【2020年5月1日一部更新】世界中で感染拡大を続ける新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、まだ未知の点が多く、人々を不安にさせています。しかし、わかってきたこともあります。正しく知ることで正しい備えができ、感染のリスクを下げることにつながるはずです。ここでは、現在の日本国内の感染者数について、厚生労働省・各都道府県・保健所の電話相談窓口について記載しています。なお、本稿は『新型コロナウイルス肺炎、インフルから身を守れ!』(マキノ出版)から一部を抜粋・加筆して掲載しています。
解説者のプロフィール
藤田紘一郎(ふじた・こういちろう)
東京医科歯科大学名誉教授。医学博士。専門は感染症学、免疫学、アレルギー学。東京医科歯科大学医学部卒業。東京大学医学系大学院修了。金沢医科大学教授、長崎大学医学部教授、東京医科歯科大学大学院教授を歴任。長年にわたり腸内細菌の研究に取り組む。著書は『元気なままで長生きしたければ「腸にいいこと」だけをやりなさい!』 (扶桑社文庫)など多数。
▼専門分野と研究論文(CiNii)
▼藤田紘一郎(Wikipedia)
2020年5月1日現在、14,088例を確認
劇的スピードで世界に拡大
2019年、中国湖北省武漢市で原因不明の肺炎患者27人の存在が公表されました。その後、新型コロナウイルスと認定された、正式名称「COVID-19」による感染は劇的スピードで、中国全土へ、そして世界へと広がり始めました。
連日、新型肺炎関連のニュースが報道されていますが、日本国内で感染者が増えつつある現状に不安を覚えている方も多いでしょう。とりわけ不安をかきたてているのが、おそらく次の三点でしょう。
(1)増え続ける感染者
中国では患者数が7万人を超え、死者も2000人を超えています。
一方、日本では、横浜港沖に停泊する大型クルーズ船ダイヤモンドプリンセス号で集団感染が起こっただけではなく、国内の各地で感染者が次々に報じられ始めました。
現在の国内の感染者数について(5月1日更新)
日本国内の状況について、厚生労働省は、「4月30日12時時点、国内で今般の新型コロナウイルスに関連した感染症の感染者は14,088例となりました。内訳は、患者8,515例、無症状病原体保有者1,011例、陽性確定例(症状有無確認中)4,562例となります。国内の死亡者は415名、国内での退院者は3,466名となりました。」と発表しています。
また、厚生労働省では、これらの国内の発生状況から「現在の状況と考え方」について、以下のように発表しています。
(2020年4月6日現在)
新型コロナウイルス感染症については、これまで水際での対策、まん延防止、医療の提供等を講じてきていますが、国内においては、すでに感染経路の不明な患者の増加している地域が散発的に発生しており、引き続き、持ちこたえているものの、一部の地域で感染拡大が見られ、今後、地域において、感染源が分からない患者数が継続的に増加し、こうした地域が全国に拡大すれば、どこかの地域を発端として、爆発的な感染拡大を伴う大規模な流行につながりかねない状況にあります。さらに、世界的に患者数と死亡者数の急激な増加が見られ、国内で発見される輸入症例も増加しています。
現時点では、国内では、未だ大規模なまん延が認められる地域があるわけではありませんが、積極的疫学調査等のまん延防止策により、各地域において感染経路の不明な患者やクラスター(患者間の関連が認められた集団)の発生を封じ込めることが、いわゆるオーバーシュートと呼ばれる爆発的な感染拡大の発生を防止し、感染者、重傷者及び死亡者の発生を最小限に食い止めるためには重要となります。
また、必要に応じ、外出自粛の要請等の接触機会の低減を組み合わせて実施することにより、感染拡大の速度を可能な限り抑制することが、クラスターの発生の封じ込めを図るためにも、また、医療提供体制を崩壊させないためにも、重要です。あわせて、今後、国内で感染者数が急増した場合に備え、重症者等への対応を中心とした医療提供体制等の必要な体制を整えるよう準備することも必要です。
新型コロナウイルス感染症をめぐる状況を的確に把握し、国や地方自治体、医療関係者、専門家、事業者を含む国民の皆さまと一丸となって、新型コロナウイルス感染症対策を更に進めていく必要があります。
都道府県別の患者報告数(2020年5月1日更新)
厚生労働省が発表している、国内の発生状況は以下の通り。
※出典=厚生労働省(国内事例における都道府県別の患者報告数)
○都道府県別の患者報告数(2020年4月29日時点)
埼玉県 843
千葉県 806
東京都 4120
神奈川県 1002
大阪府 1599
兵庫県 642
福岡県 639
北海道 726
茨城県 162
石川県 250
岐阜県 146
愛知県 486
京都府 316
青森県 26
岩手県 0
宮城県 88
秋田県 16
山形県 68
福島県 72
栃木県 54
群馬県 146
新潟県 75
富山県 190
福井県 122
山梨県 52
長野県 66
静岡県 68
三重県 45
滋賀県 96
奈良県 82
和歌山県 60
鳥取県 3
島根県 23
岡山県 23
広島県 153
山口県 32
徳島県 5
香川県 28
愛媛県 47
高知県 74
佐賀県 38
長崎県 17
熊本県 47
大分県 60
宮崎県 17
鹿児島県 10
沖縄県 141
その他 148
総計 13929
