【HSPの対処法】仕事・職場編:仕事できない、仕事が遅い、急な予定変更でパニックに…への対策

HSPにとっては毎日のほとんどを過ごす、「安全で安心な職場」を得ることは必要不可欠です。不安な気持ちになったら、駆け込める場所があると安心して毎日を過ごすことができます。物理的に移動できない時には、心の中に居場所を用意しておくのもいいでしょう。本稿は『敏感すぎて生きづらい人の 明日からラクになれる本』(永岡書店)から一部を抜粋・加筆して掲載しています。

仕事や職場でどう振る舞う?

ここでは、HSPが持ちやすい仕事についての悩みを紹介していきます。居心地がよく、安心できる関係や職場を確保することは誰にとっても大切なことです。特に、極端に敏感なHSPにとっては毎日のほとんどを過ごす、「安全で安心な職場」を得ることは必要不可欠です。

安心・安全な関係というのは、
・嫌なことは嫌と言えること
・気が進まないことを強要されないこと
・自分の話に耳を傾けてもらえること
・感じ方や考え方を押しつけられないこと
・ふたりだけの関係に縛られないこと
・人格を否定されたり、決めつけられたり、怒鳴られたりしないこと
・相手の責任を負わなくてもいいこと
なのです。

安全の確保をはかるためには、会社のどこかに「自分だけの逃げ場所」を見つけておくことも良い対処法です。場所は人の来ない会議室や資料室、トイレでもいいでしょう。不安な気持ちになったら、駆け込める場所があると安心して毎日を過ごすことができます。

もしも物理的に逃げ込む場所まで移動できない時には、心の中に居場所を用意しておくのもいいでしょう。外に逃げ場所がないのなら、心の中に意識を集中させて外の世界を遮断してしまえばいいのです。

case一度に複数の業務を進行できず、仕事が遅いと怒られる

敏感で繊細なHSPは一度に、または短時間にたくさんの仕事をこなすことは嫌です。1つひとつに時間をかけて、丁寧にミスなくやりたいのです。監視されず、急がされず、休み休みできないと神経が疲れ果ててしまいます。

「複数の仕事に同時に取り組もうとせず、優先順位をつける。」

HSPはものごとの細かい部分にも本質的な部分にも気がついてしまい、想像の中へと引き込まれやすい傾向にあります。その結果、目の前の仕事に過集中してしまい、全体を客観視しながら効率よく仕事を進めることが苦手です。

ミスをしたり、忘れたりしないように常に気を使っているので、仕事は正確にこなせても疲労感が人一倍強いのです。突然の変更や突発的な出来事にも混乱しやすいため、ひとつのことをじっくりと集中してやれる仕事が向いています。

仕事をもらった時に、上司や先輩に優先順位を確認しておくのもいい方法です。

どうしても仕分けができず仕事が多すぎて混乱する時には、「私は一度に複数の仕事をすると、混乱してしまいます。重要な順に、ひとつずつ対応させてください」と、お願いしてみてもいいかもしれません。

ただし、相手によっては「甘えている」と取られかねないので、相談は信頼できる相手を見極めてください。コツコツとマイペースで進める仕事は大得意ですから、自分のペースさえ保証してもらえば大きく力を発揮できるはずです。

セルフケアのコツ
複雑な人間関係や調整の必要のない立場につく
自分のスペースがあり、自分のペースで仕事をする
突発的な変更や接客のない仕事を選ぶ

case急な予定変更など苦手なことで、パニックになってしまう

もともと決まっていたスケジュールが、相手の都合や天候などが原因で急に変更になってしまう、これまでやってきたことがひっくり返されるなど、ありがちなことですが、HSPはこんな予定変更があると、神経が高ぶりすぎて、パニックを起こしてしまいます。

「怒りやパニックは、最初の6秒間で気をそらす。」

HSPは刺激に対しては早く、深く、大きく反応してしまうものの、行動を抑制する神経が強いので、パニックになっても外からはわからないように不安や怒りを抑えてしまいます。

とかく不可抗力でイヤな思いをすることも多いHSPですが、理不尽だからといって相手を責めることができません。過去の出来事とリンクして、フラッシュバックが起こり不安と恐れを感じ、怒りとなって表れることがあります。

