アクアの冷蔵庫が「指名買い」されるほどになった理由は、デザイン性と使いやすさにあります。これまで日本の冷蔵庫は、住宅事情から幅が狭く奥行きが長い形状をしてたので奥の食べ物はロスになりがち…。そこでアクアは、幅を広くし奥行きを短くしたのです。冷蔵庫が薄くなるメリットは意外にも大きかったのです。今回はTZシリーズの最新冷蔵庫420LタイプのAQR-TZ42Kをレポートします。
指名買い増加!アクアの最新冷蔵庫「AQR-TZ42K」をレポート
アクアは、大型家電NO.1と言われる中国ハイアール傘下の会社。元三洋電機の冷蔵庫部門と洗濯機部門がで構成された会社です。立ち上がった当初は、まじめ一辺倒的な作り、特に冷蔵庫部門では、どちらかと言うと堅実さが目立つ製品が多かったです。
それが、ヨーロッパスタイルの AQR-TZ51H(※)、2年前に導入して以降、話は一変。比較なしの指名買いされる様になりました。容量420LのAQR-TZ42Kは、TZシリーズをもっと普及させるために生まれたモデルです。
今回は、冷蔵庫の未来を示唆する様なモデル、アクアの最新冷蔵庫AQR-TZ42Kをレポートします。
※容量:512L、型番末尾の「H」は2019年モデルを示す。Iは1と見誤ることが多く使われない。このため「J」が2020年。「K」が2021年を示す。
冷蔵庫の横幅が決まっているゆえの弊害
日本のメーカーが冷蔵庫を説明する時、まずどこから入るのか。それは「幅」です。600〜700mmが黄金幅といえるでしょう。この幅だと、かなりの設置場所に入れ込むことができます。
次に求められるのが、大容量。容量を稼ぐために、高く、深くと商品化します。結果、おかしなものが出来上がります。要するに幅より、奥行きの方が長いのです。冷蔵庫の基本は「棚」です。本棚を想像していただければ分かりますが、棚は奥が深いとえらく使いにくいのです。このため、深くても前と後ろ。その後ろに置くということは「死蔵」を意味します。
本だったら腐ったりしないのでいいのですが、冷蔵庫の「死蔵」はないですね。2年前の「キャベツ」、3ヶ月前の「お肉」。そんなモノ誰が食べますか!しかし、日本では、膨大な食品ロスが生まれているのです。
2020年10月にアップされた農林水産省のページには、世界の食品ロスが13億トン/年。日本は約612万トン。東京ドーム5杯分とあります。(いい加減、この分かりにくい比喩やめてくれんかなぁ(筆者独言) 国民一人当たりに換算すると、茶碗1杯/人。3人家族だと、米2合分にあたります。それが毎日です。日本は、食糧の多くを海外に頼っています。おかしな話です。
日本で売られている奥行きのある冷蔵庫は、食品ロスの一因になっている!私はそんな気がするのです。
しかし、そうはいっても聞き入れてもらえません。幅と大容量で決せられると考えているからです。このため、私たちは使いにくい冷蔵庫の中から、自分たちの冷蔵庫を選択しなければならないことになったのです。
使いやすくなった「AQR-TZ51H」
幅を広くして奥行きを薄くした
現行コンセプトのAQR-TZ51Hが発売されたのは、2019年3月。モデル追番は「H」。静かなスタートでした。しかし手応えはしっかりありました。なんと言っても、購入後のユーザーからの評判がすこぶるいい。
まず、外見がカッコイイ。冷蔵庫なのに「インスタ映え」する外観ですから、まず購入者がインスタ自慢します。多くの家電は、発売以降売りは、萎みます。ところが、TZ51Hは「使いやすい」ですからね。評判が落ちないのです。
アクアは、ここで一つの勝負に出ます。キープコンセプトです。失敗すると、社内で咎められます。このため、多くのメーカーは、キープすべきモノも捨てて、新しいモノを採用します。そちらの方が波風が立ちませんし、店の受けもイイのです。これがコンセプトが持続しない理由です。
そこで、アクアは2020年モデル「J」を出します。ほとんど変わりません。しかし売りは、1.8倍になります。容量:512Lで、幅:830mm。幅:830mmの冷蔵庫が置ける家が、1.8倍も増えるわけはありません。当然、他のメーカーのシェアを食ったわけです。それほどに「薄い」「使いやすい」という真っ当な、冷蔵庫を考えた時、ごくごく当たり前のコンセプトが大いに受けたわけです。
そのため指名買いがグンと増えます。2020年データーは72%。これは冷蔵庫としては、驚異的な数字です。というのは、冷蔵庫の買い替えは、壊れた時にする人がとても多いです。つまり、何も考えずに、店に行き、自分の家に入る幅で、一番大きい容量をいうのがほとんど。そうした売り方がほとんどの冷蔵庫というカテゴリーで72%はすごいとしか言いようがありません。
それを支えるためには、単にデザインがイイというだけではダメです。機能が良くないとそうはなりません。
買いだめに対応できる大容量冷凍庫
私が使いやすさとしてあげたのは「使いやすさ」ですが、それに加えて、このコロナ禍ならではの理由があります。それは「180L」の冷凍庫です。正直、冷凍庫が大きいです。しかもそれが、6つの引き出しに分かれています。1つは氷で使うとしても、残り5つ。買い溜めもできますし、整理も楽です。整理が楽ということは、使い勝手もイイということです。
ダウンサイジングしたAQR-TZ42K
アンバサダーの長谷川博己氏も気に入ったデザイン性
こうなると、ダウンサイジングして欲しいというリクエストが当然のように出てきます。それでできたのが、AQR-TZ42Kなわけです。
さて、このアクアですが、テレビCMを打ちます。起用したのは、アクアのアンバサダーも務める俳優の長谷川博己さんです。
彼は、家電の選び方は、デザインのウェイトがとても大きいそうなんですが、彼曰く「自分のイメージした家電」ということです。特に扉の丸みが気に入っているそうです。CMでは「柔らかなカーブ。(扉の美しいデザイン) 簡単に届く。(奥行きが浅い)」と言っていますが、本気だそうです。イケメン俳優は、イケメン家電がお気に入りと言うことです。
とてもバランスがいいモデル
TZ42Kの幅は、700mm。ゴールデンエリアギリギリです。が、かなりイイ感じです。多くの人に知ってもらいたい冷蔵庫です。損はないですよ。
損で思い出しました。今回、消費電力もトップレベルに抑えられています。最も電力差などは、食品ロスを一度防げは取り戻せます。TZ42Kなら、クリアできる可能性も大。奥行きがなく、中が見えやすいのは、それほどプラスです。
イケメン冷蔵庫を使いこなして、美味しい料理と地球に優しい節約を楽しみませんか?
そんな気持ちにしてくれる冷蔵庫です。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京歴史散歩とラーメンの食べ歩き。