※退院した者のうち1,393名、死亡者のうち127名は、個々の陽性者との突合作業中のため、本表には含めていない。※その他は、長崎県のクルーズ船における陽性者数。※東京都の「うち現在は入院等」の数値が多いのは、症状確認中の者が多く含まれているため。なお、東京都のHPによると、入院数2,718人、退院(療養期間経過を含む)数1,271人、死亡数117人となっている(4月29日19:30時点)。
(2)わからない感染ルート
新型肺炎の感染は、空気感染はなく、飛沫感染や接触感染によるとされています。しかし気になるのは、無症状の感染者からの感染の可能性が指摘されている点です。無症状の感染者は、当然、チェックをすり抜けてしまいます。その無症状感染者が感染を広げているとすれば、囲い込みによって感染を止められません。
すでに感染経路を追跡できない患者さんが複数見つかっているところから、今後、誰からもらったかわからない「市中感染」が増えていくと予想されます。
(3)治療薬もワクチンもない
新型のウイルスですから、治療法も確立しておらず、ワクチンもまだできていません。
冷静に対応して予防の徹底を
一方で、次のような見方もできます。
(1)日本には新型インフルエンザを封じ込めた実績がある
2009年の新型インフルエンザの世界的な大流行の際、各国の死亡率を比べると、日本はダントツで死者率が低かったのです。日本の対策が功を奏したからでした。2月17日、厚生労働省が新たな受診・相談の目安を発表。検査や診療体制の強化など新たな対策が始まりつつあります。
(2)感染力・致死率ともに、それほど高くない
新型コロナウイルスの感染力自体は、今のところ、インフルエンザと同程度か、やや上と考えられています。致死率もそれほど高くないことがわかってきています。現在まで、遺伝子変異も報告されていません。
(3)対症療法で大多数が回復
治療法やワクチンは開発中ですが、対症療法によって、多くの患者さんがよくなっています。8割の方が軽症ですむというデータも出ています。重症化しやすい方たちの傾向もわかってきました。
(4)感染症予防の徹底が有効
朗報は、インフルエンザの予防策として推奨される手洗い、セキエチケット、消毒などが、新型コロナウイルスの対策としても役立つということです。
ですから、新型コロナウイルスに対して、パニックになることなく、冷静に対応し、基本的な予防法を徹底することが重要です。それが、感染リスクを遠ざけるいちばんの対策となるはずです。
新型コロナウイルス肺炎の最新情報はここ!
新型コロナウイルスについて必要な知識が一通りわかる
首相官邸
新型コロナウイルスに関連した感染症対策情報
首相官邸HP内に開設された「新型コロナウイルスに関連した感染症対策情報」ページでは、「新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策」から「新型コロナウイルス感染症ってどんな病気?」「一人ひとりができる新型コロナウイルス感染症対策は?」「各都道府県発表のお知らせ・相談窓口」といった形で、今、国民に必要な情報がわかりやすくまとめられている。
国内の正確な感染情報を手に入れるならココ
厚生労働省
新型コロナウイルスに関する最新かつ正確な情報が手に入る。国内の発生状況や厚労省の対応、さらには感染した患者一人ひとりに関する詳細な行動履歴などもわかるので、不確かな情報に踊らされることなく、まずは自分の目で確認しよう。感染症の疑いがある場合の相談・受診の目安や、丁寧なQ&Aも用意されている。
新型コロナウイルス感染症についてのよくあるお問い合わせ
新型コロナウイルス感染症(よくあるお問い合わせ)について紹介しています。
www.mhlw.go.jp
新型コロナウイルスについて疫学的な見地から情報を提供
NIID 国立感染症研究所
国立感染症研究所は通称NIID(National Institute of Infectious Diseases)と呼ばれ、コロナウイルスによる症状、予防法や流行への対策、ワクチン開発の展望などについて、国内最高峰の知見を持つ。直近でも、患者のサンプルからウイルスそのものを分離し、培養することに成功。分離したウイルスを使い、より短時間で検出できる検査方法の開発を進めている。
コロナウイルスの世界の拡散状況をリアルタイムで確認
ジョンズ・ホプキンス大学システム科学工学センター
2019-nCOV Global Cases by Jhon Hopkins CSSE
コロナウイルスの世界の感染者数、死亡者数、回復者数、さらには感染が確認された場所や事例をリアルタイムで知ることができる。画面には、複数の数値とグラフが表示されており、それらをクリックすると、拡大して詳細なデータを見ることができる。拡散する一方のコロナウイルスの状況を知るのは恐怖だが、全体像が視覚的にわかるので、とても便利だ。
海外に渡航・滞在する人は必ずチェックしておきたい
外務省
海外安全ホームページ
海外に渡航・滞在される人が自分自身で安全を確保するために必要な情報を公開。サイト上の世界地図から渡航先をクリックすると、そのエリアにおける注意喚起情報を知ることができる。新型コロナウイルスの感染症危険情報については、別ページが用意されており、「スポット情報・広域情報」「感染症危険情報」「現地大使館・領事館からの安全情報」などが入手できる。
電話相談窓口
●厚生労働省の電話相談窓口
電話番号:0120-565653
受付時間:9時00分~21時00分(土日・祝日も対応)
●都道府県・保健所等による電話相談窓口
なお、本稿は2020年2月19日時点の情報であり、2020年2月29日発売の『新型コロナウイルス肺炎、インフルから身を守れ!』(マキノ出版)から一部を抜粋・加筆して掲載しています。詳細は下記のリンクよりご覧ください。