【スロージョギングとは】ウォーキングと効果に違いはある?92歳もできた「正しい走り方」を解説!

美容・ヘルスケア

運動には、「きつくなければ効果が出ない」という印象がありませんか?スロージョギングは正反対で、ニコニコと楽しくゆっくりのペースで走るのが特徴です。スロージョギングは生活習慣病の予防・改善ばかりか、認知症の予防にも効果が期待されています。【解説】讃井里佳子(日本スロージョギング協会アドバイザー)

解説者のプロフィール

讃井里佳子(さぬい・りかこ)
日本スロージョギング協会アドバイザー。1965年、福岡県生まれ。福岡大学体育学部(現・スポーツ科学部)で、「スロージョギング」の提唱者、故・田中宏暁教授の元で運動生理学を学ぶ。現在は一般社団法人日本スロージョギング協会アドバイザーとして、各地でスロージョギングの指導を行っている。

90度に曲がった腰がまっすぐ伸びてビックリ

スロージョギング®」は、小さな歩幅でテンポよく足を動かし、笑ったりおしゃべりしたりできるペースで走る方法です。

私がスロージョギングの原点である「ニコニコペースの運動理論」に出合ったのは26年前でした。そして、2009年6月に、NHKの『ためしてガッテン』という番組で、ニコニコペースのジョギングが「スロージョギング」という名称で紹介されて以来、その普及や啓発のために活動しています。

講習会などを全国各地で行うたび、「血圧が下がった」「血糖値が下がった」「やせた」など喜びの声をいただいています。

中でも印象的だったのは、長野の講習会でお会いした92歳の女性です。腰が90度ぐらいに曲がってしまっていたので、私も「参加されても大丈夫かな」と思いながら皆さんに指導をしていました。

それが、講習会の後半にはその女性の背すじが伸びて、「腰がまっすぐに伸びちゃった」と、ご本人も驚かれていました。このように、年齢の高い人でもスロージョギングは簡単に始められるのです。

また、高血圧や肥満対策にウォーキングなどを続けてきたのにまったく効果がなかった人が、スロージョギングを始めたとたんに血圧が下がった、やせることができたという報告を数多く受けています。

佐賀県の79歳の男性は、食事に気をつけて運動も心がけていたのですが、167cmの身長に対し体重が77.5kgという肥満体形だったそうです。それが、スロージョギングを始めたところ、みるみる69kgまで減って、血圧も20mmHg 近く下がったと喜んでいらっしゃいました。

ウォーキングよりもらくなのに効果は約2倍

さて、運動には、「きつくなければ効果が出ない」という印象がありませんか?スロージョギングは正反対で、ニコニコと楽しくゆっくりのペースで走るのが特徴です。

スロージョギングを提唱されたのは、福岡大学名誉教授の故・田中宏暁先生です。田中先生は50年来の研究で、「強度が低い、ニコニコペースの運動で生活習慣病の予防改善ができる」という仮説を立てられました。

そして、福岡大学医学部循環器内科の荒川規矩男先生とともに、「副作用のない理想的な高血圧治療法」として研究を重ねて指導されていたのです。

今や、スロージョギングは生活習慣病の予防・改善ばかりか、認知症の予防にも効果が期待されています。

しかし、「ジョギングはつらそうだ。ゆっくり走るより、速歩きの方がらくではないか」と思う人も少なくありません。

しかし、これは誤解です。運動時の脈拍が同じだと、ウォーキングよりもスロージョギングの方がらくだと感じられるのです。しかも、エネルギー消費量はジョギングの方が約2倍も多いことがわかっています。

スロージョギングは、ウォーキングとは違って両足が地面から離れる瞬間があるので、スロージョギング中は自然と腹筋や背筋が働きます。

さらに、太ももの前側の筋肉(大腿四頭筋)やお尻の筋肉(大殿筋)といった、体の中でも比較的大きな筋肉が使われることから、エネルギーの消費量が多くなるのです。

つまり、スロージョギングは、ウォーキングよりもらくなのに、効果が約2倍ということになります。

ひざなど関節への負担も少ない

また、スロージョギングは、ひざ関節や股関節といった関節への負担が少ないという利点もあります。

ウォーキングは生活の基本となる動きです。しかし、トレーニングとしてウオーキングを行っている方の中には、ひざを痛めた経験がある方も少なくありません。大股で歩くためにかかと着地になりがちで、そのせいでひざを痛めてしまうのです。

一方で、スロージョギングは足の指の付け根である「フォアフット」で着地します。フォアフットの着地は、ひざに負担がかかりにくいとされています。

さらに、かかと着地のジョギングに比べると、フォアフットはかかとへの衝撃が3分の1になります。つまり、かかとへの負担も抑えられます。

運動時間は、1日に30分間のスロージョギングで効果が出るとされています。ですが、1回に30分続けなくとも、1分のスロージョギングを30回行えば同じ効果が得られると、田中先生の研究では伝えています。

また、スポーツウエアや特別な運動靴を準備しなくても、普段通りの服装と履き慣れた靴で、いつでもどこでも気軽にスロージョギングはできます。先に紹介した92歳の女性の例を見ても、誰でも、すぐに始めることができるのです。

ただし、すでに関節痛などがある場合は、主治医と相談してから行ってください

私たちは日本各地でグループを作り、スロージョギングを楽しんでいます。読者の皆さんも、お友達と気軽にスロージョギングを試してみてください。

スロージョギングのやり方

「スローとはいっても、ジョギングは大変……」これは誤解です!始めてみたら「ウォーキングよりもらく!」と感じる人が多いのです。

運動が苦手でも、走ることなんて考えられないという人でも家の中ですぐ始められるのがスロージョギング。やればどんどん体が変わっていきます!

