このホルモンが、血糖値と深くかかわっているのです。

骨ホルモンは血流に乗って腸に届きます。腸には、インクレチンという物質を分泌する細胞(L細胞)があります。骨ホルモンはそのL細胞を刺激します。するとインクレチンの分泌が促され、それが膵臓に届くことで、インスリンの放出を促進するのです。

このように、骨トレなどの運動で骨に圧をかけると、骨が丈夫になるだけでなく、インスリンの分泌がよくなって血糖値が下がるのです。

昔から、糖尿病の人は骨密度が低く、骨折しやすいといわれていました。それは骨ホルモンが少なかったからで、近年になりようやく骨と血糖値の関係が解明されたのです。

血糖値が高い人は、一日中座りっぱなしでいるのがいちばんよくありません。どんどん骨が弱って、オステオカルシンが出なくなってきます。

ですから、毎日短時間でかまいません。骨トレを行いましょう。

画像: この記事は『壮快』2019年10月号に掲載されています。

この記事は『壮快』2019年10月号に掲載されています。

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