股関節痛を改善するエゴスキュー体操を3種紹介!痛みを生み出す原因は「筋肉」の不均衡

美容・ヘルスケア

エゴスキュー体操とは、アメリカの解剖生理学者、ピート・エゴスキュー氏が考案したエクササイズです。あまり使わなくなった筋肉に適度な刺激を与え、「筋肉を再教育」することでゆがみを正し、痛みを改善しようという体操です。【解説】大西誠一(おおにし整形外科医院院長)

解説者のプロフィール

大西誠一(おおにし・せいいち)
おおにし整形外科医院院長。1973年生まれ。奈良県立医科大学卒業。同大学附属病院にて研修医終了後、整形外科勤務医として複数の病院勤務を経て、2012年におおにし整形外科医院を開院。日本整形外科学会専門医、エゴスキューユニバーシティ認定姿勢スペシャリスト。

自分の腰痛が治り効果を確信

痛みが原因でやりたいことができずにいる人を助けたい──その思いで、私は整形外科医を志しました。そんな私が今、患者さんに自信を持ってお勧めしているのが、「エゴスキュー体操」です。

エゴスキュー体操とは、アメリカの解剖生理学者、ピート・エゴスキュー氏が考案したエクササイズです。股関節痛、腰痛、ひざ痛、首痛など、多くの痛みが改善する画期的なメソッドとして、今や世界中で多くの人から支持されています。

何を隠そう、私もエゴスキュー体操に助けられた一人です。

身長が180cmある私は、背中を丸めるクセがあり、医学生の頃から、よく「姿勢が悪い」と言われていました。また、大学4年生のとき、バスケットボール部の練習で腰を痛めて以来、ずっと慢性的な腰痛に悩まされてきました。

整形外科医になってからは、自分の勤務する病院にギックリ腰で入院したこともあります。診察で患者さんが寝ている診察台を動かすのも、腰が不安で1人ではできませんでした。

強い志を持って整形外科医になったにも関わらず、私は自分の腰痛すら根治させることができずにいたのです。

「なんとか痛みをぶり返さないようにする方法はないものか」と模索していたとき、耳にしたのがエゴスキュー体操の情報でした。

それまで何をやってもよくならなかった経験から、私は「体操でよくなるわけがない」と思いながらも、とにかく試してみることにしました。

すると、初めて個人セラピーを受けた日の帰り、何も意識しなくとも、背すじがスッと伸びているではありませんか。

それから2週間に1度くらいの頻度で個人セラピーを受け、私の腰痛はすっかりよくなりました。患者さんを乗せたまま診察台を動かしても、腰が痛くなることはありません。身長170cmの息子を、寝転んだ状態で足に乗せて持ち上げることもできるようになりました。

一時はもうスポーツなどできないと諦めていましたが、今では、ムエタイ(キックボクシング)を週に4回しています。こうしてエゴスキュー体操の効果を確信した私は、その後、トレーナーコースを受講し、患者さんにもエゴスキュー体操を指導するようになったのです。

あまり使わない筋肉を再教育する体操

エゴスキュー体操では、「よく使う筋肉」と「あまり使わない筋肉」との不均衡が、骨格をゆがませ、痛みを生み出すと考えています。

人の体には、600以上の筋肉が存在します。その中に「あまり使わない筋肉」があると、その筋肉は次第に衰え、動きが悪くなっていきます。すると、ほかの筋肉が代わりとなって働かなくてはならないため、負担がかかって痛みが生じるのです。

変形性股関節症などで軟骨がすり減るのも、動きの悪くなった筋肉が不自然に骨を引っぱり、骨格をゆがませるからです。骨格がゆがむと関節がずれます。その状態で動き続けると、軟骨にストレスがかかり、どんどん摩耗してすり減っていくのです。

現代人はデスクワークが中心で、体を動かす機会が少なくなっています。加えて、パソコンやスマートフォン、電子ゲームなどの影響で姿勢も悪くなっています。それが、動きの悪い筋肉を生み出す大きな要因といえるでしょう。

テニスや卓球、ゴルフなど、体の片側ばかりを使うスポーツも、偏った使い方によって、筋肉のアンバランスを生む原因になります。

そこで、あまり使わなくなった筋肉に適度な刺激を与え、筋肉を再教育」することでゆがみを正し、痛みを改善しようというのがエゴスキュー体操です。

写真はエゴスキュー体操の「足乗せゴロ寝」。どんな症状の人でもやっていただきたい基本のエクササイズ。寝ているだけの体操だが、関節が正しい位置へと導かれる

手術やむなしの患者の股関節痛が激減

エゴスキュー体操は、難しいポーズや動きは求めません。無理に激しい運動をすると、動かしたい筋肉とは別の筋肉が動いてしまって逆効果だからです。人間に本来備わっている関節の可動域の範囲内で動かすので、お年寄りや運動が苦手な人、体が硬い人でも、無理なく実践することができます。

ポイントは、ゆっくり動くこと、がんばり過ぎないこと、毎日コツコツ続けることです。1日を快適に過ごすためには、朝行うのがお勧めです。

別記事で、股関節痛に効く三つのエゴスキュー体操を紹介しましょう。

股関節は、多くの筋肉群によって支えられています。そのため、筋肉のアンバランスによって、ゆがみが生じやすい部分でもあります。

エゴスキュー体操を行って、あまり使っていない筋肉が動きだすと、体のゆがみが取れていきます。エゴスキュー体操がめざすのは、まっすぐ立ったとき、足首の関節、ひざ関節、股関節、肩関節が水平かつ垂直に並ぶ状態です。

この理想の姿勢に近づくように整えることができれば、股関節の痛みだけでなく、体のほかの痛み、さらには内臓の不調まで、全身を健康な状態に整えることが可能です。

《エゴスキュー体操の効果を高めるポイント》

変形性股関節症で私の医院に来られた50代の女性は、歩幅も狭く、日常生活に支障をきたすほどの痛みを訴えていました。末期の股関節変形が見られ、医学的には人工関節への手術適応と診断される状態でした。

しかし、エゴスキュー体操を勧めたところ、4ヵ月くらいで痛みが激減。歩幅も大きくなりました。今ではノルディックウオーキングができるようになり、このままいけばおそらく手術は必要ないと思います。

また、関東でエゴスキュー体操の体験会に参加した30代の女性は、股関節唇損傷(臼蓋の周囲を取り巻いている軟骨部分の損傷)による手術後の筋肉のこわばりが、たった1回の体操でらくになったと言います。

翌日には宿便が出て、腹部の冷えが解消。3日後には首と肩のこりも改善したそうです。その後、片頭痛、生理痛、体のだるさも感じなくなったというから驚きです。

一時的・部分的な痛み取りではなく、根本的に体を正すエゴスキュー体操を、みなさんもぜひお試しください。

この記事は『安心』2019年10月号に掲載されています。

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