血圧について、「上」は心臓がギュッと縮んでいるときの収縮期血圧を、そして「下」は縮んでいないときの拡張期血圧を指しています。実は「下」だけを下げる降圧薬はありません。ですから、青竹踏みで拡張期血圧が下がるのは朗報と言えるでしょう。【解説】水嶋丈雄(水嶋クリニック院長)
解説者のプロフィール
水嶋丈雄(みずしま・たけお)
水嶋クリニック院長。1955年、京都府生まれ。大阪医科大学卒業。西洋医学を学ぶかたわら、鍼灸治療と麻酔科の世界的権威である兵頭正義先生に指示し、東洋医学を学ぶ。その後、長野県厚生連佐久総合病院での勤務や中国北京中医学院、中日友好病院への留学を経て、98年に水嶋クリニックを開業。西洋医学をベースに東洋医学、鍼灸、食事療法、気功療法などを取り入れた治療を行っている。
最小血圧を下げる働きがある
「青竹踏み」は、古くから日本に伝わる健康法です。
私は著書の中で青竹踏みを紹介しているのですが、それを読んで実行してみた患者さんから「先生、青竹踏みで血圧が下がりました」「肩こりも治りました」と、診察室で報告を受けることも少なくありません。
患者さんたちのお話を総合すると、青竹踏みを行うと、拡張期血圧が10~15mmmmHgほど下がることが多いようです。
血圧については、よく「上が140で下が100」などと言います。このときの「上」は心臓がギュッと縮んでいるときの収縮期血圧を、そして「下」は縮んでいないときの拡張期血圧を指しています(*当記事内では、収縮期血圧を〈最大血圧〉、拡張期血圧を〈最小血圧〉と表記しています)。
実は、最小血圧だけを下げる降圧薬はありません。ですから、青竹踏みで最小血圧が下がるのは朗報と言えるでしょう。
血圧を上げる内臓の圧迫を正す
青竹踏みが血圧を下げるメカニズムについては、いくつか考えられます。
(1)足の裏が刺激されて姿勢がよくなり、臓器の圧迫が正される
私たちが立っているときに、姿勢のバランスを取っているのは足の裏です。足の裏には感覚受容器がたくさんあります。この受容器が働くことで、姿勢がまっすぐか、傾いていないかなどが分かるのです。いわば、足の裏は姿勢のセンサーの役割を果たしています。
ところが、加齢や運動不足のせいで、足の裏のセンサーがうまく働かなくなってしまいます。すると、姿勢が悪くなってしまい、内臓が圧迫されて血圧が上がることがあります。
青竹踏みは足の裏のセンサーの働きを回復させ、姿勢をよくして臓器の圧迫が正され、血圧を下げると考えられます。
(2)ふくらはぎに刺激を与えて血行をよくする
ふくらはぎは「第二の心臓」と呼ばれ、下半身の血液を心臓に戻すポンプの役割をしています。青竹踏みでふくらはぎに刺激が伝わって血流が促されると、血圧が下がります。
(3)土踏まずが刺激される
青竹踏みでは、足の中でも土踏まずが特に刺激されます。ここには、湧泉というツボがあります。湧泉は、生命エネルギーを泉のように湧き出させるツボだとされています。青竹踏みで湧泉が刺激されて体が若返れば、血圧も自然と正常化していきます。
(4)血圧に関係する臓器が、足の裏のゾーンを通じて刺激される
東洋医学には、足の裏は全身の内臓と対応する縮図である、という考え方があります。両足の土踏まずは、腎臓に対応しています。加えて右足には肝臓、左足には心臓と対応するゾーンがあります。
青竹踏みは、血圧のコントロールと深く関係するこれら三つの内臓のゾーンを刺激することができます。こうして、血圧が下がると推測できるのです。
もちろん、重度の高血圧は命に関わるので、病院で治療を受ける必要があります。ただ、こうした場合でも、青竹踏みを取り入れることで、体のバランスや内臓の状態が改善し、血圧が下がりやすくなる可能性が上がるでしょう。
血圧が高過ぎる人は落ち着いてから行う
高血圧対策としてならば、朝の時間帯に1回5分程度、青竹踏みを行うことをお勧めします。テレビを見ながら、あるいは家事をしながらなど、ちょっとしたときに行う習慣をつけるといいでしょう。
また、お風呂上がりに青竹踏みを行うと、全身がリラックスしてぐっすり眠れるようになるはずです。ただし、寝る直前に行うと、逆に目がさえてしまうので注意しましょう。
そして、最大血圧が200mmHgを超えるなど、血圧が高過ぎる人は、薬や治療である程度下がった時点で青竹踏みを取り入れたほうが安心です。
血圧などをコントロールしている自律神経には、興奮したときに優位になる交感神経と、リラックスしたときに優位になる副交感神経があります。
青竹踏みを行うと、土踏まずへの刺激で、交感神経が一度ぐっと活性化します。
その後に交感神経が抑制されると同時に、今度は副交感神経が優位になるというように、自律神経のバランスが波のように変化します。
交感神経が活性化するときに、血圧が一時的に上がる恐れがあります。そのため、血圧が高過ぎる人は、少し下がってから行うのがいいわけです。
また、足の裏に水虫や湿疹があるときは、青竹踏みによる刺激でかゆみをはじめとした症状が悪化することも考えられます。皮膚のトラブルが落ち着いてから青竹踏みを始めましょう。
青竹踏みは健康法としての歴史が古く、お金をかけずに簡単に取り入れられるので、私も多くの方にお勧めしています。高血圧対策に、ぜひお役立てください。
青竹踏みのやり方
【青竹踏みを行う際のポイント】
●5分ぐらいを目安に、自分のやりやすいペースで青竹踏みを行う。お勧めの時間帯は朝だが、自分の好きなときに行って構わない。
●やっている最中に、気持ちよさを伴う軽い痛みを感じる程度がちょうどよい。
●1日に何回でも行ってよい。
●水虫など足の裏にトラブルがある場合や、発熱しているときなどは、症状が治まってから行う。
●血圧が高すぎる人(200ミリが目安)は、薬や治療である程度血圧がコントロールできてから行う。
【用意するもの】青竹踏み
上の写真のタイプ以外にも、プラスチック製のもの、突起があるものなどさまざまな青竹踏みがあるので、好みのものを使うとよい。
白竹足踏