頭皮では適量の皮脂と汗が混じりあうことで「皮脂膜」が作られ、デリケートな頭皮を保護してくれています。過度なシャンプーで皮脂膜を洗い流してしまうと、過剰に皮脂が分泌されることとなり、悪臭の原因となりますし、吹き出物、肌荒れ、過剰なフケも引き起こします。【解説】五味常明(五味クリニック院長・医学博士)
解説者のプロフィール
五味常明(ごみ・つねあき)
五味クリニック院長・医学博士。1949年、長野県生まれ。一橋大学商学部卒業後、昭和大学医学部に入学。昭和大学病院形成外科で形成外科学、多摩病院精神科で精神医学を学ぶ。外科での経験と、精神科で「自己臭妄想」の患者に接したことがきっかけで、「体臭の悩みを解決するには外科治療の技術のほかに、心の治療も必要である」と考えるようになる。その後、患者の心のケアを基本にしながら外科的手法を組み合わせる「心療外科」を新しい医学分野として提唱し、体臭・わきが・多汗治療の現場で実践。体臭研究の第一人者として治療と研究を行うほか、大手メーカーとの消臭関連商品開発や、テレビなどメディアでも活躍中。著書多数。
シャンプーの使い過ぎが臭いの原因になる
別記事:「塩シャンプー」のやり方→
市販のシャンプーを控えめにして、代わりに、自然塩を溶かしたぬるま湯で髪を洗う「塩シャンプー」。
実践してみたい反面、「シャンプーをやめたら、髪が臭ってしまうのでは」と心配なかたもいらっしゃるでしょう。
私は、ワキガをはじめ、あらゆる体臭の悩みを扱って三十余年の専門医ですが、結論から申しますと、市販のシャンプーをやめたからといって、髪や頭皮が臭い出すことはありません。
むしろ、シャンプーの使い過ぎのほうが、臭いを引き起こす原因となることもあるのです。
頭皮では、適量の皮脂と汗が混じりあうことで「皮脂膜」が作られ、この膜が、デリケートな頭皮を保護してくれています。
皮脂膜には、善玉、悪玉、さまざまな常在細菌が存在します。表皮ブドウ球菌などに代表される善玉菌は、悪玉菌の増加を防ぎ、頭皮環境を維持する役割を果たしています。
しかし、過度なシャンプーで全ての菌を流してしまうと、逆に、悪玉菌優位な状況に陥ってしまいます。悪玉菌の中には、頭皮の悪臭の原因菌もいます。
また、シャンプーが皮脂膜を洗い流してしまうと、なくなった皮脂を補うために、過剰に皮脂が分泌されることとなり、皮脂が毛根に詰まって酸化します。
酸化した皮脂は、やはり悪臭の原因となりますし、さらに、吹き出物、肌荒れ、過剰なフケも引き起こします。
ブラッシングと水洗いで臭いはほぼ落とせる
市販のシャンプーを使わなくても、髪や頭皮の汚れや悪臭は、意外と落とせるものです。ここからは、髪の臭いと頭皮の臭い、それぞれ順に、原因と対策をご説明しましょう。
まず髪の臭いについてです。
髪の臭いの主な原因は、タバコの煙や排ガスなど、空中に浮遊するにおい物質です。嫌な臭いを髪が吸収・吸着し、汗や皮脂、フケ、整髪料の臭いなどと混じり合うことで、ひどい臭いになります。
ただ、この臭い物質は、髪にくっついているわけではなく、髪の毛の間で浮遊しているか、あるいは、髪の傷んだ箇所の小さな凹凸にくっついているだけです。
ですから、こまめにブラッシングをして新鮮な空気を取り入れたり、1日の最後に水で洗い流したりするだけで、臭いは簡単になくなります。
次に、頭皮の臭いですが、こちらの原因は、前述のとおり、皮脂の悪玉菌や、酸化した余分な皮脂などです。皮脂膜を壊さずに、それらの臭いの原因をほどよく洗い流すのが、塩なのです。
塩に含まれるナトリウムイオンは、皮脂を適度に流し、また、消臭効果にも優れます。
※臭い以外に頭皮の炎症をともなう場合は、脂漏性皮膚炎の可能性もあるので、皮膚科の受診をお勧めします。
《塩で髪を洗うといい理由》
❶皮脂を適度に洗い流せる
❷消臭効果がある
「しばらくたつと髪がサラサラになった!」
塩シャンプーのコツは2点です。
❶予洗い
塩を頭につける前に、よくブラッシングし、ぬるま湯(30~40℃程度)で髪をよくすすぎます。塩いらずでも落ちる汚れを、先に落としておくと、水では落としきれない汚れを、塩で効率よく落とせます。
❷優しいマッサージ
塩をぬるま湯に溶かして作った塩水を頭皮にまとわせ、指の腹で優しくマッサージするのがお勧めです。
頭の臭いに悩む患者さんがクリニックにいらっしゃったときは、塩シャンプーをお勧めします。評判は上々です。
先日も、「最初はゴワゴワしたが、しばらく我慢していたら、臭いが消えたばかりか、髪がサラサラになった!」と伺いました。
シャンプーしないことに、頭皮が慣れれば、髪質は勝手によくなるのです。
いきなり、毎日塩だけで洗髪するのが不安なかたは、「シャンプーで二晩洗ったら、一晩だけは塩シャンプーにする」など、ゆるく試してみるのもお勧めです。
頭の臭いが気になるかたは、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。個人差はありますが、数週間で、臭いや髪質の変化を実感できるはずです。
別記事:「塩シャンプー」のやり方→