メインの庭は、住まう人の趣味や個性、ライフスタイルが反映されます。テーマに合わせた草花を選び、植栽の成長を楽しみながら快適な暮らしを実現する庭づくりを目指しましょう。ナチュラルガーデン、芝生の庭、イングリッシュガーデン、和モダンな庭を紹介しています。【解説】戸倉多未子(ガーデナー)

著者のプロフィール

戸倉多未子(とくら・たみこ)

有限会社グレイスオブガーデン代表。ガーデナー。暮らしを豊かにする緑の庭づくりをモットーに、小さな庭からエクステリア、ガーデンリフォームまでオリジナルガーデンを手がける。化学肥料に頼らない、自然の恵みを生かした庭づくりを得意としている。ガーデニング講師歴30年、ガーデニング関連の雑誌などでも活躍中。
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本稿は『小さな庭のつくり方』(永岡書店)から一部を抜粋して掲載しています。

小さいからこそ自分らしい個性的な空間に
メインの庭①

センスのよい草花づかい

メインの庭は、住まう人のセンスや個性を自由に表現できる場所。庭のテーマに合わせた草花を選び、数年かけて育てていくつもりで、植栽の成長を楽しんでいきましょう。

お気に入りの野草を植え、こぼれ種から育った草花いっぱいのナチュラルガーデン。季節の移り変わりを楽しめる豊かな空間です。

画像: 小さいからこそ自分らしい個性的な空間に メインの庭①

無造作な植栽の中にフォーカルポイントを置く

メインの庭づくりは一度に多くを詰め込もうとせず、テーマを決めてとりかかるといいでしょう。

例えば、季節の草花を楽しむ庭なら、自然の里山を思わせる、一見無造作にも見える植栽で、癒しの空間をつくります。形状や色合い、質感の異なる多種類の草花を植え込んでみましょう。また、パーゴラやアーチなどの構造物、個性的な雑貨をフォーカルポイントにすると、視点が定まって、住まう人のセンスを感じさせる空間になります。

植物に囲まれた暮らしに憧れて、好きなハーブをたくさん植えました。パーゴラに絡ませた花の香りの下、至福の時間を過ごすことができる空間。

画像1: 無造作な植栽の中にフォーカルポイントを置く

庭の入り口に大きなアナベルとオリーブを植えて森を散歩するようなイメージに。小道の先にアーチを設置して奥行きを出しています。

画像2: 無造作な植栽の中にフォーカルポイントを置く

花壇やコンテナでセンスのよい草花づかい

バラはパーゴラに絡ませるため、レイズドベッドの花壇に植えました。地面よりも高い位置にあるため、日あたりと風通しがよくなるのが特徴です。

画像1: 花壇やコンテナでセンスのよい草花づかい

大きな水鉢を植栽スペースに置くと、全体がまとまって引き締まった印象になります。花のエリアをまとめると、季節ごとに草花を入れ替えるときも、限られたエリアですむのでメンテナンスも簡単。

画像2: 花壇やコンテナでセンスのよい草花づかい

バラがいっぱいの庭で優雅な雰囲気を演出。植栽は石積みの花壇や寄せ植えポットにまとめて植えているので、手入れがしやすいです。

画像3: 花壇やコンテナでセンスのよい草花づかい

暮らしを豊かにする空間をつくる
メインの庭②

スタイルのある庭づくりアイデア

メインの庭には住まう人の趣味やライフスタイルが反映されます。和の趣がある庭やダイナミックなハーブガーデン、芝生の庭など、快適な暮らしを実現する庭づくりを目指しましょう。

青々とした芝生、生い茂るハーブ、静寂が似合う和のしつらえ……
理想のライフスタイルを実現した庭の実例

アンティークレンガで壁をつくり、奥にはかわいらしい道具小屋。入口にハーブをダイナミックに植えてワイルド感を演出しました。

画像1: 暮らしを豊かにする空間をつくる メインの庭②

わさわさした植物をかきわけながら小道を進むと、アーチの先にひと休みできるベンチ。これがフォーカルポイントにもなっています。

画像2: 暮らしを豊かにする空間をつくる メインの庭②

美しい芝生の庭。芝生は広い面積のほうが育てやすいです。庭の雰囲気に合わせて、アンティークの電信柱を物干し竿の代わりに設置。

画像3: 暮らしを豊かにする空間をつくる メインの庭②

灯篭と枝垂れのようなロウバイが和の趣を添えています。隣家の目が気になるため、デザイン性のあるフェンスを配置してモダンに。

画像4: 暮らしを豊かにする空間をつくる メインの庭②

砂利がメインの静かな空間。下に防草シートを敷いておくと手入れが楽に。砂利の大きさを変えたり、石貼りも一部を抜いて軽やかに。

画像5: 暮らしを豊かにする空間をつくる メインの庭②

目的や楽しみ方に合わせて理想の空間を自由にデザインする

メインの庭は比較的スペースが確保できる場所なので、眺めて楽しんだり、お茶をしながらくつろいだり、家庭菜園をしたりと、いろいろな使い方、楽しみ方ができます。

そのため、庭をつくる目的を考えてから、設計に入ることをおすすめします。テラスやパーゴラ、フェンスなどの構造物を上手にとり入れて、隣家からの視線を遮りつつ、ライフスタイルに合う空間をつくりましょう。

