2021年4月末に発売されたばかりの「Panasonic LUMIX S 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S.」。この取り回しのよいサイズの望遠ズームの「実写作例」や「解像力」「ぼけディスク」「軸上色収差」「サジタルコマフレア」「最大撮影倍率」「周辺光量落ち」などの各種チャートなどを撮影する機会に恵まれました。まずは、その結果から「Panasonic LUMIX S 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S.」のおすすめ&残念ポイント、そして結論。さらに、結論に至った理由を、実写とチャートから解説していきます。

執筆者のプロフィール

画像: 執筆者のプロフィール

齋藤千歳(さいとう・ちとせ)

元月刊カメラ誌編集者。新しいレンズやカメラをみると、解像力やぼけディスク、周辺光量といったチャートを撮影したくなる性癖があり、それらをまとめたAmazon Kindle電子書籍「レンズデータベース」などを出版中。まとめたデータを元にしたレンズやカメラのレビューも多い。使ったもの、買ったものをレビューしたくなるクセもあり、カメラアクセサリー、車中泊・キャンピングカーグッズなどの記事も執筆。現在は昨年8月に生まれた息子と妻の3人、キャンピングカー生活にハマっており、約1カ月かけて北海道を一周するなどしている。
▼レンズデータベース(Panasonic LUMIX S 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S. )

マクロに強く、ぼけもきれいで、シャープでしかもコンパクト

画像: www.amazon.co.jp
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唯一のネックは約15万円という実勢価格

今回のレビューでは「Panasonic LUMIX S 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S.」を紹介していきます。筆者は電子書籍を制作するために、すでに「解像力」「ぼけディスク」「軸上色収差」「サジタルコマフレア」「最大撮影倍率」「周辺光量落ち」といった各種チャートやテスト、さらに実写作例も撮影済みなので、まずは結論からお伝えしたいと思います。

Panasonic LUMIX S 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S.のおすすめポイントは

・驚きのマクロ性能300mmで最大撮影倍率0.5倍
・ズームレンズの結果とは思えない美しいぼけ
・絞り開放からしっかりと確保された高い解像力
・高性能望遠ズームレンズで800gを切る軽さ

の4つ。

逆に、もっとも残念なポイントは

・70-300mmF4.5-5.6としては高く感じる約15万円の実勢価格

です。

そのため、「高性能で取り回しのよい普段使いも可能な望遠ズームを探しているという方にはおすすめ」です。しかし、「性能よりも価格を重視して低価格の望遠ズームを探している方にはおすすめできない」レンズといえます。

この結論に至った理由を各種チャートなどから解説していきます。

驚愕のマクロ性能

300mmで0.5倍のハーフマクロは、ある意味反則だ

画像: LUMIX S 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S./LUMIX S5/300mm/絞り優先AE(F5.6、1/50 秒)/ISO 100/露出補正:+ 1.3EV/WB:晴天/フォトスタイル:ヴィヴィッド

LUMIX S 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S./LUMIX S5/300mm/絞り優先AE(F5.6、1/50 秒)/ISO 100/露出補正:+ 1.3EV/WB:晴天/フォトスタイル:ヴィヴィッド

まずは、作例からです。サクラはなかなか撮影の難しい被写体ですが、「LUMIXS 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S.」は300mmの望遠端で最短撮影距離約74cmという驚異的なマクロ性能を誇るため、こんな撮影が可能です。

写真は、スタジオなどではなく、人々でごった返す公園で普通に咲いているサクラを撮影しました。望遠による距離感を圧縮する効果と圧倒的なぼけによって、ある意味なにか作り込んだような撮影が簡単できてしまいます。

どのくらいマクロの強いのか、チャートでも確認してみましょう。

画像: 300mmで0.5倍のハーフマクロは、ある意味反則だ

切手やペン先などが実物大でプリントされるように調整した小山壯二氏オリジナルのマクロ性能チェックチャートを使用しています。そのため、切手やペン先がチャートの結果のようなサイズで撮影できると考えてもらって間違いありません。

