ドイツより上陸した空気清浄機「NANODRON(ナノドロン)」。なんと予想市場価格:80万円(税抜)です。これほど高価格な空気清浄機ですから、やはり機能もすごいです。従来のHEPAフィルターでは取りきれない微粒子まで清浄化するのです。また、デザインや質感にも相当なこだわりがあります。今回はこのNANODRONをご紹介します。
これまでとは違う概念の空気清浄機「NANODRON」
独 Health Air Technology(ヘルスエアテクノロジー)社の空気清浄機『NANODRON(ナノドロン)』です。
会社名、製品名ともに「馴染みがない」人がほとんどだと思います。しかも、それが80万円(税抜)。空気清浄機としては、ちょっとない価格です。あるとすると、建物に合わせた特注のビルトイン型で、同じくらいの価格ではないでしょうか? というのは、民生用の空気清浄機は、空気清浄機本体ではなく、フィルターなどの交換パーツで稼ぐビジネスプランを採用。本体価格を安くするのがセオリーです。
それだけ特別な空気清浄機なのでしょうか?そうです。「特別」なのです。「独自」なのです。ちょっとではなく、かなりの違いがあるのです。
新たな浄化システムを搭載
HEPAフィルターではあり得ない微粒子まで清浄化
今の空気清浄機の技術はろ過。このため、使用するフィルターの目のサイズで、基本ポテンシャルが決まります。今、それなりの価格で手に入れられるフィルターは「HEPA(ヘパ)フィルター」。0.3μmのサイズまでトラップします。ただし、そのまま使うと、それ以下のサイズのモノはトラップできません。しかし、空気中のウイルスは、一番小さいのが、0.01μmといいますので、それ以下。コロナウイルス禍では、ちょっと不安に思いますね。
このため、ウイルスなど浮遊物を帯電させ、フィルターに静電トラップさせる技術などを使い、立ち向かっています。ナノドロンは、この技術を採用。昨年、第三者機関で、ウイルス除去のデータを出してきたのが、ブルーエア社。メインモデルの「Blueair Protect(ブルーエア プロテクト)」に採用された技術です。日本市場で販売されている空気清浄機の、トップデータを持つモデルです。
しかし、ヘルスエアテクノロジー社は、これを良しとしません。彼らは「サイズを問わず」をターゲットにできないかを目指しました。その浄化システムを搭載したのが、今回発表された空気清浄機「NANODORON」なのです。
彼らがしたことは、「静電トラップの徹底」と「後処理」です。このために、彼らは優雅な独特の円筒を筐体としました。空気は上から下へ流れます。
吸い込まれた空気は、まず「プレフィルター」でホコリを分離します。人には小さい、100μm(花粉サイズ)でも、0.001μmからみると100万倍。片方が人だとすると、片方は2000km。日本縦断は、テレビによると2600kmだそうなので、そこまでは行きませんが、それほどサイズが違います。そのための第一関門です。
プレフォルターを抜けると「電離(イオン化)セクション」。単純にいうと粒子をマイナス帯電させます。サイズは関係なく、全粒子が対象となります。
そして「静電フィルター」。マイナス帯電の粒子は4つの分離チューブを流れ、サイズによらず、プラスに帯電した収集プレート上の静電界沈殿して行きます。そして、フィルター下部に設置された「高電圧発生器」で作られた1万2000Vの静電気で完全分解させます。ちなみに、フィルターは、高合金鋼製です。ポイントは、ここで省電すること。そうでないと、電力消費もすごいことになります。
そして、この静電フィルターの下に位置するのが、「4速ラジアルファン」。こちらも、省エネのために効率化させています。加えて、静音性もばっちり考慮されています。
そして出口にあるのが「二重層活性炭フィルター」。揮発性有機化合物は、原子、分子ですので、それ以上壊すことができない化学的ユニットですから、活性炭トラップです。
このシステムには、実に43の特許が採用されているそうで、かなり強力に効きそうです。
2つの国際認定機関から「アレルギー患者に適合する」と認定
ドイツTÜV NORD (テュフノルド)とECARF (ヨーロッパアレルギー研究財団)の2つの国際認定機関において「アレルギー患者に適合する。」という認定を受けています。
ドイツの考え方として、家電はテスト結果=実力とされますので、ドイツの家電は、いろいろなテストを受けます。日本の家電製品の品質が、社内の「和」、改良によって保たれているとすると、ドイツはテストですね。
独特の「デザイン」と「質感」
ドイツのクラフトマンシップも関与
そしてもう一つの特徴は、独特の「デザイン」と「質感」があげられます。このレベルになると、質感は非常に大事です。このため、生産工程の半分はドイツの熟練職人がハンドメイドで行うそうです。
見た瞬間、頭の中でイメージしたのは、高級オーディオメーカー BANG & OLUFSENのスピーカーBeolab 18。こちらのお値段は、1,178,116円ですから、似ていますね。ああ、両方とも大人買いできる甲斐性が欲しいものです。
最後に
今までの空気清浄機とは違う
初めて、ナノドロンの話を聞いた時、まず思ったのは値付け間違えていませんか?ということでした。ところが、今の空気清浄機とは違う、「サイズによらない清浄」を実現しており、すごいと思いました。
HEPAフィルターの空気清浄機でも処理できないものに、タバコの煙があげられます。何故か?タバコの葉だけでできていなからです。葉巻がそうであるように、タバコは香りが命ですが、それをキープするためには、ヒュミドール(葉巻に適した湿度の高い環境を保つ箱)で管理する必要があります。では、それができない、乾燥している紙巻きタバコ(いわゆるタバコ)には、香料が補填されています。ま、人工化学物質です。その種類が多岐に渡る上、燃焼が一定ではない。凄まじい数の物質がでてくるわけです。化学物質もそうですし、粒子サイズもまちまち。このため空気清浄機、最大の敵はタバコの煙でした。
しかし、ナノドロンなら、無害化できる可能性を感じます。(※その辺りのデーターは公表されていません)買う、買わないに限らず、知っておきたい空気清浄機です。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京散歩とラーメンの食べ歩き