心不全を防ぐためには「血管の機能を正常に保つこと」が大切。運動や半身浴で一酸化窒素(NO)を増やすとよい

美容・ヘルスケア

心不全を防ぐために大切なことは血管の機能を正常に保つこと。そのカギを握っているのが一酸化窒素(NO)です。NOの産生量を増やすには運動が有効であることがわかっていますが、思うように運動ができない人に、私がお勧めするのが半身浴による温熱療法です。【解説】尾山純一(加古川駅前クリニック院長・元佐賀大学医学部老年循環器病学教授)

解説者のプロフィール

尾山純一(おやま・じゅんいち)
加古川駅前クリニック院長・元佐賀大学医学部老年循環器病学教授。1992年、九州大学医学部卒業。98年、同大学大学院医学系研究科修了。九州大学病院別府先進医療センター慢性疾患治療部助教、佐賀大学医学部先端心臓病学講座教授、佐賀大学医学部老年循環器病学教授などを経て、2019年9月より現職。日本循環器学会専門医。日本温泉気候物理医学会温泉療法医。

半身浴による温熱療法が運動のかわりになる

高血圧による心肥大、狭心症、心筋梗塞、弁膜症、心筋症、先天性疾患など、心臓病のほとんどが、悪化すると最終的には心不全に陥ります。

心不全とは、心臓が機能不全を起こし、体に十分な血液を供給できなくなった状態です。

それを防ぐために大切なことは、血管の機能を正常に保つこと。そのカギを握っているのが、一酸化窒素(NO)です。

かつては、血管は単なる管のようなものだと考えられていました。しかし、1998年にノーベル医学・生理学賞を受賞したファーチゴット博士らによって、血管の収縮と拡張をくり返す働きは、血管内皮細胞から放出されているNOによって調整されていることが明らかになりました。

NOの産生量が低下すると、血管が十分に拡張せず血流が不足します。また、NOは3層からなる血管の最も内側の内膜から放出され、バリア機能も果たしています。それが不足すると、白血球やマクロファージが血管内皮に付着して、動脈硬化が進行するのです。

動脈硬化のある人、心機能が低下している人などは、NOの産生量が低下していると考えられます。また、それらの有力要因となる喫煙者、コレステロール値が高い人、糖尿病の人なども、NOの産生量は低下しているはずです。

ですから、それ以上悪化させないために、NOの産生量を増やして、血管の機能を正常に保つことが重要です。

NOの産生量を増やすには、運動が有効であることがわかっています。運動によって血流が増えると、血管内皮細胞が血管を開こうとして、NOを放出するからです。

とはいえ、年齢や体調、そのほかさまざまな事情で思うように運動ができない人もいるでしょう。そこで、運動のかわりになるものとして私がお勧めするのが、半身浴による温熱療法です。

息切れが改善して血管内皮機能も向上

私たちの研究グループでは、高血圧性心不全ラットを用いて、ケージの中に傾斜板を置き、ラットの体が半分くらいお湯につかる状態にして、毎日10分間半身浴をさせる実験を行いました。お湯の温度は40度、期間は4週間です。

実験の結果、温熱療法を行わないラットは心肥大が進むのに対し、半身浴をさせたラットでは心肥大が抑制されました。

さらに、ヒートショックプロテイン(熱などのストレスによって発現する細胞を守るたんぱく質)を調べたところ、それが増えていることも確認できました。ヒートショックプロテインは、NOの産生を刺激するとともに、心臓の保護に働くことがわかっています。

ラットの実験に加え、私たちは慢性心不全患者を対象とした研究も行っています。

心不全の重症度分類(NYHA)が、4段階のうち中等度の人、32名(70歳前後の男女)を対象とし、温泉で半身浴をする群と、シャワーを浴びる群に分けて、その効果を検討しました。

温泉で半身浴をする群には、1日10分程度、2週間(週5日以上)継続して、40度の温泉に半身浴をしてもらいました。

すると、半身浴をした群は深部体温が約1度上がり、NYHAが有意に低下。心臓の収縮力もよくなり、心臓の病態を示す数値(BNP値)も低下するという結果が得られました。

息切れを中心とした自覚症状も改善し、個々で見ると血管のかたさを示す脈波伝達速度も低下傾向が見られました。さらには、NO合成酵素を阻害する物質も低下していました。

総合すると、NOが増えたことにより、血管が拡張して血流が増加、血管内皮機能が向上したと考えられます。

実験では温泉に入浴してもらいましたが、家庭での半身浴でも、同じような効果が期待できるでしょう。

やり方は、38〜41度を目安に、自分が気持ちいいと感じる温度のお湯で、10分間半身浴をします。

心臓に負担をかけないよう、お湯につかるのはみぞおちの下までにしてください。寒いときは、肩にタオルなどをかけるとよいでしょう。

大切なことは、深部体温を上げることです。入浴後はコップ1杯程度の水を飲み、タオルや毛布をかけて保温しながら、30分ほど横になって休みます

この温熱療法は、慢性心不全に限らず、狭心症や心筋梗塞の人にもお勧めです。ただし、症状が安定しているとき、主治医の許可を得て行ってください

心房細動などの不整脈のある人は、特に注意が必要です。脈や血圧が落ち着いているときは問題ありませんが、体調に不安があるときは行わないでください。

お湯につかるのはみぞおちの下まで

この記事は『壮快』2019年12月号に掲載されています。

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