サブスクリプションとは「料金を支払うことで、製品やサービスを一定期間利用することができる」形式というビジネスモデル。今、以前の個別販売から、サブスクリプションが一般的になりつつある分野もあります。今回は、このサブスク・ビジネスで、ちょっと変わったビジネスを目指している「サプライズボックス」をレポートします。
サブスクリプションといえば
必ず例にあげられるのが、動画配信サービス。私が契約している「Netflix」も、その一つです。入会したのは、「デビルマン cry baby」を観るために入会したのですが、なんたってコンテンツが豊富。ビデオ屋丸ごとと契約した感じです。
人気の、観たいタイトルを提示することにより、契約を稼ぐのは、WOWOWなど衛星放送で行われてきたことですが、こちらは放送しなければならないので、タイトル数は有限。「Netflix」の様に巨大なコンテンツを囲うわけには行きません。「Netflix」の凄いところは、コンテンツの量だけではありません。オリジナルの質がすごくいい。アニメでも「バギ」「ケンガンアシュラ」。ドラマでも「今際の国のアリス」「深夜食堂」。それに加え、ノンフィクションが凄い。「マイケル・ジョーダン:ラストダンス」などは鳥肌が立つ想いでした。これを見せられると、日本のテレビ局が、どれほど情けないのか、よくわかります。
「Netflix」は置いておくとして、サブスクリプションは、音楽サービス、ソフトウェアサービス、一部変わったモノに食品宅配の「Oisix」があります。
アニメ・ビジネスのネック
2020年〜今年にかけて超大ヒット中の映画「鬼滅の刃 無限列車編」。日本歴代NO.1の興行成績を打ち立てました。かくして、主人公である煉獄さんは「300億円の男」になりましたが、これは極めてレアケース。日本の場合、映画にならないアニメ名作はごまんとあります。その様な、アニメは儲かっているのか? と問われると、アニメだけでは食べていけません。円盤(DVD、ブルーレイ)化しトントン。グッズが出れば、プラスに転じます。「鬼滅の刃」は、実に数多くのグッズが世の中に出ました。しかし、一部を除き、クオリティが低い。しかもパチモンが混じっている時もあります。要するに、ある意味のたかりビジネスとも言えます
また、漫画の神様と言われた手塚治虫の「虫プロ」の例を出すまでもなく、アニメは常に当たるとは限りません。
また、ディズニーの様に、漫画の主人公を集め、テーマパーク化も考えられましたが、主人公がミッキーマウスの様に幅広い年齢に合うわけではありません。
今、勢いのある「ジャンプ」作品群にしても、未来延々に渡り、稼げることが約束されているわけではないのです。
アニメの最大の遺産「キャラクター」を生かす
アニメを含む創作物の最大の遺産はなんでしょうか?
それは「登場人物」です。例えば、シャーロック・ホームズ。麻薬中毒患者としても描かれるホームズは、実際に世にいると困りものでしょうが、物語の主人公である限り、ひどく魅力的です。アニメも同じですね。鬼滅の刃も竈門炭治郎、他のキャラも立ちに立っています。煉獄杏寿郎の「よもや、よもやだ。柱として、不甲斐ない。穴があったら入りたい!」などは、決めポーズの見栄も決まり、世界のどの劇場でも受けることでしょう。
アニメ最大の遺産は、キャラクターなのです。
それを活かした、サブスクを考えたのが、サプライズボックスです。
サプライズボックスの魅力
サプライズボックスの契約は一風変わっています。
ユーザーはキャラクターで申し込みます。デフォルトプランは、10,500 円/ 5,500 円/ 3,500 円の 3コースの中からセレクトしてもらう方式です。
ここで確約されているのは2つ。一つは、高額プランは、低額プランを包括すること。そして、主賓は配布、デザイン共に契約者限定。そして作るものは、ユニークな生活に密着したものです。
要するに、人が持っていなくて、高品質。そして身につけたり、身近に置いておいても可笑しくないグッズがもらえるというわけです。ティーセット、ハンディファン、あるいはキットカットの様なお菓子かも知れません。が、全て、大人の視点で作った、大人を楽しませることができるグッズです。
では、何故サプライズビックス(びっくり箱)かというと、内容が手に入るまで分からないからです。情報、情報と口うるさい現代に置いて、職人さんの腕を信じて待つ感じです。
手塚オールスターズのサプライズボックスも登場
そして、2月10日より、「手塚オールスターズ」が、そのキャラに加わります。
手塚治虫の漫画は、キャラが有名なところでも「鉄腕アトム」「リボンの騎士」「ジャングル大帝」「W3(ワンダー・スリー)」「海のトリトン」「火の鳥」「ユニコ」「ふしぎなメルモ」「三つ目が通る」「ブラック・ジャック」などなど。
あまりにも有名な、劇画への焦り、特撮との戦い、虫プロ倒産などを経ても、漫画の神様が生み出した素晴らしいキャラクターたちです。これらが、隣に、何気ない姿で帰ってくる。世界一の漫画大国、日本を象徴している様な話です。
最後に
サプライズボックスは前例のないビジネスモデル
今、エンターテイメントで、新しいものを次々生み出すパワーを持っているのは漫画くらいでしょう。しかし、漫画は、その活力に満ちたキャラが忘れられると終わりとなります。このため、キャラクタービジネスに力を入れる「ディズニー」「サンリオ」はテーマパークを作り、キャラクターを作り続けます。この2つのアミューズメントが特異なのは、儲けるためでなく、キャラクターの人気をキープするために作られているところにあります。
残念ながら、日本でそこまでの力を持つ、漫画、アニメの関連団体はありません。しかし、日本のサブカルの命ともいうべき、漫画のキャラクターを殺してはいけません。
そんな視点からも、サプライズボックスは、うまい共生ビジネスになっているのではと思います。これは、前例もないことであり、文化に無知な某国政府がなし得ることではあり得ませんので。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京散歩とラーメンの食べ歩き。