実際には、近接撮影の性能は、望遠端300mmで最大撮影倍率が0.5倍と、マクロに強い望遠レンズというよりは、300mmの望遠ハーフマクロレンズといえるレベルです。

ちなみに、36mm×24mmの範囲を画面いっぱいに撮影できるレンズを最大撮影倍率が1.0倍(等倍)となるため、等倍マクロなどと呼びます。ハーフマクロは、72mm×48mmの範囲を撮影できる最大撮影倍率が0.5倍のマクロレンズの呼称です。

とても望遠ズームとは思えないマクロ性能といえるでしょう。

マクロ性能の高さに目を奪われますが、作例からは手ぶれ補正効果の高さもみてとれます。300mmの絞り開放のF5.6で撮影していますが、シャッター速度はなんと1/50秒。普通に考えると、手持ちでは手ぶれが発生して当然のシャッター速度です。しかし、掲載した写真を含め、手ぶれが発生したようにみえるものはほぼありませんでした。ボディ+レンズで5.5段相当という高い手ぶれ補正効果が実感できる結果です。

ただし、気になった点もあります。ピントが外れている状態から、最短撮影距離付近のサクラにピントを合わせるとき、AFではピント合わせの迷うことが多く、最短撮影距離側にMFでピントを合わせてからAFを合わせ直すことも度々ありました。LUMIXS 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S.には、フォーカスレンジ切り替えスイッチが搭載されているので、できれば近接撮影用の設定もあるとうれしいですが……。

質も形も最上級のぼけ

とてもズームレンズとは思えない美しいぼけ味

「LUMIXS 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S.」は、特筆するほどぼけの美しい望遠ズームレンズです。輪線ぼけの原因になるといわれる非球面レンズを使わないレンズ構成といい、11枚羽根の円形虹彩絞りを採用している点といい、商品のコンセプトの時点からぼけの美しいレンズを目指していたのでしょう。

実際に作例を撮影しても確かにぼけは美しいです。

画像: LUMIX S 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S./LUMIX S5/127mm/シャッター速度優先AE(F5.2、1/125 秒)/ISO 4000/露出補正:+ 1.0EV/WB:オート/フォトスタイル:ヴィヴィッド

LUMIX S 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S./LUMIX S5/127mm/シャッター速度優先AE(F5.2、1/125 秒)/ISO 4000/露出補正:+ 1.0EV/WB:オート/フォトスタイル:ヴィヴィッド

いやな色付きやザワつきなどのない素直なぼけが背景からもみてとれるでしょう。また、近接撮影にも強いので、70-300mmの望遠ですが、室内で子どもを撮影するのにも使えてしまいます。背景を大きくぼかしてしまえば、子育て中で乱雑な状態にある部屋の中もごまかせるのがうれしいところ。

開放がF4.5-5.6と暗めですが、現在のLUMIXシリーズなら高ISO感度でも画質の低下は小さいので、ぜひ積極的に高ISO感度を使ってみてください。ISOオートでの撮影がおすすめですが、「撮影メニュー」→「画質2」→「ISO感度設定(写真)」で「ISOオート上限設定」から感度を上げておくとよいでしょう。筆者は画質の低下よりも撮れないことのほうがいやなので「51200」を選択。

ぼけの美しさについては、チャートでもチェックしておきましょう。

まずは気になる望遠端からです。

画像1: とてもズームレンズとは思えない美しいぼけ味

続いて、広角端。

画像2: とてもズームレンズとは思えない美しいぼけ味

上に掲載したぼけディスクチャートは、極小のLEDを撮影して玉ぼけを観察。ぼけディスク(玉ぼけ)の円のフチ付きや色付き、内部のザワつきなどを観察して、ぼけの質と形を評価しています。極端にいうならすべてが真円で色付きやザワつきがないほど、ぼけが美しいと考えてください。

