調査においては、山形県内の七つの市に在住している、40歳以上の男女約1万7000人を対象に、約8年間にわたり追跡を行いました。その結果、あまり笑う習慣がない人は、よく笑う人に比べて、心疾患を発症する確率が明らかに高いことが導き出されたのです。【解説】櫻田香(山形大学医学部看護学科基礎看護学講座教授)

解説者のプロフィール

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櫻田香(さくらだ・かおり)
山形大学医学部看護学科基礎看護学講座教授。山形大学医学部卒業。山形大学大学院医学系研究科修了。医学博士。山形大学医学部脳神経外科に入局し、脳神経外科准教授を経て、2016年から現職。「笑い」が健康や寿命に与える影響について研究中。

ほとんど笑わない人は死亡する確率が約2倍!

皆さんは、日ごろどれくらい笑っておられますか?

「毎日必ず笑っている」「たまになら笑うことくらいある」「この前、いつ笑ったのか思い出せない」など、さまざまだと思います。

私が所属している山形大学医学部では、体質や生活習慣が、どのような病気の原因になるのかを研究するため、長年、大規模な調査を実施しています。

その調査の目的の一つが、楽天的な性格で日ごろ楽しく暮らすこと、つまり笑う」頻度が高いことは、生活習慣病になんらかの影響を与えるのではないか、という仮説を証明することです。

調査においては、山形県内の七つの市に在住している、40歳以上の男女約1万7000人を対象に、約8年間にわたり追跡を行いました。これは、こうした調査のなかでも、対象者数や調査項目において、全国でも有数の規模で実施されたものだと自負しています。

笑う頻度について伺ったところ、ほぼ毎日笑う(36.4%)、週に1~5回程度笑う(45.7%)、月に1~3回程度笑う(14.5%)、ほとんど笑わない(3.3%)という結果が得られました。

その結果、あまり笑う習慣がない人は、よく笑う人に比べて、心疾患を発症する確率が明らかに高いことが導き出されたのです。

もう少し詳しく見ると、「ほとんど笑わない人は、よく笑う人に比べて、死亡する確率が約2倍高い」「たまにしか笑わない人は、よく笑う人に比べて心血管疾患を発症する確率が約1.6倍高い」ということが実証されたのです。

この分析結果を得る過程では、年齢、性別、血圧、糖尿病、飲酒・喫煙などの条件については、統計学的に必要なデータの補正を行っています。

つまり、心疾患を引き起こしやすい要因を抜きにして考えても、笑うという行為が、発症リスクを低くするのに役立つことがわかったのです。この論文は、日本疫学会の英文科学誌に公表するなど、幅広い評価を得ています。

笑いは食後血糖値の上昇も抑制する!

ここまで、「笑うこと」が心筋梗塞や脳卒中を防ぐうえで有効であると判明したとお話ししてきました。では、それはどうしてなのでしょうか。

私は、以下のようなポイントが奏功した結果ではないか、と分析しています。 

食後の血糖値が上がりにくくなる
血管の弾力が増す
免疫力が上がる

これらの複合的な要因によって、心血管疾患のリスクが下がったのでしょう。

笑いがもたらす健康効果については、筑波大学の村上和雄名誉教授が行った実験がよく知られています。

例えば、糖尿病の患者さんに食事をとってもらったあとで、大学教授の講義を聞かせた場合と、漫才を聞かせた場合とを比べたところ、後者のほうが明らかに食後血糖値の上昇が抑制されたというのです。

さらに、大笑いしたあとは、ガン細胞などを撃退する、ナチュラルキラー細胞が活性化することもわかっています。

つまり、笑いという行為は、細胞レベルで健康効果をもたらすといえるのです。

とはいえ、皆さんのなかには、「笑えば健康になるといわれても、そんな機会はあまりない」というかたもおられるでしょう。

私たちが行った調査でも、笑う頻度が少ないかたの傾向として、男性であること、喫煙と飲酒の習慣があること、あまり運動しないことに加え、独り暮らしであることがわかりました。

確かに、独り暮らしの男性は運動しない→外出しないので人と会話する機会が少ない→あまり笑わない、ということは十分推測されます。その反面、独り暮らしであっても女性の皆さんは、日ごろから近所づきあいがあって、会話をする機会が多いために笑う頻度が高いことでしょう。

今回の調査では、皆さんがどのように笑ったのかはわかっていません。日ごろ笑う習慣がないかたは、まずはテレビで落語や漫才を見て笑うだけでもけっこうです。そして、外へ出て誰かと会話をすれば、さらに笑う機会が増えるかもしれません。

副作用がいっさいない「笑い」という薬を、ぜひ心疾患の予防にお役立てください。

画像: 笑いは副作用のない薬!

笑いは副作用のない薬!

画像: この記事は『壮快』2019年12月号に掲載されています。

この記事は『壮快』2019年12月号に掲載されています。

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