コロナ禍で売り上げが伸びているものを調べていて、「自転車」を見つけました。ソーシャルディスタンスを取ることができ、巣ごもりによる運動不足の解消にもつながるためでしょうか。しかし一方で、自転車の関わる交通事故の割合が増えているようです。道路交通法(道交法)では自転車は「軽車両」とされ、違反者には罰則が課されます。自転車に乗るには交通ルールを知っておく必要がありますし、乗らない人も事故に巻き込まれないための知識が必要です。

コロナ拡大とともに自転車購入費が増えている

図表①で、総務省の「家計調査」から世帯当たりの自転車購入費の実質増減率(前年同月比)の推移をみましょう。昨年3月から今年2月までの1年間で、前年を下回ったのは3、9、11月の3ヶ月だけでした。このうち、9月が前年を下回ったのは、消費税率の引き上げ前の駆け込み需要による前年の反動からでしょう。

家庭の全体消費額が、昨年3月以降で前年同月比を上回ったのは10月と11月の2ヶ月だけだったことからしても、自転車の購入支出が増えたことが分かります。特に、コロナ感染者数の拡大による「波」の高まりとともに、自転車の購入費も前年を大きく上回った様子が見て取れます。

画像: コロナ拡大とともに自転車購入費が増えている

また、図表①には交通費の実質増減率も載せてみました。案の定、前年対比を上回った月はゼロです。かろうじて、昨年の緊急事態宣言が解除された6月、「GoToイート」が実施された翌月の10月に落ち込み方が少し緩和されたとはいえ、鉄道やバス等の公共交通機関への打撃の大きさが察せられましょう。

もっとも、毎日のように利用する人も少なくない鉄道やバスなどどは違って、自転車は一度購入したら、たいていは何年も乗り続けるものです。コロナによって自転車の売れ行きがよくなったのなら、コロナ以前にはあまり売れていなかったのでしょうか?

自転車事故が増加している?

自転車協会が、今年1月の緊急事態宣言発出後に「自転車利用時のお願い」として、「ルールとマナーの遵守」を呼びかけをしました。その理由に「近年の自転車ブームに加えて、コロナ禍による自転車利用の急増で、…事故も増加している状況」を挙げています。

つまり、コロナ以前から“自転車ブーム”だったことになります。コロナ禍で、にわかに自転車が注目され始めたわけではないということです。

一方で、こんなデータもあります。図表②です。

自転車産業振興協会が取りまとめている国内向け台数(国内生産台数+輸入台数)の推移では、図表②-1のように、2018年まで年々減少していました。

画像1: 自転車事故が増加している?

それが、2019年、2020年と連続して前年をクリアしたのは、19年が消費税率引き上げ前の需要増、20年がコロナ禍による自転車利用増にそれぞれ負うところが大きいように思われます。

さらに、20年の動向を図表②-2のように四半期ごとに見ると、前年をクリアしたのは昨年の4月以降、つまり1回目の緊急事態宣言が出されたあとであることも分かります。

もうひとつ、興味深いデータとして図表③を挙げます。警察庁が取りまとめている自転車関連事故件数の推移です。これによれば、自転車関連事故件数は減少傾向にあり、決して増えているとは言えません。しかし、すべての交通事故に占める自転車関連事故の割合は増加しています。

画像2: 自転車事故が増加している?

つまり、交通事故が全体として減少しているなかで、自転車が関連している事故はあまり減っていないということです。すると、多くの人には自転車事故が増えているように感じられるでしょう。

先述のように、自転車協会がわざわざ「自転車利用のお願い」として「ルールとマナーの遵守」を呼びかけたのも、交通事故を全体として減らすには、自転車の利用者こそ安全に注意すべきだと訴えたかったからではないかと思います。

国産自転車の7割は電動アシスト車

図表④で、経済産業省の「生産動態統計」から自転車の「車種別」に出荷台数の推移をみると、
2017年までは「軽快車」が最も多く出荷されていましたが、2018年以降には「電動アシスト車」に取って代わられました。電動アシスト車の総出荷台数に占める割合も増加傾向にあり、2020年には45%を超えるまでに高まりました。

画像1: 国産自転車の7割は電動アシスト車

先の図表②では、国内向けの自転車台数を「国内生産台数+輸入台数」として示しましたが、現在、国内に供給されている自転車の約9割は輸入車です。さらに、1割強でしかありませんが、国産車のうち7割までが、なんと電動アシスト車です。