LUMIX S 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S. のぼけは望遠端も、広角端もぼけの円に嫌なフチ付きや色付きがなく、しかも内部のほとんどザワつきを感じません。非球面レンズの影響といわれるぼけの円の内部に同心円状のシワが発生する輪線ぼけもみられません。

とてもズームレンズの結果とは思えない、まるで単焦点レンズのような美しいぼけといえます。これがなめらかなぼけ味につながっています。

さらに、ぼけの形についても、望遠側、広角側それぞれの絞り開放とF8.0の様子を掲載しましたが、カクツキの少ない素晴らしい結果です。11枚と絞り羽根の多いこともありますが、パナソニックの絞り羽根設計のうまさが光ります。

形も質も最上級のぼけがえられる望遠ズームレンズといえる結果です。

絞り開放から高い解像力

設計思想だと思われる開放重視の高い解像力

解像力については、先にチャートをみていただきます。

広角の70mmからです。

画像1: 設計思想だと思われる開放重視の高い解像力

「LUMIX S 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S.」をLUMIXS5(有効画素約2,400万画素)に装着して撮影しているので、基準となるチャートは1.1です。

開放のF4.5から観察しているのですが、大きな特徴は、絞り開放からかなり解像力が高く、絞ってもあまり解像感が変わらないところ。このチャートだけみると変化がないようにすらみえますが、こんなレンズのほうが珍しいです。

続いて、望遠端の300mmをご覧ください。

画像2: 設計思想だと思われる開放重視の高い解像力

望遠側も基準となるチャートは1.1です。そして望遠の300mm側も絞り開放から、画面全体に解像力は高く、絞ってもあまり解像力がアップしてこない印象です。ちょっと不思議なくらいといえるでしょう。

おそらく、この絞り開放での解像力を重視し、絞ってもあまり解像力の上がらない状態は、設計思想なのだと思います。開放がF4.5やF5.6なので、暗いという印象をもってしまう「LUMIXS 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S.」にとって、絞り開放から高解像度は、ある意味に必須の条件だったのではないでしょうか。

最新のミラーレス一眼用のレンズは、カメラ側の性能アップにより高ISO感度でも画質の低下が少なくなったので、開放F値を少し暗くしても全体性能をアップするのが、よく使われる手法です。本レンズは、その手法で作られた最新設計の35mm判サイズミラーレス一眼用レンズという印象です。

明るさの余裕のあるシーンでは、F11あたりまで絞ると最高解像力が出ますが、基本的に開放で使っても十分な優秀なレンズです。

ただし、F13以上に絞ると、絞り過ぎによる解像力低下が発生するので、この点には注意してください。

画像: LUMIX S 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S./LUMIX S5/70mm/絞り優先AE(F8.0、1/250 秒)/ISO 100/WB:オート/フォトスタイル:ヴィヴィッド

LUMIX S 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S./LUMIX S5/70mm/絞り優先AE(F8.0、1/250 秒)/ISO 100/WB:オート/フォトスタイル:ヴィヴィッド

全体解像力がピークに近くなるF8.0で撮影した函館山からの風景。100%表示などで細部を確認すると、力強い描写で解像しています。解像力チャートの結果からも、LUMIX S5との組みあわせでは、比較的はっきりとしたコントラストが高く、線が太く感じる描写なのが、個人的には少し気になるところです。

質量約790gと軽量

1日中、首から提げても疲れない軽い望遠ズームレンズ

画像: LUMIX S 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S./LUMIX S5/300mm/シャッター速度優先AE(F5.6、1/500秒)/ISO 2000/露出補正:+1.0EV/WB:オート/フォトスタイル:スタンダード

LUMIX S 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S./LUMIX S5/300mm/シャッター速度優先AE(F5.6、1/500秒)/ISO 2000/露出補正:+1.0EV/WB:オート/フォトスタイル:スタンダード

エントリー向けなどでない限り、ほとんどの高性能な望遠ズームは撮影時に「よっこいしょ!」とやや身構えなくてはいけないサイズと重さです。しかし、この高性能な「LUMIXS 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S.」は、なんと最大径約84mm、長さは約148mm、質量は約790gとかなり軽量コンパクト。

