頻尿・尿もれで悩んで医療機関に行くと、「過活動膀胱」「間質性膀胱炎」や「慢性膀胱炎」「前立腺肥大症」「神経因性膀胱」のようにさまざまな病名が告げられますが、実は、これら全ての根本原因が「膀胱の出口が厚く硬くなっていること」なのです。【解説】高橋知宏(高橋クリニック院長)

解説者のプロフィール

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高橋知宏(たかはし・ともひろ)
高橋クリニック院長。膀胱の出口に着目した独特の治療を求め、全国から排尿障害に悩む患者が年間約1000人訪れる。著書『本当はこわい排尿障害(集英社新書)』発売中。

800万人以上が排尿障害

尿を出したり、ためたりできなくなり、頻尿・尿もれなどさまざまな悩みを引き起こす「排尿障害」。この病気は、40歳以上の日本人800万人以上が悩まされているといわれます。

頻尿・尿もれは、なぜこんなにも多くの中高年者を悩ませているのでしょうか。

「年のせいだからしかたがない」と諦めている人も多いですが、頻尿・尿もれが治りにくい真の理由は、加齢や体質以外の大きな原因があるのに、それが無視されているからです。

その原因とは、「膀胱の出口が厚く硬くなって十分開かないこと」です。

「そんな話は初めて聞いた」という人が多いと思います。一般に、頻尿・尿もれで悩んで医療機関に行くと、さまざまな病名が告げられます(ここでは、中枢神経やホルモン系などの明らかな異常は除きます)。

中高年男性なら、前立腺が肥大していれば「前立腺肥大症」、肥大していなければ「慢性前立腺炎」、あるいは膀胱に力がなくなる「神経因性膀胱」などといわれることが多いでしょう。

女性の頻尿は、膀胱が過敏になる「過活動膀胱」、膀胱に原因不明の炎症が起こる「間質性膀胱炎」や「慢性膀胱炎」と診断されることが多いものです。

女性の尿もれは、尿道を支える筋肉(骨盤底筋)が弱まって起こる「腹圧性尿失禁」や過活動膀胱に伴う「切迫性尿失禁」と診断される場合が多いです。
頻尿・尿もれの原因には、このように多数の病名がつきますが、実は、これら全ての根本原因が「膀胱の出口が厚く硬くなっていること」なのです。

この症状に、正式な医学的名称はまだありません。ここでは「膀胱出口の肥厚」と呼ぶことにして話を進めましょう。

膀胱出口が常に筋トレをしている状態

私が、膀胱出口の肥厚に注目し始めたのは、ちょっとしたきっかけからでした。

二十数年前、たまたまテレビで、3Dエコー(体内の様子が立体的に見える腹部超音波検査)を知りました。それを見て、膀胱の出口が3Dエコーでどう見えるか知りたくなり、高価な機械を買って使い始めたのです。

すると、排尿障害のない私の膀胱出口は、1つ目小僧のように穴があいたシンプルな画像でした。ところが、頻尿・尿もれに悩む患者さんたちの膀胱出口は、まったく違っていました。

鳥のくちばしのようにとがっていたり、猫があくびをしているような形だったり、エリマキトカゲそっくりだったり。とにかく複雑に変形しています。

このことから、排尿障害の真因は膀胱出口にあるのではないかと考え始め、研究を続けた結果、膀胱出口の肥厚が原因であることを突き止めたのです。

■健康な膀胱と排尿障害の膀胱3D画像比較

画像: 健康な膀胱出口

健康な膀胱出口

画像: 肥厚のある膀胱出口

肥厚のある膀胱出口

もともと、膀胱の出口は肛門に比べて開きにくく、筋肉の微妙なバランスが取れて、初めてスムーズに開きます。

この微妙なバランスが乱れた状態で、排尿をくり返していると、膀胱出口の筋肉が、厚くなってきます。

膀胱出口の筋肉ががんばって、常に筋トレをしている状態になり、いわば「マッチョ」になるのです。

こうなった膀胱出口は、過敏で、些細な刺激でも尿意が起きて頻尿になります。

過活動膀胱、切迫性尿失禁、間質性膀胱炎などはこの膀胱出口の過敏によって起こっています。尿が出にくくて圧がかかるため、膀胱の下にある骨盤底筋が下がり、もれやすくなるのが腹圧性尿失禁です。

同じく尿が出にくいので、膀胱の下にある前立腺が圧迫され、対抗するために前立腺が肥厚するのが前立腺肥大症です。

一般には、前立腺が肥大するから排尿障害が起こるとされています。しかし実は逆で、膀胱出口の肥厚による排尿障害があるから前立腺が肥大するのです。前立腺を削る手術をしても、排尿障害が治らない場合が多いのはこのためです。

このように、さまざまな病名になっていても、頻尿・尿もれの真因は膀胱出口の肥厚です。

当院では、この真因を除くため、患者さんたちに生活指導を行うとともに、膀胱の出口をゆるめる薬を使ったり、膀胱出口の肥厚部分をレーザーメスで削って正常な厚さにする手術を行ったりしています。

トイレでおしっこを見てチェック!

膀胱出口の肥厚の程度は、排尿時のおしっこを見てもチェックできます。

出る尿の線が二すじに分かれたり、飛び散ったりしていたら、肥厚の程度が強い証拠です。

これは「尿線分裂」と呼ばれる症状で、男性はひと目でわかりますが、女性の場合、和式のトイレで排尿すると、尿が飛び散って前を汚しやすくなるという特徴があります。

ホースから出る水は、普通ならひとすじです。しかし、ホースをつまむと、二すじに分かれたり、細かいいくつものすじに分かれて勢いよく出たりします。これと同じ原理で起きているのが尿線分裂で、膀胱出口の肥厚が強いことを意味しています。

画像: この記事は『安心』2019年12月号に掲載されています。

この記事は『安心』2019年12月号に掲載されています。

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