【HSPの対処法】苦手な人間関係編:人見知り、友達がいない、人と会うと疲れる、断れないへの対策

自分と他人を区別する精神的な境界線が薄いHSPの場合、他人の心や体に起きたことに過剰に共感したり、他人の問題をまるで自分のものとして体感してしまいます。こうしたことからHSPは意識して精神的境界線を作る必要があります。本稿は『敏感すぎて生きづらい人の 明日からラクになれる本』(永岡書店)から一部を抜粋・加筆して掲載しています。

他人の影響を受けすぎないためには?

自分と他人を区別する精神的な境界線の厚い人は、自他の違いがハッキリしているので、共感性や同調性は低いですが、周囲に巻き込まれにくく集中力を保てます。

しかし、境界線が薄いHSPの場合、共感や同調しやすいものの周囲に巻き込まれやすく集中を保つのが難しいのです。

他人の心や体に起きたことに過剰に共感したり、他人との間に無意識に同じ思考パターンを当てはめてしまうため、他人の問題をまるで自分のものとして体感してしまいます。

こうしたことからHSPは意識して精神的境界線を作る必要があります。

自分の境界線を厚くしただけでは自分を保つのに不十分で、もうひとつ大切なことは自分の中にぶれない「心の軸」(自分軸)を持つことです。

自分に自信がなかったり、周囲に気を遣いすぎたり、つい他人を優先したりするのは、自分の本当の気持ち(本音)がわからなくなっているからなのです。

親の過干渉や支配の中で育ち、自分の本音を無視したり、抑えたりしてきたために、いつの間に自己表現ができなくなり、自分より「他人軸」で生きるような心の癖がついてしまったのかもしれません。

case他人と本音で話せない・友達が少ない

1人でいることを好み、自分の世界にいると元気が出てきます。1人でいるほうがじっくり考えたりすることができて楽しめるのです。人付き合いもできるだけ少人数のほうが心地よく、1対1で話すほうが楽なのです。

「他人の期待を満たす人生ではなく、自分の人生を生きる。」

HSPは対で向き合い、相手と深くわかり合うことを望むため、友人の数も限られる傾向にあります。

時間をかけてじっくりと考えを練り上げてから話すので、反応が遅いように思われることもあり、雑談や世間話は、苦手です。電話やチャットをするのにも、すぐに応答できないので前もって話す内容を決めておかないとスムーズに話せません。

外向的・活動的で人と接することを楽しめる「リア充」な人たちに囲まれると、疎外感や孤独感を感じてしまうものの、嫌われたくなくて相手につい合わせてしまう自分に罪悪感や劣等感を抱いてしまいます。

人との境界がもろいために、自分には関係のない問題に巻き込まれてしまったり、予期できぬほどたくさんの人にイヤな思いをさせられたり、意図せず深く付き合うはめになったりもしやすいのです。

小さい頃からの習慣で、本音を隠し元気キャラを演じて集団に適応したとしても、いつも他人に合わせて神経を遣い、心も体も疲れ果ててしまいます。

相手の期待を満たすために自分は生きているわけではありません。嫌われることを恐れず、あなたはあなたのままでいていいのです。

セルフケアのコツ
「友達は多いほうがいい」という考えを捨てる
付き合いは頻度より1回1回を大切にする
周囲の人に自分のHSPの特徴を伝える

case大人数の集まりや飲み会が苦手で、いつも居心地の悪さを感じてしまう

HSPが抱きやすい大きな悩みのひとつに、「大人数の集まりや飲み会が苦手」があります。1対1や少人数の集まりではそれほど問題ないのに、人数が多いと自分がどう振る舞ったらいいのかわからなくなってしまいます。

「大人数の飲み会、出席するだけで120点!」

HSPは、大勢の飲み会は何かと居心地が悪いと感じます。

周囲の騒音や大声、会話が耳について集中できなかったり、世間話やウワサ話、愚痴などが苦手だったり、相手の表情や言葉に過剰に反応してすぐに疲れてしまいます。そしてうまく振る舞えないと、「私はダメな人間」と自分を責めてしまいます。

でも大人数が苦手なHSPは、飲み会に参加しているだけで十分に頑張っている状態です。大勢の人と会話をしたり、周囲の状況に合わせてお酌や注文をしようとしたりすると、自分のペースが乱され神経がすり減ってしまいます。

飲み会に出席しただけで頑張ったと、自分をほめてあげましょう。もし余裕があれば、隣の人とだけ会話をしてみるくらいで十分です。また、知り合いの少ない会合に出席する場合はさらにつらいので、友達や会社の同僚にお願いして、一緒に参加してもらうなど対策を立てると安心です。

HSPにとって、「合わない環境に身を置くこと」はとても過酷でしんどいことです。だから、”嫌われてもいい“”どうしても行かなくてはいけない集まり以外は断る“と決意するのも、敏感な自分を守るひとつの方法になるはずです。

