良質のたんぱく質はしっかりと摂取してほしいのですが、揚げる・焼く・炒めるといった高温での調理では、血管や組織などを老化させる元凶物質「AGE(終末糖化産物)」が発生します。そこで登場するのが「レモン」です。【解説】山岸昌一(昭和大学医学部内科学講座 糖尿病・代謝・内分泌内科学部門教授)

解説者のプロフィール

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山岸昌一(やまぎし・しょういち)
昭和大学医学部内科学講座 糖尿病・代謝・内分泌内科学部門教授。1963年新潟県生まれ。金沢大学医学部卒業。内科医。医学博士。金沢大学医学部講師、ニューヨーク、アルバート・アインシュタイン医科大学研究員、久留米大学医学部教授等を経て、現職。循環器・糖尿病の専門医として診療に携わる一方で、糖尿病と血管合併症の研究から老化の原因物質であるAGEに着目。AGEに関する最新データを発表するほか、最近はメディアを通じて「AGEを抑え、老化を防ぐ方法」について一般向けに啓蒙活動も行っている。

体の焦げが老化を招く

最近、「糖化」という言葉を、テレビなどで耳にする機会が増えたのではないでしょうか。

糖化とは、たんぱく質が糖と結びつき、変性して劣化することを言います。身近な例として、トーストが挙げられます。

フワフワで真っ白なパンを焼くと、こんがりとしたトーストになります。これが糖化です。食パンに含まれる糖とたんぱく質が、熱を加えられることで結びつき、硬く、黒くなるのです。

トーストはおいしいのですが、糖化した食品を食べ過ぎると、私たちの体には不都合なことが起こります。糖が結びついて劣化したたんぱく質である「AGE(終末糖化産物)」は、血管や組織などを老化させる元凶物質なのです。

例えば、皮膚にAGEがたまっていくと、トーストの黒い焦げと同じように色がくすみ、弾力を失います。血管については、血管壁に炎症が起こりやすくなって、動脈硬化のリスクが高まります。このように、皮膚や血管などの老化が進んでしまうのです。

糖化と似た言葉に「酸化」がありますが、これは酸素が物質に結びつくことです。糖化は「体の焦げ」、酸化は「体のさび」といわれ、どちらも老化を招きますが、糖化は酸化よりも上流に位置していると私は考えています。

細胞のたんぱく質などが酸化されたとしても、それを取り除いたり無毒化したりする「抗酸化」というしくみが体に備わっています。

しかし、抗酸化を促している酵素の主成分がたんぱく質なので、体内のたんぱく質が糖化すると、抗酸化の働きができません。このように、糖化が酸化を加速させるのです。

ですから、糖化を防ぐ、つまりAGEを体内にためないようにすることが、老化や病気を防ぐうえで非常に重要です。

高温調理でAGEが増えてしまう

体内にたまるAGEには、次の二つがあります。

内因性AGE
甘い物などを食べ過ぎると、処理しきれない糖が血液中に増えて、血糖値が高い状態になります。すると、糖が血液の成分のたんぱく質と結合してAGEができてしまいます。このようにして体内で作られるAGEを、内因性AGEといいます。

外因性AGE
食べ物にもAGEは含まれていて、その約7%が体内に吸収されます。これが「外因性AGE」です。私たちの体に存在するAGEの約3分の1が、外因性AGEだといわれています。

AGEの量は調理法で左右されます。例えば、トーストでも、低温だと焦げ目がつきません。これは、AGEがあまり発生していないということです。一方、揚げる・焼く・炒めるといった高温での調理では、AGEが発生してしまいます。

食品に含まれるAGEを数値化したものを、私は「exAGE」と名付けました。さまざまな料理でexAGEを算出すると、例えば水ギョウザは6個で1625exAGEですが、焼きギョウザでは4190exAGEとなります。

健康を守り、老化を防ぐためには、1日で15000exAGEを超えないように調整することをお勧めしています。

だからといって、揚げ物や焼いたお肉を食べるなというわけではありません。食事は日々の楽しみですし、筋肉を維持するためにも、高齢の方には肉をはじめとした良質のたんぱく質をしっかりと摂取してほしいものです。

糖とたんぱく質の結合をレモンが防ぐ

そこで登場するのが「レモン」です。

加熱する前に食材をレモン汁に20~30分間漬けると、exAGEの発生を40~60%も抑えることができます。

例えば、とんかつを作るときには、バットなどに肉を置き、ひたひたに肉が浸るまでレモン汁を入れます。生のレモン果汁と市販の瓶入りのレモン果汁、どちらでも構いません。

画像: 糖とたんぱく質の結合をレモンが防ぐ

こうして肉を下処理してから調理すると、上の表のようにAGEの発生を大幅に抑えることができます。とんかつの場合、通常の調理法に比べて約60%もexAGEの値が減少します。

AGEを減らせる理由は、レモンに含まれているクエン酸が、糖とたんぱく質の結合を抑えるからです。

味の面では、肉をさっぱりとおいしく食べられるようになります。酢酸が含まれている酢でもレモン汁と同様の効果がありますが、香りなどの点から、レモン汁がお勧めです。

さらに、食事の一品としてレモン汁を使ったサラダや酢の物などを加えると、腸からの糖の吸収が遅くなり、血糖値の上昇が穏やかになって内因性AGEの発生も抑えられます。

レモン汁を日々の食事に上手に取り入れ、糖化と老化を防ぎましょう。

画像: この記事は『安心』2019年12月号に掲載されています。

この記事は『安心』2019年12月号に掲載されています。

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