【新型コロナ】なぜ新型って言うの?インフルエンザとの違いは?潜伏期間や致死率、症状や感染源を比較

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実は、コロナウイルス自体は珍しいものではありません。これまで、人に感染するコロナウイルスは6種類知られています。いわゆるカゼの10~15%が、4種のコロナウイルスによるもの。残りの2種は、もともと動物に感染していたコロナウイルスが変異して人に感染するようになったもの。「重症急性呼吸器症候群(SARS)」と「中東呼吸器症候群(MERS)」です。新型コロナウイルスは、これらに続く、ヒトに感染することが確認された7つ目のコロナウイルスということになります。本稿では、インフルエンザウイルスとの違い、潜伏期間や致死率の違いを比較しています。参考にしてく浅い。

解説者のプロフィール

藤田紘一郎(ふじた・こういちろう)

東京医科歯科大学名誉教授。医学博士。専門は感染症学、免疫学、アレルギー学。東京医科歯科大学医学部卒業。東京大学医学系大学院修了。金沢医科大学教授、長崎大学医学部教授、東京医科歯科大学大学院教授を歴任。長年にわたり腸内細菌の研究に取り組む。著書は『元気なままで長生きしたければ「腸にいいこと」だけをやりなさい!』 (扶桑社文庫)など多数。
▼専門分野と研究論文(CiNii)
▼藤田紘一郎(Wikipedia)

そもそも「コロナ」ってどういう意味? なぜ「新型」なの?

「コロナウイルス」の名称「コロナ」について、Wikipediaでは、ラテン語の「corona」(コロナ)、そしてギリシャ語の「王冠」または「光冠」(丸い光の輪)、花冠を意味する「κορώνη (korṓnē コロネ)に由来するという記述があります。

そもそも、コロナウイルス自体は珍しいものではありません。これまで、人に感染するコロナウイルスは6種類知られています。

このうちの四つは、私たちが秋から春にかけて流行るカゼの原因ウイルスです。カゼの10~15%が、4種のコロナウイルスによるものなのです。私たちのうちの、ほとんどの人がコロナウイルスにかかっています。その主症状は、セキやのど痛などで、比較的軽いものです。

残りの2種は、もともと動物に感染していたコロナウイルスが変異して人に感染するようになったもので、人に感染すると、深刻な呼吸器疾患を引き起こします。2002年に中国で流行した「重症急性呼吸器症候群(SARS)」と、2012年にサウジアラビアで流行した「中東呼吸器症候群(MERS)」がそれです。

SARSは、コウモリからヒトへとうつり、8069人が感染、このうち775人が死亡しました。MERSは、ヒトコブラクダからヒトへとうつり、これまでに2494人が感染、858人が死亡しています。
新型コロナウイルスは、これらに続く、ヒトに感染することが確認された7つ目のコロナウイルスということになります。

致命的ではないが十分な備えを

では、新型コロナウイルスは、どれくらい危険なウイルスなのでしょうか。
その際の一つの目安となるのが、致死率です。致死率とは、全感染者のうち、亡くなられたのが何人かを示す数字です。

エボラ出血熱の致死率が50%前後、MERSが約34%、SARSが約10%、これらに準じるような数値へと近づいていくと、そのウイルスの病原性は強いと考えられます。

中国で新型コロナウイルスへの感染が確認された4万4500人のデータに基づいて、WHOは2月18日、新型コロナウイルスによる致死率は約2%で、「SARSや、MERSほど致命的ではない」との見解を示しました。

感染の中心となっている湖北省の致死率は2.9%と平均よりやや高めですが、湖北省を除いた中国国内の致死率は、0.4%にとどまっているそうです。
日本における致死率は、中国より低くなると考えられ、新型コロナウイルスには、強い病原性はないといってよさそうです。

もちろん、わが国でインフルエンザによって亡くなる人が毎年1万人もいるわけですから、インフルエンザと同様に、この新型肺炎に対しても、十分な備えをしておく必要があります。

最初は軽症でカゼと区別がつかない場合も

WHOによれば、現時点の潜伏期間は1~12.5日(多くは5〜6日)とされています。
発症時に現れる症状としては、熱、セキ、のどの痛み、強いだるさを訴える人が多いようです。しかし、これは一般的な肺炎の臨床症状と大きく変わりません。カゼと区別がつかないといってもよいでしょう。

発症してから入院し、重症化するまでの典型的な経過についてもわかってきています。
発症から、しばらくは、症状は軽く、発症から1週間(この間続けて発熱が続くことが一つの要件となっている)くらいで症状が悪くなり入院。呼吸苦などの症状が出始め、さらに悪化していくパターンが見られるとのことです。

国内でも、新型肺炎による死者や重症患者が見られますが、WHOによれば、感染者の81%は軽症です。重い肺炎や呼吸困難などの重症が14%、命にかかわる重篤な症状が5%です。
もし、熱が下がらない、セキや倦怠感が続く、息苦しいなどの症状が続く場合には、厚生労働省が2月17日発表した、新たな「相談・受診の目安」を参考に、近くの保健所や医療機関に相談しましょう。高齢者や持病のある人などを重症化させないための対策が重要です。

どうやって感染する?濃厚接触とは?感染力は?感染の特徴は?