実際、掲載したエゾリスの撮影のように、望遠レンズでの撮影シーンは、動物相手のため、フィールドを長い時間歩いたり、しゃがんだり、寝そべったりとかなりアクティブなことが多いのです。なので、レンズが重いと、とても疲れます。

少しでも軽くて小さいほうが楽なのですが、高性能な望遠ズームレンズは基本的に重くて大きい、しかし本レンズなら写真のとおりです。

画像: 1日中、首から提げても疲れない軽い望遠ズームレンズ

フードを装着して望遠端までズームしても約28cm、フードや前後レンズキャップを装着しても900g切る質量は、本当に1日首から提げていても疲れません。軽くて高性能な望遠ズームって、こんなに楽なんだということを痛感します。

まとめ

既存の70-300mmF4.5-5.6のイメージを捨てよう

ここまで解説してきて弱点らしい弱点がないのが「LUMIXS 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S.」といえます。非常に優秀な望遠ズームです。

もしあえて弱点をあげるとすれば、それは価格でしょう。実勢価格で146,000円前後と、70-300mmF4.5-5.6と聞くと比較的安価なエントリー向けの望遠ズームを想像してしまう人々には、かなり高めの価格に感じてしまうわけです。筆者もそのひとりでした。

しかし、チャートの結果からも、実写の結果からも、エントリー向けの安価な望遠ズームとは一線を画する高性能なレンズであることがわかります。「高性能レンズ=高くて、大きくて、重い」から、35mm判フルサイズミラーレス一眼用レンズの最新トレンドのひとつである、デジタルカメラ本体の各種補正も積極的に活用した、多少開放F値が暗くても、軽くて小さくて、しかも高性能な望遠ズームレンズに仕上げたのでしょう。これは成功していると思います。

結果、コンパクトで軽量、取り回しのよい70-300mmに仕上がり、エントリー向けの軽量コンパクトな70-300mmに見た目が近づいてしまった、これが「LUMIXS 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S.」の不幸といえます。価格相応の高性能でコンパクトなレンズなので、普段から望遠での撮影を楽しんでいる方にも、ぜひ試してほしい1本です。

普段から持ち歩いて、公園や林道、山歩きなどの際の小動物の撮影やマクロにも強いので草花などの撮影にも、とても快適。また、「EXテレコン(写真)」(クロップ)と組みあわせると最大600mm相当の画角を得ることもできるので、こちらも活用することをおすすめします。

「LUMIXS 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S.」は、既存の70-300mmF4.5-5.6のイメージとは異なる非常に優秀でコンパクトな望遠ズームレンズです。

画像: 【レビュー】驚愕のマクロ性能!LUMIX S 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S. ぼけも美しく開放解像力も高い望遠ズーム(実写チャート評価)
パナソニック 望遠ズームレンズ フルサイズミラーレス一眼 Lマウントシステム用 ルミックス LUMIX S 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S. S-R70300
望遠300mm最大撮影倍率0.5倍 マクロ撮影も可能な、Sシリーズ 70-300mm望遠ズームレンズ
ズーム全域で優れた描写性能となめらかなボケ味を実現
写真・映像表現の可能性を広げる、300mm望遠マクロ撮影
撮影環境を選ばない優れた機動力
最大径×長さ:φ84.0mm×約148.0mm(レンズ先端より、レンズマウント基準面まで)、質量:約790g(レンズフード、レンズキャップ、レンズリアキャップを含まず)
¥146,000
2021-05-10 8:48

●LUMIXS 70-300mm F4.5-5.6 MACRO O.I.S.の基本スペック

対応マウント:ライカカメラ社L-Mount規格準拠
レンズ構成:11群17枚
絞り羽根枚数:11枚
フィルター径:77mm
大きさ:Φ約84×148mm
質量:約790g
実勢価格:146,000円前後

(技術監修:小山壮二)

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