自転車といえば、これまでは「ママチャリ(ホーム車)」とか「シティサイクル(シティ車)」などの軽快車が一般的でしたが、これからは電動アシスト車が一般的になるのかもしれません。

また、自転車の売れ行きには季節性があります。図表⑤は、自転車産業振興協会が全国の自転車小売店(専門店)100店舗を対象に行っている「自転車販売動向調査」による状況ですが、図表⑤-2のように、年間を通すと3月と4月に販売ピークのあることが分かります。新学期を迎えるシーズンだということもありますが、誰にとっても春の訪れは外出を後押ししてくれるものですよね。

画像2: 国産自転車の7割は電動アシスト車

ただし、図表⑤-1のように、自転車産業振興協会で把握している自転車の販売動向は、全体の自転車販売の3割ほどをカバーしているに過ぎません。大型スーパーやホームセンター、通信販売など、専門店以外のチャネル(販売ルート)で購入する人のほうが多いからです。もちろん、チャネル変化は今後も起こり得ます。専門店が盛り返すかもしれませんし、新たなチャネルが登場する可能性だってあります。

自転車にも「あおり運転」の罰則が適用

これまで見てきたように、昨年来のコロナ禍で自転車の購入者が増えるとともに、利用者も増えています。同じような状況は、欧州の各国でも見られるそうです。もともと、環境への意識の高い人々が多い欧州各国では、公共の交通機関から自転車へ乗り換える人も少なくなかったところへ、コロナ禍でさらに自転車乗りが増えました。自転車道や自転車レーンなどの整備が進んでいることも、自転車乗りを後押ししているようです。

日本でも自転車道や自転車レーンの整備は進められてきましたが、街中で見かける自転車レーン(車道の両サイドに設けられた「自転車専用通行帯」)を利用する自転車は多くないように感じます。実は、私の自宅前の道路にも、少し前に自転車レーンができました。それまで、自宅前の歩道を勢いよく横切っていく自転車に「怖いな」と感じていたので、これで安心できるかと期待したのですが、ほとんどの自転車は相変わらず歩道を走行しています。

一方、自転車に乗る人からみると、自転車レーンは車道とはっきり分離されていないため通行しにくいのだそうです。とはいえ、歩道を走行する自転車は、歩行者にとっては怖い存在です。自転車で追い抜くほうは気を付けていると思いますが、後ろから肩先をビューンと追い抜いていかれると、いつもビクッとさせられます。

自転車に乗る人が増えていくなか、歩行者との折り合いをつけるいい方法はないか調べてみたら、すでに「自転車利用安全五則」がありました。2007年の道交法の改正を機に、自転車の交通ルールを見直し、五則にまとめられたものです。

図表⑥には、五則とそれに違反した場合の罰則を合わせて載せてみました。さらに、昨年6月から施行された道交法の改正による「妨害(あおり)運転の禁止」は自転車にも適用されるため、表に加えました。不必要な急ブレーキや、執拗にベルを鳴らすといった行為が相当します。また、こうした違反で3年以内に2回摘発された場合は安全講習を受けねばならず、従わなければ5万円以下の罰金が科されます。

画像: 自転車にも「あおり運転」の罰則が適用

自転車は、道交法では「軽車両」とされ、いわばクルマの仲間です。クルマの運転には免許が必要で、たいていの人は免許を取るために講習を受けて、運転の練習や交通ルールを身につけます。自転車は免許不要で誰でも乗ることができますが、安全意識や交通ルールは身につけておくべきでしょう。自転車に乗る人と乗らない人がルールを守ったうえで折り合いをつけつつ、安全な街にしていきたいものです。

執筆者のプロフィール

画像: 執筆者のプロフィール

加藤直美(かとう・なおみ)
愛知県生まれ。消費生活コンサルタントとして、小売流通に関する話題を中心に執筆する傍ら、マーケット・リサーチに基づく消費者行動(心理)分析を通じて、商品の開発や販売へのマーケティングサポートを行っている。主な著書に『コンビニ食と脳科学~「おいしい」と感じる秘密』(祥伝社新書2009年刊)、『コンビニと日本人』(祥伝社2012年刊、2019年韓国語版)、『なぜ、それを買ってしまうのか』(祥伝社新書2014年刊)、編集協力に『デジタルマーケティング~成功に導く10の定石』(徳間書店2017年刊)などがある。

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