感染経路は二つで飛沫感染と接触感染

新型コロナウイルスがヒトからヒトへうつる感染経路には、飛沫感染と接触感染の二つのルートが考えられています。

飛沫とは、くしゃみやセキで飛んでいくしぶきのことで、飛沫には感染者のウイルスが含まれています。このしぶきを吸い込んで感染が起こるのが、飛沫感染です。満員電車など近距離で接する機会の多い場所で発生しやすくなります。

感染者が自分の口や鼻を触ったり、セキを手で受けたりすると手にウイルスが付着します。その手で触った物が感染源となります。感染源に触れた人が、同じ手で自身の口や鼻を触ることで起こるのが、接触感染です。主な感染源としては、電車やバスのつり革、ドアノブ、電源のスイッチなどがあります。

ウイルスは、主に口や鼻の粘膜から体内に侵入します。ときに、目の粘膜からも入ることがありますから、目を汚れた手でこすらないようにしたほうがよいでしょう。
新型コロナウイルスについては、今のところ空気感染は認められていません。このため、道端ですれ違ったり短いあいさつをしたりする程度では、感染は起こりにくいと考えられます。

感染の予防策をしないで、2m以内の近距離で30分以上接触したり会話したりした場合を濃厚接触という。

では、濃厚接触とはどういうものでしょうか。濃厚接触は、必要な予防策なしに感染者に手で触れたり、対面で会話することが可能な距離(飛沫の飛ぶ目安である2m以内)で感染者と接触したりした場合と考えてください。

厚生労働省は、濃厚接触の例として、
(1)同居する、または車や航空機なども含め長時間一緒にいる、
(2)適切な防護をせずに医療行為や介護をする、
(3)体液などの汚染物質に直接触れる可能性が高い環境にいる、
などを挙げています。

中国武漢からの観光客を乗せたバスの運転手の感染や、大型クルーズ船ダイヤモンドプリンセス号での大量感染、屋形船での複数感染などの感染例がこれらの条件に該当することになるでしょう。
移動が制限され密閉された環境では、濃厚接触がかなり高い確率で起こってしまうことを示唆しているといえそうです。

感染力はインフルよりやや強い?

では、この新しいウイルスはどれくらいの感染力があるのでしょうか。
感染力を示す指標として、1人の感染者が何人にうつすかという数値(「基本再生産数(R0)」といいます)があります。WHOが1月に発表した見解では、新型コロナウイルスは、1人が1.4~2.5人に感染させるとされていました。

感染力の強い疾患として知られているのは、はしか。はしかのROは、1人で12~18人にもなります。SARSは、2~4人でした。
こうした数値から、新型コロナウイルスは、それらよりも感染力はやや弱めで、季節性インフルエンザ(RO1.4~4.0人)と同程度の感染力と見られてきました。

しかし、ここにきてWHO(世界保健機関)の進藤奈邦子アドバイザーは、インフルエンザより感染力はやや強いという見方も示しています。

感染したのを知らずに感染を広げる危険性

以前から懸念されてきた無症状感染者の問題は、すでに現実のものとなっています。感染しているのに無症状(もしくは、軽いカゼ程度)の患者がいて、しかも、その感染者から、ウイルス感染が広まりつつある。これが、現在の日本の現状なのではないでしょうか。

潜伏期間(もしくは軽いカゼの症状)ですから、感染者自身は自分が感染しているとはわかりません。その人がコロナウイルスをうつしてしまっているのです。
しかし、そうなると、誰からいつ、うつったのか、追いかけられなくなります。現に、今、日本でそうやって市中感染が広まりつつあります。その結果、感染の封じ込めもできなくなりますし、感染が広がるリスクがあるわけです。

しかし私たちは、そういうリスクが想定されている今だからこそ、いよいよ気を引き締めて感染予防を徹底する必要があるということになるでしょう。

過去のインフルエンザの研究では、手洗いなどの衛生管理やマスクの着用などといった、一人ひとりができることをやっていくと、50%感染を減らすことができると報告されています。自分でやれることを一つひとつこなしていきましょう。

新型肺炎かなと思ったときの受診の目安は?受診する際に注意することは?