セルフケアのコツ
飲み会は目立たず、動かず、角の方に座ろう
親しい気のおけない人のそばにいよう
疲れたらトイレに行き、ひとりだけの空間で休む

case自分から誘えない、人からの誘いを断れない

HSPが抱きやすい大きな悩みのひとつに、「大人数の集まりや飲み会が苦手」があります。1対1や少人数の集まりではそれほど問題ないのに、人数が多いと自分がどう振る舞ったらいいのかわからなくなってしまいます。

「自分はHSPだからと開き直ってみよう。」

何かに不満を感じていても、「確かに自分が悪いし……」と自分を責めたり、「相手にも事情があるし……」と受け入れたり、「ルールだからしかたがない」と諦めたりしていると、解消されない思いが不満や怒りとなって蓄積します。

「感情的にならないように」と気持ちを押し込めてしまうと、他人や自分でさえもその感情に気づかずに時が過ぎてしまいます。

自分の感情を押し殺していると、いつの間にか自分にとって楽しめることや打ち込めることが見つからなくなり、趣味や人付き合いも少なくなってしまいます。

ふと孤独を感じたり、周囲に溶け込めているか不安になったりした時は、「嫌われたっていい」「避けられてもいい」「孤独で疎外されているよりはまし」と思い切って開き直りましょう。

「~しないように」と不安を持つと、不安に意識が集中してかえって「~してしまう」ものです。

自分はHSPなんだと認めて開き直り、自分を縛っている心を解放して、受けたくない誘いは断り、断られるかもしれなくても人を誘う勇気を持つようにしましょう。

セルフケアのコツ
まずは親しい人から誘う・断る
人に頼むか、人に同席してもらい断る
直接言うのが難しければ、メールで誘う・断る

Plus+ 1人に誘われた時の上手な断り方

どうしても参加しなければいけない付き合い以外は、できれば集団での飲み会や会合に出たくない…と感じることもあるかもしれません。そんな場合に、角を立てずに断るにはどうしたらいいか、その方法を考えてみましょう。

ものごとの決定をする際、自分が本当はどうしたいかという自分の本音を大切にして、それを優先することを「自分軸」で生きると言ったりします。

HSPは自分軸が弱く、つい他人軸で生きてしまいがちです。相手を攻撃するのでもなく、言いなりになるのでもなく、上手に自分の本音を伝えられれば、他人に振り回されずに自由に生きることができます。

「自由とは他者から嫌われること」だと、心理学者のアドラーは言っています。自分の課題と他人のそれを分けて、「私は~」と自分のメッセージを伝えられるようにすることが重要です。

そこで、人に誘われた時の上手な断り方としては、「私は~」と自分の意見を伝えるほか、相手の都合も尊重した前向きなセリフが有効です。

例えば上司から急に飲みに誘われたとしましょう。断り方のひとつの例は次のとおりです。

「申し訳ありません。私としてはぜひご一緒したいのですが、今日は以前から約束していた用事がありますので、残念ですが参加できません。でも来月の歓迎会でお話できるのを楽しみにしています」

この場合のポイントは、(1)謝る(申し訳ありません) (2)自分の意志を伝える(私としてはぜひご一緒したい) (3)断る理由(以前から約束していた用事がある) (4)断る(参加できません) (5)代替案(来月の歓迎会は楽しみにしている)です。

「私としてはぜひご一緒したい」という自分の意志を伝えることで、例えその後で断りのセリフを言ったとしても前向きな印象を相手に与えることができて、しかも代替案としての「歓迎会」を「楽しみにしている」と伝えれば、上司も嫌な気分にはならないでしょう。

これはあくまで一例ですが、断るフレーズをたくさん持っておくと、いざというときに活用できて安心です。

■イラスト/森下えみこ

■本稿は『敏感すぎて生きづらい人の 明日からラクになれる本』(永岡書店)から一部を抜粋・加筆して掲載しています。詳しくは下記のリンクからご覧ください。

敏感すぎて生きづらい人の 明日からラクになれる本
HSPとは「Highly Sensitive Person」を略したもので、「とても敏感な人」の意味です。ふとしたことで敏感に反応してしまうため、生きづらさを感じたりすることがあります。
HSPに関する知識や理解は、心の専門家たちにおいてさえ、まだまだ不十分であり、敏感すぎる自分にどう対処してよいかわからずに困っている人たちがたくさんいます。本書は、HSPの性質からもたらされる日常生活の生きづらさについて、具体的説明や対策などについて、脳科学的知識を入れてなるべくわかりやすく解説しています。

著者のプロフィール

長沼睦雄(ながぬま・むつお)

十勝むつみのクリニック院長。日本では数少ないHSPの臨床医。平成12年よりHSPに注目し研究。北海道大学医学部卒業。脳外科研修を経て神経内科を専攻し、日本神経学会認定医の資格を取得。北海道大学大学院にて神経生化学の基礎研究を修了後、障害児医療分野に転向。道立子ども総合医療・療育センターにて14年間小児精神科医として勤務。平成20年より道立緑ヶ丘病院精神科に勤務し、小児と成人の診療を行っていた。平成28年9月に開業し、HSP診療を中心に診療し、脳と心(魂)と体の統合的医療を目指している。
▼十勝むつみのクリニック(公式サイト)」
▼専門分野と研究論文(CiNii)

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