◎1分間で180歩のテンポが最適
スロージョギングというと、「全体の動作をゆっくりにして走る」と勘違いする人がいるので注意!歩幅は20~40cmと小さく、1分間に180歩(1秒で3歩)歩けるテンポ(180BPM)が最適。

◎まずは1日合計で30分を目標にする
1日の合計が30分になればいいので、始めたばかりのころやまとまった時間が取れないときは、1分×30回のように小分けにして走ってもよい。トイレに行くときなど、ほんのちょっとのところから始めてみよう!

◎口を開けて、呼吸は自然に
呼吸がらくにできればそれでOK!

◎あごは上げて、目線は遠く
走るときにあごを上げると、背すじが伸びて、足が上がりやすくなる

◎ニコニコペースで走る
疲れないスピード、おしゃべりしてもできるスピード、それがニコニコペース。最初は歩く速さ、時速4~5kmが目安。

◎足の指の付け根で着地
フォアフット(足の指の付け根)で着地をする。その場で軽くジャンプをしてみて、そのときに着地する足の部分で着地すると考えるとわかりやすい。かかとで着地するとひざや腰に負担がかかり、痛みの原因となるので×!

家で行うスロージョギングのやり方

どうしてもジョギングに抵抗がある人は、とりあえず家の中でやってみましょう!下記の方法でも、外で走るのと同じ効果があります。外で走れない雨の日などにもお勧めです。

スロージョギングと同じ要領で6歩進む。
3歩使ってターンする。
(1)と同様、スロージョギングで6歩進む。
3歩使ってターンする。
8の字を描くようにして、1~4をくり返す。
*これを1分間で20回ターンする。
1日30分以上行えると理想的。
1分×30回でもよい。

降圧効果は折り紙つき!利尿作用や血流改善効果で血圧を下げるスロージョギング

【解説】檜垣靖樹(ひがき・やすき)
福岡大学スポーツ科学部教授・福岡大学基盤研究機関身体活動研究所長。1990年、筑波大学大学院修了。同年、福岡大学体育学部助手として勤務後、スウェーデンヨーテボリ大学ウォーレンバーグ研究所研究員、ハーバード大学医学部ジョスリン糖尿病センターリサーチフェロー、佐賀大学医学部社会医学講座予防医学分野准教授等を経て、2010年4月より現職。研究分野はスポーツ科学、健康科学。

高血圧への効果は30年以上前に発表されている

「スロージョギング」のようなニコニコペースの運動で、高血圧が改善するという研究結果は、すでに30年以上も前の1985年に発表されています。福岡大学体育学部(当時)と医学部の共同研究で、幅広い年齢層の高血圧の患者さんに参加していただきました。

その後、高齢者に絞って(平均年齢75.5歳)、スロージョギングと同等の運動が血圧にどのように影響を与えるのかを調べたのが、下に掲載されているグラフの研究です。

被験者平均年齢75.5歳。高血圧の患者十数名がスロージョギングと同等の運動を実施した結果、3ヵ月後血圧が低下(出典:Motoyama M et al,Med Sci.Sports Exerc 1998 より改変)

運動前の最大血圧が140mmHg 前後なのは、症状が重く、すでに降圧剤で血圧をコントロールしている方が多いからです。それでも、最高血圧も最低血圧も運動したら下がり、運動を中断すると再上昇しました。

ニコニコペースの運動が、どのように血圧を下げるのかについては、以下の3点が考えられます。

3ヵ月で高い血圧が下がる

(1)血圧を上昇させるホルモンの分泌が抑えられる
体を活動の方向へ導く交感神経系のノルエピネフリンというホルモンの分泌が、運動で抑えられます。交感神経は血圧を上げる作用もありますから、ノルエピネフリンの分泌が抑えられると、血圧の安定につながります。

(2)利尿作用が促される
適度な運動を行うと、心臓から「ナトリウム利尿ペプチド」という利尿作用のあるホルモンが分泌されます。体の余分な水分が排泄されると、心臓が血液を強く押し出して体内に循環させる必要がなくなり、血圧が下がります。

(3)毛細血管の密度が増える
長期の運動で、筋肉の中の毛細血管の密度が増えることが分かっています。すると、全身に血液が速やかに流れやすくなって、高血圧が改善します。

研究論文では、3ヵ月ほど行った時点で血圧が下がっていたというデータがほとんどです。ただ、それ以前にも体調や体重の変化といった形で、効果は表れていると考えられます。

また、今年の5月に出された「高血圧治療ガイドライン」では、1週間で合計180分以上の運動が勧められています。

例えば、1日30分のスロージョギングを行って、1日休みの日があってもいいわけです。毎日がんばる必要もありません。ご自分のペースで、スロージョギングを取り入れてください。

この記事は『安心』2019年11月号に掲載されています。

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