厚生労働省が受診の目安を発表

2月17日、国内の感染の疑いのある方に向けて、厚生労働省が受診の目安を発表しました。

・カゼの症状や37・5度以上の発熱が4日以上続く場合(解熱剤を飲み続けなければならない方も同様)

・強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある場合、また、高齢者、糖尿病、心不全、呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患など)の基礎疾患がある方や、透析を受けている方、免疫抑制剤や抗がん剤などを用いている方で、これらの症状が2日程度続く場合

新型肺炎かなと思ったらまずは保健所や厚生労働省の電話相談窓口に相談を。

このような場合は、最寄りの保健所の「帰国者・接触者相談センター」に電話で問い合わせてください。妊婦の方も、念のため、重症化しやすい方と同様に同センターに相談するといいでしょう。
受診を勧められたら、指定の医療機関の「帰国者・接触者外来」を受診します。専用の外来は、混乱を避けるため、一般には公開されていません。

受診の際には、医療機関に事前に連絡を入れ、必ずマスクをして外出、セキエチケットと手洗いを徹底しましょう。
ただし、市中感染が起こりつつあるとはいっても、セキや発熱があれば、それがみな、新型肺炎であるはずがありません。多くは通常のカゼやインフルエンザの可能性が高いと考えられます。
問題なのは、初期症状だけでは、新型コロナウイルスと普通のカゼとはほとんど区別がつかない点です。

そこで、高齢者や乳幼児、妊娠中の方、糖尿病、高血圧などの基礎疾患や、慢性の呼吸器疾患などがある人以外の、日ごろから健常だった方は、発症から3~4日は自宅で静養に努めるのがいいでしょう。決して無理をせず、会社や学校を休み、毎日検温をして結果を記録しておくことが重要です。
カゼやインフルエンザであれば、おおよそ3~4日で症状が軽快します。それで軽快するなら、新型肺炎ではなかったということになります。

しかし、それ以上、発熱や倦怠感などの症状が続く場合は注意したほうがいいでしょう。新しい目安を参考に、迷うような状況だったら、かかりつけ医などに相談してみてください。
重症化しやすいとされる高齢者や持病のある方、免疫系の弱っている方たちは、早め早めの相談・受診を心がけてください。

治療法は?予防法は?気をつけることは?

予防法の徹底がいちばんの対策

現段階では、新型コロナウイルスに対する特効薬はありません。新型肺炎を発症したら、いわゆる対症療法で対応していくほかありません。
解熱剤などで症状を緩和し、セキや呼吸困難の症状が起こってきた場合には、必要に応じて呼吸器や循環器を支える治療を行います。そうしながら、自らの免疫力によって状態が回復していくのを待ちます。

感染症対策の基本は手洗い、マスクなどのセキエチケット。

ちなみに、抗生物質は、新型コロナウイルスの予防や治療に有効ではありません。抗生物質は、細菌に対してのみ作用する薬剤で、ウイルスに対しては効かないからです。
ただ、感染者が新型コロナウイルスの感染によって入院している場合、そこで新たに細菌感染が起こるリスクがあります。その治療に抗生物質が投与されるケースはあるでしょう。

また、流行が始まったばかりの新型ウイルスですから、ワクチンも存在しません。もちろん、その開発は急ピッチで進められていますが、ワクチンが登場するまでには、ある程度の時間がかかるでしょう。ですから現時点では、感染のリスクを減らすために、手洗い、消毒、マスクの着用を含むセキエチケットなど、日常の予防法を徹底することです。それがいちばんの対策になります。

特に気をつけたいのは、感染リスクの高い高齢者や慢性疾患などの持病のある方、妊娠中の方などへの配慮です。このような方に接する場合には、知らないうちに自分もウイルスに触れているかも、あるいは感染しているかもと考え、頻繁な手洗い、マスク着用を含むセキエチケットを徹底しましょう。

また、高齢者や持病のある方は、人混みの多い場所はできるだけ避けるようにしましょう。
そして、忘れてならないのが、日頃から自身の免疫の力を高めておくことです。予防のためにも、また、万が一感染してしまったときのためにも、自分の免疫力がウイルスに対してどれだけ戦えるかが重要です。免疫力を高めるためのポイントについては別項で解説します。

なお、本稿は2020年2月19日時点の情報であり、2020年2月29日発売の『新型コロナウイルス肺炎、インフルから身を守れ!』(マキノ出版)から一部を抜粋・加筆して掲載しています。詳細は下記のリンクよりご覧ください。

新型コロナウイルス肺炎、インフルから身を守れ!(安心4月号増刊)
▼猛威を振るう新型コロナウイルス肺炎。▼感染は世界各地に広がり、感染者数、死亡者数はとどまるところを知りません。▼テレビをつけても感染拡大やマスク不足など、不安を煽る番組がほとんどで、ネットではデマや誤報まで流れ始めています。▼しかし、こういう時こそ落ち着いて、新型コロナウイルス肺炎についての正確な情報と正しい対応の仕方を学ぶべきです。

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