庭での作業動線や活動内容をあらかじめ考えておけば、あとからスペース不足に困ることもありません。思い描いた目的がかなう庭になるでしょう。

使う? 楽しむ?日々の暮らしを素敵に彩る庭

空間を広く使えるよう、樹形のすっきりしたジューンベリーとシマトネリコを配置。高所で葉が茂るため、庭に陰影が生まれます。アーチで空間を切り取り、奥行きを出して。

画像1: 使う? 楽しむ?日々の暮らしを素敵に彩る庭

レンガで縁取りした小道をつくり、作業がしやすいようにしました。ペイントしたパーゴラやアーチが視覚的なアクセントになります。

画像2: 使う? 楽しむ?日々の暮らしを素敵に彩る庭

エレガントな雰囲気を漂わせる緑の中のテラス。パーゴラにシェードをつけると空間にまとまりが出て、まるでリビングのようにくつろげる空間になります。

画像3: 使う? 楽しむ?日々の暮らしを素敵に彩る庭

野菜やハーブを植えるベジタブルガーデンは、レンガできっちりと仕切りをつけることによって、周囲が汚れにくく、作業もしやすい空間になりました。

画像4: 使う? 楽しむ?日々の暮らしを素敵に彩る庭

小さな庭の植物カタログ
メインの庭におすすめの植物

▼ムードづくりに役立つ背の高い草花 BEST3

ジギタリス

「キツネの手袋」と呼ばれる、長い花穂にびっしりと花をつける花姿が魅力的。草丈もあるので初夏の主役花としても人気。穂の下から順に花を咲かせていき、上位の蕾が咲いた頃に花茎を根元から切りとると、細い側枝が伸びて二番花が咲く。

画像: ジギタリス

デルフィニウム

品種によって花の咲き方が異なり、長い花穂が華やかなエラータム系と、ほっそりとした草姿に花を咲かせるシネンセ系、両者の中間的なタイプのベラドンナ系が代表的。本来は多年草だが、高温多湿の日本では一年草扱いすることも多い。

画像: デルフィニウム

宿根リナリア

鮮やかな花色で、すらりとした花穂の風に揺れる姿が優しい印象を与える多年草。葉は線状で青緑色をしている。耐寒性はあるものの、秋に入手した苗を植えつけた場合は、不織布をかけて防寒しておくと葉が傷まない。水のやりすぎに注意。

画像: 宿根リナリア

▼季節感を出しやすい植物

チューリップ、スイセン、ヒヤシンスなどの球根植物

土の中で栄養を蓄え、季節が訪れると美しく存在感のある花を咲かせる。咲き終わった球根は、植え直して翌年にまた花を咲かせるという楽しみもある。

画像: チューリップ、スイセン、ヒヤシンスなどの球根植物

シャクヤク

ボタンと並んで高貴な美しさを放ち、ゴージャスで上品な花を咲かせる。品種が多く、ひと重咲き、半八重咲きなど咲き方にそれぞれ個性がある。

画像: シャクヤク

エキナセア

くっきりした花形で存在感があり、花期が長めなので、夏の花壇の彩りにぴったり。初夏に大きく育つ。切り花や、ドライフラワーにもよい。

画像: エキナセア

▼フォーカルポイントになる樹木

フェイジョア

初夏に紅色のおしべをつけたエキゾチックな花を咲かせる、大きくなりにくい家庭果樹。木が育つと香りのよい実をつける。

画像: フェイジョア

ホプシー

銀青色の葉が魅力の美しい針葉樹。円錐形の端正な樹形は存在感がある。生育は遅く、植えつけから2年未満の株には水やりを。

画像: ホプシー

アメリカハナズオウ

明るい茶色の樹皮が特徴の落葉花木。ワインレッドのハート形の葉をつけカラーリーフとして人気。耐寒性があり、初心者でも育てやすい。

画像: アメリカハナズオウ

ハナモモ

サクラの花が咲く時期に前後して開花の最盛期を迎え、艶やかな花姿が存在感を放つ。さまざまな樹形があり、スペースに応じた樹形が選べる。

画像: ハナモモ

▼手間のかからないグラウンドカバー

アジュガ

黒みを帯びたつややかな葉が美しく、はうように葉を密に茂らせる。ピンクと白、クリーム色の斑入り葉の品種もある。涼しい半日陰で育てるとよい。

画像: アジュガ

ディコンドラ アルゲンテア シルバー フォールズ

はうように伸びる長い茎に、輝く銀色白葉が密につく美しい多年草。日差しに強く、よく日にあてて育てる。過湿になると葉が黒くなるので要注意。

画像: ディコンドラ アルゲンテア シルバー フォールズ

ベロニカ オックスフォードブルー

地面をはうように生長し、春に小さな青い花を株全体にびっしりと咲かせる。日なたを好み、有機質に富む水はけのよい場所で育てる。

画像: ベロニカ オックスフォードブルー


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