「モヤモヤ血管」。この異常な血管の正体は、もろくいびつな構造を持ち、炎症を起こして太く腫れた毛細血管です。さらに、周囲で過剰に増えた神経が血流によって刺激され、痛みを脳へ伝える信号が送られてしまうのです。つまり、モヤモヤ血管こそが「発痛血管」だということです。【解説】奥野祐次(オクノクリニック総院長)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

奥野祐次(おくの・ゆうじ)
オクノクリニック総院長。1981年、埼玉県出身。2006年、慶應大学医学部卒業。12年、同大学院修了。江戸川病院運動器カテーテルセンター長を経て、17年、オクノクリニック横浜センター南院を開院。現在は東京、神奈川、兵庫に計4院を展開するオクノクリニックの総院長を務める。『長引く痛みの原因は、血管が9割』(ワニブックス)などの著書がある。

モヤモヤと見える病的な血管が長引く痛みの元凶

首や肩に時折ビリッと鋭い痛みが走る。ジンジン、チクチクとした痛みやしびれが続いている。首や肩にこうした痛みが続いた場合、ほとんどの人は整形外科などを受診するでしょう。

そして、レントゲンやMRIなどの検査で、頸椎(首の部分の背骨)に神経を圧迫する椎間板ヘルニア(椎間板が飛び出す病気)などが見つかれば、それを治療するというのがこれまでの標準的な治療でした。

しかし、頸椎に変形が見つからず原因が突き止められなかったり、あるいは神経の圧迫を取り除く手術などの治療を受けたりした後でも、なかなか首や肩の痛みが治まらず、症状が長引くケースがよく見られます。

実は、こうしたしつこい痛みの真の原因は、骨や関節、筋肉ではなく、「血管」にあることが多いのです。

私たちの体には、生命を維持するのに欠かせない「正常な毛細血管」だけではなく、病気の原因になってしまうような「異常な毛細血管」ができることが最近分かってきました。

正常な毛細血管は、体の隅々にまで、網の目のように整然と配置され、全身に栄養や酸素を運ぶ役目を担っています。

一方、異常な毛細血管は、極細の糸がグチャグチャに絡まったようになっていて、酸素や栄養を運ぶという、本来の血管の役目を果たしていません。

この異常な血管の正体は、病的に新生したためにもろくいびつな構造を持ち、炎症を起こして太く腫れた毛細血管です。

正常な毛細血管は顕微鏡で観察しないと見えないほどの細さなのですが、異常な毛細血管は造影剤を入れて撮影すると、モヤモヤとした雲や霧のように写すことができます。画像でモヤモヤと視認できることから、こうした病的血管を私は「モヤモヤ血管」と呼んでいます。

さらなる問題は、モヤモヤ血管が新生するときに、一緒に余計な神経線維も増殖させることです。

モヤモヤ血管の周囲で過剰に増えた神経が、血流によって持続的に刺激され、痛みを脳へ伝える信号が常に送られてしまうのです。つまり、モヤモヤ血管こそが「発痛血管」だということです。

血流を止めるとモヤモヤ血管は退縮する

私がそのモヤモヤ血管を発見したのは、五十肩を併発していた乳がんの患者さんにカテーテル治療を行ったときのことでした。

私は、元々はがんの専門医です。たまたまがんのカテーテル治療の一環で、乳房の近くの肩の血管を撮影したところ、肩の一部にモヤモヤとした見慣れない血管が見つかり、その場所に炎症を起こしているのに気づいたのです。

そこで、カテーテルを使って薬剤を注入し、このモヤモヤ血管の血流を絶ってみたところ、たちまちこの患者さんの五十肩の痛みが解消しました。

その後、同じ方法で多くの患者さんの治療を続けた結果、首や肩、ひじ、腰、ひざなど全身の関節の痛みとモヤモヤ血管には、密接な関係があることが明らかになりました。

モヤモヤ血管は、先ほど述べた通り、病的に新たに作られた血管のため、正常な血管と比べてもろいという特徴があります。そのため、血流が止められると退縮して消えてしまうのです。

画像: モヤモヤと見えていた血管が消え痛みも解消

モヤモヤと見えていた血管が消え痛みも解消

私たちはこの特徴を利用して、現在、注射やカテーテルでモヤモヤ血管に薬剤を注入し、血流を止めてモヤモヤ血管をなくす治療を行っています。

これにより、整形外科などに長年通っても治らなかった患者さんたちのさまざまな痛みが解消され、大変喜ばれています。しかし、こうした治療を行っている病院は、まだまだ少ないのが現状です。

そこで、私は、指でモヤモヤ血管を圧迫して物理的に血流を止め、モヤモヤ血管を退縮させる「モヤモヤ血管つぶし」を患者さんに指導しています。

まずはモヤモヤ血管の場所を特定します。モヤモヤ血管のできている場所は、血管造影をすれば一目瞭然なのですが、圧迫すると強い痛みを感じるため、ご自分でも探すのはそれほど難しくないでしょう。

特に、首や肩に痛みが生じている場合、首の椎間関節や、頸椎の周囲にある筋膜や骨膜にモヤモヤ血管ができやすいことが研究によりわかっています。

後頭部、首の骨の両わき、肩辺りをたんねんに指で押して探ってみてください。

モヤモヤ血管の場所を圧迫する際には、必ず10秒間は、一定の力で押さえ続けるのがコツです。マッサージではなく、血流を止めるのが目的です。

力を途中でゆるめたり、10秒よりも短い時間でやめたりすると、血流を止めてモヤモヤ血管を退縮させるために必要な効果が得られません。

長引く首や肩の痛みに悩んでいる人は、ぜひモヤモヤ血管つぶしを実行して、モヤモヤ血管を撃退してください。

首の「モヤモヤ血管つぶし」のやり方

【モヤモヤ血管ができやすい場所】
乳様突起(耳の後ろにある骨の出っ張り)の下
首の骨のわき
首の付け根と肩の中間

画像: 【モヤモヤ血管とは】探し方・解消方法を紹介 首や肩のしつこい痛みの原因は「血管」にあることも!

◎1日3回を目安に行う。起きてすぐと、入浴後がお勧め。
◎首の横側や前側には、重要な太い血管などがあるため、押してはいけない。
モヤモヤ血管つぶしは、必ず後ろ首で痛点があるところだけに行うこと。

画像1: 首の「モヤモヤ血管つぶし」のやり方

指先で後頭部、首の骨のわき、首と肩の間を探りながら丹念に押してみて、強い痛みが感じられるところを見つける。モヤモヤ血管があるところが痛む。

画像2: 首の「モヤモヤ血管つぶし」のやり方

痛点を見つけたら、人さし指、中指、薬指をそろえて、強く10秒押し、モヤモヤ血管を圧迫する。押す強さは、つめの先が白くなるぐらいが目安。途中で力をゆるめたり、10秒より短い時間の圧迫だと、十分な効果が得られない場合がある。

【うまく圧迫できないときは、上体の重みを活用するとやりやすい。】

画像3: 首の「モヤモヤ血管つぶし」のやり方

いすに座り、痛点に人さし指、中指、薬指を当てる。
指は前方に押しながら、上体ごと頭を後ろに倒す。
背すじを伸ばしてあごを引いたまま、上体を後ろに倒すのがポイント。

画像: この記事は『安心』2019年10月号に掲載されています。

この記事は『安心』2019年10月号に掲載されています。

This article is a sponsored article by
''.