怒りのピークは長くても6秒といわれていますので、最初の6秒をコントロールすることが重要です。衝動的に行動せず、6秒間だけ気をそらせて待ってみましょう。

例えば、6秒間ゆっくりと深呼吸をしてみたり、水を飲んでみたり、トイレに行くなどして気持ちを落ち着かせることで、簡単に動揺を抑えることができます。

怒りは我慢せずうまく出せると後悔せずに済みます。我慢しすぎて爆発することがないよう、爆発する前に止めると、落ち着いて対処できるようになるはずです。

セルフケアのコツ
とにかく深呼吸。とにかく爆発を防ぐ
6秒かけて、水を飲むなど何かをしてみる
落ち着くことができたら、自分を褒める

Plus+ 1タイムアウト法で気持ちを落ち着かせる方法

怒りを感じた時に、反射的に感情のまま行動に出ないためには、子どもに対して数分間少し間を置き冷静にさせる、「タイムアウト」法が有効です。叱ったり責めたり否定したりするよりは、刺激を遠ざけて静かにして休むことが大切です。

タイムアウト」という怒りに対処する行動療法は、アンガーマネジメントのひとつの手法として知られています。アメリカでは子どもに対するしつけの方法としてもよく使われ、日本でも普及し始めています。

怒りは悪い感情ではなく、怒ること自体はいけないことではありません。しかし、怒りは他の感情に比べるととても強いので、暴発させてしまうと自分も周囲も感情に振り回されてしまい、扱うのが難しくなるのです。

タイムアウト法で気持ちを落ち着かせる方法は簡単です。

例えば、はしゃぎすぎてしまって、収まりがつかなくなってしまった子がいたとします。こうした場合は、スポーツの試合終了時のようにタイムアウトを伝えて、皆から見られない部屋のすみにある椅子に座らせる、静かな別室に連れて行くなどしてみましょう。

そして数分間じっとしているように伝えます。

時間が経ったらタイムアウト終了を告げます。この時に、視線を送ったり話しかけたりしてはいけません。騒いでいた子どももこの間にクールダウンして、冷静さを取り戻しているはずです。

この方法は、子どもだけではなく大人が自分で使う際にも有効です。イライラが収まらない時や人の気持ちに影響されて落ち込んでしまった時にぜひ試してみてください。

集団から離れた場所に座って数分じっとする、トイレなどひとりになれる個室でしばらく静かにしているなど、ただそれだけのことでも、興奮が徐々におさまり不快感が消えていくのを感じられるはずです。

怒りを常に爆発させていたのでは、いつまでも人と信頼関係を築くことはできません。

■イラスト/森下えみこ

■本稿は『敏感すぎて生きづらい人の 明日からラクになれる本』(永岡書店)から一部を抜粋・加筆して掲載しています。詳しくは下記のリンクからご覧ください。

敏感すぎて生きづらい人の 明日からラクになれる本
HSPとは「Highly Sensitive Person」を略したもので、「とても敏感な人」の意味です。ふとしたことで敏感に反応してしまうため、生きづらさを感じたりすることがあります。
HSPに関する知識や理解は、心の専門家たちにおいてさえ、まだまだ不十分であり、敏感すぎる自分にどう対処してよいかわからずに困っている人たちがたくさんいます。本書は、HSPの性質からもたらされる日常生活の生きづらさについて、具体的説明や対策などについて、脳科学的知識を入れてなるべくわかりやすく解説しています。

著者のプロフィール

長沼睦雄(ながぬま・むつお)

十勝むつみのクリニック院長。日本では数少ないHSPの臨床医。平成12年よりHSPに注目し研究。北海道大学医学部卒業。脳外科研修を経て神経内科を専攻し、日本神経学会認定医の資格を取得。北海道大学大学院にて神経生化学の基礎研究を修了後、障害児医療分野に転向。道立子ども総合医療・療育センターにて14年間小児精神科医として勤務。平成20年より道立緑ヶ丘病院精神科に勤務し、小児と成人の診療を行っていた。平成28年9月に開業し、HSP診療を中心に診療し、脳と心(魂)と体の統合的医療を目指している。
▼十勝むつみのクリニック(公式サイト)」
▼専門分野と研究論文(CiNii)

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